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プロローグ

 まずは自己紹介から入らせて頂こう。


僕は龍大大和。変な苗字だと思っただろ。自分でも思う。何だ龍が大きいって。


それはさておき、幾つか前置きがある。そこそこ長いぞ。



ひとまず説明しなければならない前提は、僕が普通の男子高校生であるという事だ。


中肉中背、どちらかと言うと童顔。


身長百七十センチと体重六十キロ、平均的な男子高校生としての体格。


髪の毛は黒の短髪、普段から少しだけ寝ぐせが付いていると理解はしているが、決して直そうとは思わない。面倒だし。


年は設定上十六歳。早生まれの設定だから数えなら十七歳で、今は高校二年生だ。


高校も近辺では平均偏差値程度で入れる秋音高等学校である。


予め自己紹介から入ったくせに何も語る事が無いな。文字数が稼げん。


ホント面白味の無い男だ。いや僕の事だが。



次の前提。僕には妹がいる。


 可愛いぞ。長く語ろうと思えば一日一投稿を三年位でようやく全てを語れるが、その時点で皆ダレてしまうので、原稿用紙一枚分でまとめるぞ。これでも一日悩むレベルの難問だ。


 僕の妹は龍大理沙。


小学四年生で大人しい性格、しかし笑顔が可愛くて魅力的な女の子だ。


 誰もが恋に墜ち、誰もが可愛がり、大人になれば誰もが理沙に求婚をするだろう事が丸わかりになる位可愛い妹だ。下さい? 煉獄にブチ込むぞ。


彼女は僕の通う秋音高等学校の系列校である、秋音小学校に通っている。まだ部活動も入れないし、あまり運動も得意では無い。


友達も塾や習い事で忙しいらしく、学校から帰ると毎日一時間勉強をして、僕と一緒にお風呂に入り、僕と同じ部屋で寝る。寝る時間は夜の九時。毎日理沙が寝た事を確認して、僕も睡眠に入る。


 ちなみに理沙が思春期となり「お兄様と同じ部屋で寝たくありません」とか言われたら僕はこの世界を滅ぼす程の悪行を繰り返すだろう。戦々恐々としてろ。


よし、原稿用紙一枚位に収めたな。流石僕。もう僕の仕事終わり……としたいのは山々だが、もう少し付き合ってもらう。



最後の前提だ。


 皆、聞いた事くらいあるんじゃなかろうか。


異世界転生とか異世界転移とかの物語を。もしかしたら好きな人もいるかもしれない。


けれど最初に言っておこう。


 確かに異世界なんぞは存在する。何だったら異世界に行った事ある奴を知ってるので、それは否定しない。


だがそれらの主人公は、やれイジメられていた過去を持つだとか、やれ何かの扱いがスゲェだとか、ともかく何やかんやするべく才能や能力を元々持っていたり、或いは最低限必須の2tトラックに轢かれる、等の技能が必要となってくる。


僕みたいな普遍的な高校生が、異世界に呼び出されたりなんぞ、ある筈が無いのだ。




……そう、本来は無い筈なのだ。




「ここ、どこ……?」


 以上の前提を全て加味した上で言おう。


普遍的である筈の僕は、最愛の妹を現世に置いてきたまま、異世界に飛ばされてしまったのだ。


 **


事の発端は、つい二時間ほど前に遡る必要がある。


朝の八時に目覚まし代わりのコーヒーを飲みながら、僕はただ安寧を貪っている。


 正直な事を言ってしまうと学校に行く理由も特にないので、このままのんびり家に居ようかと考える程でもある。


遮光性のカーテンを貫通して僕に眩い光を叩き込んでくる太陽をいつかぶっ壊してやると思いつつも、しかしずっと家にいる案は放棄せねばならないのだ。


――何せ、あの子の前では格好つけなければならないから。


「お兄様、おはようございます」


 ん? 天使かな?


「おはよう、理沙」


 違った。妹の理沙である。まぁ天使の知り合いも知ってるけどロクな奴じゃない。理沙の方が天使だ。


「お兄様、お兄様」


「うん? 何だい、理沙」


 理沙は僕の座っている椅子の対面に腰かけ、足をパタパタ揺らしながら身体全体も揺らし、ニパーッと笑顔を向ける。理沙、僕を萌え殺す気か? ……え、これ死語?


「今日は、理沙が晩ごはんを作りたいの。帰りにスーパー行ってきてもいいですか?」


「へぇ。何を作ってくれるんだい?」


「お兄様がいつも『おいしい』ってほめてくれる、カレーを作りますっ」


「そうか。じゃあ買い物と料理、お願いしようかな。一人で大丈夫かい?」


「大丈夫です! お兄様は理沙が作ったカレーを食べてください。それだけでうれしいんです!」


「じゃあ楽しみにしておかなきゃな。今日のお昼ご飯は抜き決定だ」


「お昼ごはんはちゃんと食べなきゃダメですよ? お兄様」


「そうかな? 理沙のカレーをお腹イッパイ食べた方が、僕も幸せなんだけれどな」


 こんな他愛も無く、幸せな会話をしている間、僕の頭の中は不安という文字がブレイクダンスしながら大暴れしているかのような状況だった。



(ちゃんと買い物できるだろうか。もし材料が分からなければ店員にしっかり説明して材料を聞き出す事が出来るだろうか、もし出来なかったらボロボロ泣いたりしてきっと可愛いのは分かるのだが、理沙の泣き顔なんてあまり見たくはない。見たい。んー、理沙の泣き顔は何て禁断の果実だい。それにもし、しっかり買い物が出来たとして、包丁で手を切ったり火で火傷したりしないだろうか。もしそんな事になれば包丁のメーカーを調べ上げて製造ラインを全てぶっ壊さなければならないし、ガス会社に火を放ち理沙の感じた苦痛を何倍にも増幅し、更なる苦痛を植え付けなければならなくなる)


 しかし、考えていても始まらないし、理沙は一度決めた事は頑固にやり遂げる強い心も持っている。


僕は理沙にお金の入ったお子様用の財布を持たせた上で、秋音小学校の校門まで送っていき、面倒ながらも秋音高等学校に出向く。


カバンを教室に置き、授業に参加することなく、屋上の扉を開ける。鍵は掛かっていなかった。掛かっていたらぶっ壊す。


僕のお気に入りの場所は、屋上にある給水塔天辺。人も来ないし、来たとして見つかる事も少ないので、呑気に寝ている事が出来る。


ここでお昼ぐらいまで時間を潰し、理沙が帰る時間になったら早退して、あの子の立派な姿を目に焼き付ける事としよう。


――さぁ、意識を閉ざそう。

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