無人町のおはなし②
○×県△△町某所。
「ほほぅ、此所は随分と大きい"真っ黒い"のがいるね」
とある"少女"が町を見渡しながら言う。
しかし、周りには"少女"が言う"真っ黒い"ものは見当たらない。
そのまま暫くの間軽やかに歩いていた"少女"は、不意に一点を見つめる。
「おっと、あれは…………」
~数十分前~
○×県△△町△△小学校。
授業が終わり、学校に用事が有る者以外が下校していくなか、二人の子供が話をしている。
「へぇー、無人町-ムジンマチ-ねぇー」
「あ、真李-マリ-あんた絶対信じてないっしょ!」
真李と呼ばれた少女は無人町の話をしていた友達に対し、棒読みで返す。
真李は、妖怪や幽霊というものを信じない。見えないものをいるなんて思えないのだ。
それに、ちょっと‥いや、少し怖いのでいないで欲しいと言う願望もある。
「まぁ仕様がないか、真李はビビりだからね。それより、今日遊べそう?」
「誰がビビりよ!って、あぁっと…ごめん、やっぱり駄目だった。」
「あリァリァ、んじゃあまた今度誘うよ!」
「うん、ごめんね。ありがとう」
目の前で苦笑いしながら言う友達に、真李は申し訳なさそうに謝ると、一瞬俯き暗い顔をする。
真李の両親は共働きで、速くて午後の四時半までいないのだ。なので、その時間まで幼稚園の妹の面倒を真李が見ている。
(本当は友達といっぱい遊びたいけど、自分はお姉ちゃんだから仕様がない。)
途中まで友達と一緒に歩き、そのまま真っ直ぐ妹が待つ幼稚園まで歩く。
あともう少しで着くころ、突然後ろから話掛けられた。
「君、その"隙"危ないね。黄昏時に気を付けてね」
「え…?」
ぱっと直ぐに振り返ったが、後ろには誰もいない。
確かに真李は"女の子"の声が聞こえた様な気がしたが、気のせいかと考え直した。
「黄昏時は魔の力が強くなるからね………」