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ちょっとした世界観説明
半年前、それは麗らかな日の続く春のことだった。
私はその日、一人の友人を失い、そして罪人となったのだ。
少し、この国の制度について話そう。
限嗣相続制度を常とするこの国において、貴族といえどもそれだけで子供の価値は保証されない。必要なのは家長となるべき長男であり、それから下の男の子たちは他家へ婿入りするか、長男の死亡時に回ってくるお鉢を待つしかないのだ。
無論、女であるならばなおのこと。私には半分血を分けた弟がいたので、当然のごとく他家に嫁ぐことが決まっていた。それも、王族の一人のもとへだ。
それだけならばありふれた貴族国家だが、この国には少しだけ変わった制度がもう一つ在る。
それが、十四歳から十六歳までの二年間、貴族の子供たちが強制的に通うこととなる学校──通称、硝子の鳥籠の存在だ。
先にも述べたように、限嗣相続が当たり前のこの国において、長男以外が家を背負うことはない。
ならば教育というものも、自ずと当人の立場によって変わってくる。
この学園には概ね三つのコースがあり、その一つは相続人である長男を教育するものである。私の弟、クラウスはこのコースに通っていた。ほかに、次男以下の者を教育するもの、そして私の通っていた他家へ嫁ぐ娘たちを対象としたものがある。
なぜこのような学校などという制度があるのかと云えば、それはやはり、相続の問題が絡んでいる。
所領を分割して子供たちに相続させることができない限嗣相続の場合、子供たちに将来の不自由をさせないためには、それだけ政略結婚が大事になってくる。
結婚できなかった女や次男以下の男たちなどは、その後、大人しく家から出ないでいるか、ある程度の金銭と引き替えに市井へと出て働くよりほかはない。
しかし、領地の数には限りがある。当然、隣の慣れ親しんだ隣人に娘を嫁がせることができるかは保証されないし、だからと言って遙か遠い反対側の領主の息子に先約の縁談があるかなど調べるのが手間だ。
そこで制度として確立したのが、この硝子の鳥籠なのである。
子供たちは大人になる直前、将来をともにできるパートナーを見定め、得るために一カ所に集められるのだ。




