オワリ
「はぁ・・・・・・。疲れた。先輩に誘われて入った部活だけど、ついていけないから、やっぱりアニメ研究会に転部しようかな・・・・・・」
こう言っているのは俺、伊勢口快生である。今日は、近くの神社で毎年行われる春祭りに幼馴染で同じ高校に通っている高田真理と学校帰りに行く予定だ。
「まったく。真理のやつどうしてこう毎年誘ってくるんかな。祭りもそろそろ飽きてきただろ。昨日の夜中は
はまっているアニメを見るのに夢中になってオールしたし、学校では何回も当てられるし、しまいには部活で
ミス連発してどやされるし、最悪の一日だったわ。もう帰ってベットに直行したい・・・・・・」
と俺はいつもと同じようにぶつぶつと文句を言っている。
「おーい。かーくん待った?」
彼女が真理だ。(ちなみにここでいう彼女はガールフレンドのことではない。大事これ。)いつも力が有り余ってるから俺をあちこちに連れまわす。
時間にルーズでおっちょこちょいなんだけど天然なのが憎めないのは確かだ。別に好きってことじゃないから別に・・・
「なにが『待った♡?』だ。そっちから誘っておいて十五分も遅刻。もうすこーしでも遅かったら
帰ってたところだぞ」
「すこーし」のところを指を使って強調しながら俺は主張する。
「ごめんごめん。今日、授業ずっと寝てたら、お説教2時間コースに入っちゃって。てへへ・・・・・・」
「それはお前が悪い。それで成績が悪かったらぐちぐち言えるのになー。神様どうか生まれ変わるときに
こいつより頭を良くしてください」
手のひらをあわせて天を仰ぐ
「まぁまぁそんなことどうでもいいじゃん。早く神社行こうよ。おなかと背中の皮ががくっついてるかも」
「こいつそんなことどうでもいいとか言ったわ。この人ひどい・・・」
そんな小言を無視して真理は快生をずんずんとひっぱって行く。
「あ、そういえば真理はこの前の定期テストどうだった?」
「数学が63点と世界史が76点だった。」
いつもの感覚から行くと低いほうらしい。ほかの教科について言わないということはあの二教科以外は満点だってことだな・・・
「両方85点だったから数学と世界史は俺の勝ちだな。今回も」
「いいもん。私残りぜーんぶの教科で勝ってるから」
真理は頬を風船のように膨らませてプンスカしている。こんなたわいもない話をしていると神社の前まで来た。夕焼けに照らされた出店が魅力的な音を立てながらにぎわっている。そんな心地よさもつゆ知らず真理は大声で話しかけてくる。
「じゃあ私すべての屋台の焼きそばコンプリートするまで帰らないから。もちろんかーくんも。まぁいいかとりあえず行こっ」
「ちょっ走るなよ危ないから」
「一軒目ここにしよ。おじさんこの塩焼きそばふたつお願いします」
もう注文してるし・・・。ていうか15件ぐらいあるぞ焼きそば屋・・・。
「はやくー。遅いよかーくん。今日全部おごりってこと覚えてるよね?」
「うぅん。うん?そんな約束絶対にしてないよな。うん絶対にしてないだろ。騙されないぞ」
「お前もなかなかよるようになったじゃないか。去年はやすやすと騙されたのに・・・」
「お前去年もやってたのか。はぁー」
と言いつつ俺はお財布からお金を出し店主に渡す。
「まぁまぁそんなことどうでもいいじゃん。気にしたら負けだよ」
またそんなことどうでもいいじゃんって流しやがった。
ここまでは若者の青春の1ページだった。そうここまでは
真理が焼きそばを受け取り、口に入れようとした瞬間・・・
地面が揺れだす
足元から空中に放り出されたような感覚に襲われる
四方八方から悲鳴が上がる
俺の視界には真理しか映っていない
真理の視界にも快生しか映っていない
二人の命が燃え尽きる瞬間、深夜アニメを倍速で見ているように今までの思い出が頭を駆け巡る
そして響き渡る声「気をつけろ鳥居が崩れたぞ!!」
最後に聞こえた声
焼きそば屋の店主の声
「二人潰されてるぞ」
心底震え、異世界転生のテンプレ通り死んだ