表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/50

ガチャ41 獣神創起

 大樹猿が完全に消滅したあと、簡単に周辺を探索してみたが何かが落ちている様子はなかった。

 始まりの坑道の時はいつの間にかチュトちゃんが手に入れていたから、そもそもどういうものが落ちているのかわからなかったが、マトゥアは自分でボスドロップを発見していたようで、ボスが消えた後に宝箱が出現したらしい。

 宝箱ともなれば、目を皿にして探さずとも見つかりそうなものだが、結局見つからなかったということは、今回はドロップしなかったということだろう。


 サンダーボルトの威力を知らなければそれほど気にしなかったかもしれないが、知ってしまった今となっては残念で仕方がない。いざという時の切り札が手には入らなかったのだから。


 そういえば、マトゥアは暴れ坑道狸を倒した時にボスドロップを手に入れているはずだ。さっき宝箱の話を聞いたしそれは間違いない。


「マトゥア、宝箱から出てきたのが何だったかって覚えてるか?」

「手に取ったらすぐに消えたからあんま覚えてないけど、なんか翼みたいな絵が描いてあったような気がする」


 地べたに座り込んでもぐもぐとあんぱんを食べながら答えるマトゥア。

 一度は悪くなった機嫌もおやつをあげればこの通り。すっかり素直に話してくれるようになった。


「翼か……」


 空を飛べるような呪文カードだろうか? 俺はチュトちゃんに手渡される前に絵を見ていたけど、マトゥアは自分で宝箱から手に入れたから確認する暇もなく消えてしまった。

 マトゥアの端末を見せて貰えればそれが一番手っ取り早いのだが、マトゥアはどうにも自分の端末を俺に貸そうとはしてくれない。今までも何度かスキルの取り方なんかを教えようとしたのだが、人間の施しは受けないの一点張りだった。


 マトゥアは文字が読めないから、自分で確認してもらうことも出来ない。

 どうするべきか。切り札になり得る手札をいたずらに遊ばせておくことは、あまりにも勿体ない。

 今までも油断していたわけではないが、死に物狂いだったかと言われるとうなずくことが出来ない。


 自分の主義を曲げてまでマトゥアに戦わせている以上、マトゥアにもまた全力になってもらわなければ、意味がない。


 今までは子供に戦わせてしまっているという負い目から強く言えなかったが、中途半端が一番よくない。一度曲げたのならば、たとえぐにゃぐにゃねじ曲がってでも本懐を果たさなければならない。


「マトゥア、端末を貸すんだ。もうズルだとか施しを受けないなんて言ってる場合じゃない。俺たちは少しでも強くなって、勝ち続けなくちゃいけないんだ。それが出来なければ俺たちは死ぬ。誇りのない力は醜いけど、力のない誇りは――」

「ん? ああ」


 今までになく真剣に説得をしようとした俺だが、言い切る前にマトゥアが端末を投げてきた。


「うわっと、っとと。こら! 人に向かってスマホを投げない!」


 それがあまりにも自然で唐突だった為、一瞬混乱してしまい大慌てで端末を落とさないようにキャッチした。いや、この端末が落としたくらいで壊れるとは思えないが、見た目がスマホだからどうしても扱いは慎重になってしまう。


 咄嗟に娘を叱るときのように怒ってしまったが、え、なんでだ?


「急にどうしたんだ? なんか悪いものでも食べたか? あんなに嫌がってのに」

「別に! 単にもっと強くならなきゃいけないと思っただけけだ! 勘違いするなよ!」

「そ、そっか……」


 そっぽを向いてガツガツとあんパンを食べきったマトゥアは、渡しておいたメロンパンの包装を破いてかぶりついた。

 その勢いは何かを誤魔化そうとしているようにも感じるが、とくに勘違いするようなことなんてないので、本当に自分の力不足が恥ずかしかったのだろう。


 恥ずかしがらなくて良いんだ、マトゥア。お前は俺よりもずっと強い。ただ、これを口にする本格的に拗ねてしまいそうだから、言うのはやめておこう。


「どれどれ……」


 メロンパンを食べつつチラチラと視線を向けてくるマトゥアに気づかないふりをしながら、俺は端末を起動した。

 表示された画面は、やっぱり俺の端末と大凡同じものだったが、一つ、決定的に異なる点がある。


 それは


「日本語じゃ、ない……!」


 予想してしかるべきだった。俺の端末が当たり前のように日本語表示されているため全く気がつかなかった、異世界の住人の端末が日本語だったら、持ち主本人は読めないじゃないか。

 なまじマトゥアと言葉が通じるせいで忘れてかけていたが、本来俺とマトゥアはコミュニケーションを取ることすら出来なかったかもしれないんだ。それを管理者の不思議パワーで何とか話せるようになっているみたいだが、それは読み書きにまでは適用されなかったらしい。


 さらに困るのは、端末に表示される項目の数が俺の端末と異なること。言語が違うだけなら、俺の端末と見比べながら使えばある程度は理解できたはずだ。

 しかしこれでは、どこをタップしたら何になるのかさっぱりわからない。

 チュトちゃん曰く、直感的にわかりやすい設計になっているという話だった。その直感的というのは、世界によって多少の違いがあっても不思議じゃない。


 下手に動かして取り返しのつかないことになったら困る。これは俺ではどうにも出来ないぞ。


「チュトちゃんから何か聞いてないか? おすすめのスキルとか」

「チュトちゃん? あー、あの妖精か! そういえば、ポイントが溜まったらここを押すようにとか言ってたような……」


 メロンパンをくわえつつ、俺から端末を受け取ったマトゥアが画面を操作する。

 しかし、どこにあるのか覚えていないのか、中々お目当ての画面が出てこない。使う気なくて真面目に聞いてなかったんだろうな。


「んん! あっあ!」


 口が塞がっているせいでなんと言っているのかわからないが、画面には星のマークが表示されたページが開かれていた。まさかチュトちゃんがお気に入りみたいな昨日に登録しておいたのか? 言動はともかくやっぱりできる妖精だな。


 何の躊躇いもなくマトゥアがチュトちゃんに指定されたボタンをタップすると、表示されていた文字の一部が大幅に動いた。これは、スキルポイントを示していたのかもしれない。それを使用した?


 新しいスキルを取得したのか、ガチャを回したのか、それとも全然違う何かなのか。マトゥアには目に見えた変化はないし、カードが出現したりもしない。


「終わったのか……?」

「戦えばすぐにわかる、って言ってたぞ」


 俺の疑問に、メロンパンを食べ終えたマトゥアが答える。

 まさかチュトちゃんが嘘をつくわけもないし、チュトちゃんがそういうのならばそうなのだろう。疑ったところで、これ以上俺に出来ることはない。


 本当ならマトゥアが獲得したボスドロップを確認したかったが、この調子じゃあそれがどこにあるのかもわからない。というか、見つけたとして効果が読めないんだからまともに使えない。


 ……そうだ。俺の時はサンダーボルトの効果をチュトちゃんが教えてくれたけど、マトゥアは聞いていないのだろうか?


「さっきの翼の話だけどさ、効果はチュトちゃんに聞いたか?」

「聞いてない。妖精が見る前にカードが消えたからな」


 チュトちゃんもボスドロップの追求はしてこなかったってことか。こうなってしまうと、もうどうしようもないな。


 マトゥアの強化はこれで一旦終わりとして、次は俺の強化だ。とは言っても、俺はポイントを手に入れたら細かくスキルの取得をしていたから、余剰のポイントはあまりない。ハッキリ数字を言うなら、残りは50ポイントだ。


 俺は堅実に強くなってきていると思うが、マトゥアの戦闘能力と比べると足を引っ張っているように感じる。マトゥアの持つ獣身創起が強力なスキルだということもあるが、それだけではなく、基本的な戦闘経験でも俺は劣っている。

 マトゥアがスキルポイントを使って強化をした以上、その差は今までよりも大きくなる可能性が高い。それはきっと、たかが50ポイントでスキルを一つ取得しても大して意味がないほどに。


 マトゥアに下克上されるのは良い。今更マトゥアが上で俺が下になったとして、これまでの関係がいきなり変わるとは思えない。精々今までの鬱憤晴らしにマトゥアが生意気になるくらいだろう。

 だがそれはそれとして、俺が足手まといになるようなことがあっては駄目だ。主義だの誇りだの、そんな立派なものじゃなくて、これは意地だ。

 子供におんぶにだっこで面倒見て貰うなんて、そんなのは俺自信が許せない。


 だから俺は、ガチャを引く。

チュトちゃんはプレイヤーさんのためになるアドバイスをちゃんとしてるのですよ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ