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ガチャ31 暴れ坑道狸(弱)

「撃滅の奇跡」


 出会い頭に撃滅の奇跡を使い、狸人を1匹潰す。狸人の並びによっては貫通した光が2匹同時に倒すときもあるのだが、今回はそこまでうまくいかなかった。

 仲間を倒された狸人が奇声をあげて俺に切りかかる。視界には2匹の狸人を捉えつつ、意識は振り上げられた剣に向ける。赤黒い輝きはない。ただの攻撃だ。

 続けて、一拍後れて剣を振り上げたもう1匹の狸人を見ると、そちらは赤黒い輝きをまとっていた。


 まずは一匹目の攻撃を受け流し、軽く体勢を崩させたところに蹴りを入れる。すると、ふんばりが足らずによろよろと後ずさり、そのままスキルを発動していた狸人にぶつかった。

 ぶつかられた方の狸人はそれでもスキルを強行しようとしたが、無理矢理振り下ろされた剣は俺にカスリもせず、むしろ仲間の狸人を傷つけることになった。

 こうなればあとは簡単で、いつもどおり仲間割れを始めて終了だ。


 戦いが終わると、扉が現れた。もう随分とこの階層で戦っていたような気がするが、ようやくレベルが上がったようだ。


「長いのです! 時間かかりすぎなのです! 次はボス戦なのです! さっさと行くのです! このノロマ! なのです!」

「いやいやいや、重要な情報をさらっと言うなよ。ボス戦? 侵略者の大将ってことか?」

「狸軍団の親玉なのです! プレイヤーさんの構成なら大して苦戦はしないのです! ちょっと痛いぐらいなのです!」

「そうは言われてもな……」


 出来ればちょっと痛いのだって嫌なんだが。

 ボス、ボスか……。せっかく耐久を高める方向に振ってるわけだし、出来る限りダメージは抑えたい。残りポイントは150。妖精はああ言ってるが、ここは慎重に行こう。


「早くいーくーのーでーすー!」


 俺の服を掴んでぐいぐいと引っ張る妖精。しかし妖精ごときの力ではびくともしない。

 ぶーぶーとわめき続ける妖精を無視してスキルを吟味した結果、二つのスキルを取得することにした。


・ガード

攻撃を盾で受ける瞬間に発動することで、ダメージとノックバックを半減。


・ディフェンダー

一定時間防御力が増加する。


 雑魚相手には使いどころの難しいというか、ポイントを使ってまで取得する必要があるか迷っていたスキルだが、ボス戦では役に立ってくれるはずだ。


 時間帯は昼時だったからついでに腹ごしらえを済ませてから、俺は扉に手をかけた。


「反抗期なのです……。プレイヤーさんがぐれたのです……」

「もとから反抗はしてたけどな」


 いじいじしてる妖精に声をかけて扉をくぐる。


 光の奔流の先にあったのは、これまでの坑道ではなく広場だった。その広場の中央で、巨大な狸がすやすやと眠っている。暴れ坑道狸という文字が浮かんでいる。


「撃滅の奇跡」


 距離を詰めてから戦うことも考えたが、妖精が騒ぎ出して狸を起こされるかもしれないと考えて即座にビームを放った。

 ビームは狸の体を抉り窪みを作ったが、今までのように貫通はしなかった。さすがにボスだけあって、簡単にはいかないようだ。


「ユァァァァァンッッ!!」

「始まりの坑道のボス、暴れ坑道狸なのです! チュートリアルボスだから大して強くないのです! ただデカいだけの狸なのです! これを倒して一人前のプレイヤーさんになるのです!」


 妖精の解説を頭に入れながら、突っ込んでくる狸を待ちかまえる。俺の敏捷が低いからなのか、突進の早さが異様に速く見えてとても避けられそうになかったのだ。

 中途半端に避けようとして失敗するくらいなら、止めてやればいい。そのためのスキルがある。


「ガード!」


 衝突の瞬間にガードを発動して、ダメージと衝撃を半減する。それでも大分後ろに押し込まれたが、狸の勢いは完全に殺された。

 頭部を勢いよくぶったたかれた狸は混乱しているようで、一瞬動きが止まった。


「ディフェンダー!」


 狸が暴れ出す寸前、防御力を向上させて真っ向から狸と殴り合う。

 大きくふるわれる狸の腕を、時にかいくぐり、時に受け流し、時に食らいながら、俺も剣を振り続ける。


 動物にとって腹は弱点だ。攻撃するために前足が振り上げられた瞬間腹の下に潜り、剣を腹に突き立てて後ろ足の方向へ走り抜ける。

 HPのバリアのせいか刃はそこまで深く入らなかったが、それでも十分なダメージになったらしい。

 狸は血を滴らせながら俺を後ろ足で蹴り飛ばした。


 蹴られる瞬間に盾を合わせたため大きなダメージは食らわなかったが、目論見が成功して一瞬油断したのはよくなかった。

 股下を抜けたら後ろ足がすぐそこにあるのは当たり前の話だ。


「治療の奇跡」


 クールタイムの問題があるため、治療の奇跡は余裕を持って使う。ギリギリまで削られてからでは治療が間に合わないかもしれない。


 距離が離れたことで、俺と狸の戦いは一旦仕切りなおしとなった。

 再び奇声をあげながら突進してきた狸に、バカの一つ覚えか、と思ったが、衝突の直前に顔を上げて大口を開いた。


 こいつっ! 噛みつく気か!


「撃滅の奇跡!」


 クールタイムが終わった撃滅の奇跡を発動するが、これは射出までほんの少しの間がある。

 俺は狸の攻撃を盾で受けることを諦め、集まりつつある光と共に剣を握った右手を狸の口内に突っ込んだ。


 所詮畜生である狸は差し出された手に疑うことなく噛みつき、そのまま口を裂かれ、腹の中を光線によって蹂躙された。

 腕がすりつぶされるような不快感と凄まじい痛みが俺を襲い、同時に狸は爆散した。

 もしもまだ狸が生きていれば、俺も気を抜かずにいられたかもしれないが、狸を倒したことを確認した俺は、痛みから逃れるように意識を手放した。







「うっ……、い、いってえええええ!!」


 激痛によって意識を失った俺だったが、目覚めたのも結局痛みのせいだった。

 また意識を失う前に急いで再生の奇跡と治療の奇跡を使うと、何とか痛みは治まった。

 確認する前に治したからわからなかったが、俺の右腕はさぞ酷いことになっていただろう。


「あっ! プレイヤーさん起きたのです! あれ? ほとんど噛ちぎられてぶらぶらしてた右手が治ってるのです!」

「言わなくて良いから。知りたくなかったことを知っちゃったよ」


 もう治っているというのに、ぶらぶらしてる自分の右手を想像したらまた痛くなってきた。知らなければ幸せでいられたのに……。


「なにはともあれ、チュートリアルクリアおめでとうなのです! これは景品なのです!」

「景品?」


 渡されたのは雷のイラストが描かれたカードのようだった。

 受け取った瞬間、光の粒子になってしまったので、細かい部分は確認できなかった。


「端末の中に移動しただけなのです! 今のカードはR呪文カード、サンダーボルトなのです! 一度だけ使えるカードで、効果は視界内で最も近い敵に雷で攻撃するのです! 高い攻撃力に加えて追加で麻痺効果があるのです! 非常に強力なカードなのです!」

「へえ、結構いいな。景品ってことは、今後もボスを倒したらこういうのが貰えるのか?」

「わからないのです! ボスドロップは確率なのです! 何が出てくるのかもわからないのです!」

「……ん? 景品じゃなかったのか?」

「ボスドロップをチュトちゃんが拾ったのです! チュトちゃんが拾ったものをあげたから景品なのです! 感謝せよー!」

「拾得物横領なのでは……?」

「チュトちゃんは妖精だから人間の法律では裁けないのです!」


 危険な思想の妖精だ。


 妖精のせいで若干ややこしくなったが、単にボスは通常のドロップよりも良いものを落とす可能性があるってだけの話か。今回このサンダーボルトが手に入ったのも偶然というわけだ。


「呪文カードはいちいち端末を操作しなくても使えるのです! 苦情が多かったから改良したのです! 念じるのです! でも今は念じちゃダメなのです!」

「使い切りなんだろ? だったら使わないよ」


 念じただけで発動するというのも少々不安だが、まあさすがにちょっと考えただけで発動するようなことはないだろう。ないと信じたい。


「用件も済んだところで次の階層に進むのですよ! まだまだ戦いは終わらないのですよ!」

「チュートリアルって言うくらいだからこれで終わるとは思ってないけどさ。これ、あとどんだけあるんだ?」

「全五十階層なのですよ! そこまで行けば侵略者も根絶やしなのですよ!」


 各階層にはまだ魔物がいてもおかしくないような気がするが、それは後続が相手にするということだろう。


 五十階層か。まだ1/10しか終わってないってことになる。気が遠くなりそうだ。


 まあ、なんとかなるだろう。

 一度始めたことを投げ出すのは、大人としてどうかと思うしな。

 それに、何だかんだ言ってこのチュトちゃんとの言い合いも悪くないと思えてきた。


 向こうがどう思ってるのかは知らないが、どうせやらなきゃいけない以上、何事も楽しまなければ損というものだ。


「行くか、相棒」

「急にデレたのです! でも恥ずいのです! 大して似合ってない台詞を格好付けて言ってる姿がとっても恥ずいのです! こっちまで恥ずかしくなるからやめてほしいのです! 鳥肌が立ちすぎて髪が逆立ちそうなのです!」


 そこまで言わなくてもよくない?

プレイヤーさんの弱さに比例して狸も弱かったのです!

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