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15話 頼りになる先輩?

 イレギュラーですが、1話投稿いたしました。

 以後はいつも通りに月・水の週2ペースでの投稿です。


 今日こそ、文芸部はいつも通りの文芸部だ。いや、大白先輩がいない時点でいつも通りではないけれど。


 僕は参考書を開き、紅林さんは本を読み、先輩はイリオモテヤマネコの画像をネットで漁っている。なんとも、いつも通り。


「蒼くん、センター対策?」


 先輩はお気に入りの猫の画像を壁紙して満足したようで、顔をこちらに向けて問う。


「週末に模試なので」


 僕は解いているのはセンター試験の過去問。解いてみると、理社と数IIBがなかなか厳しい。


「センターは難しい問題出ないから大丈夫だよ」


 先輩は気楽そうにそう言う。確かに、センター試験は基本的な問題ばかりだろう。だがそれは、教科書レベルのことを全分野網羅していればいいということ。難しくなくても、範囲が広いというだけで結構つらい。あと、国数英は時間もシビアだ。


「先輩はセンター試験なら満点取れる感じですか?」


「うーん、数学と生物、化学なら模試で満点は取ったことはあるよ。あー、あとリスニングもある。でも、英語は満点はないなー。理数科目も、満点ばっかりってわけじゃないし。なんか、変なところでミスるよね。97点とかよく取った気がする」


 先輩でも満点は難しいのか。


「9割は安定して取れても、満点は難しいって感じかなぁ。センターは、8割取るのは簡単、9割はちゃんと勉強すれば大丈夫、10割は運って思ってる」


 僕が解いたところ、9割取れた科目は存在しない。8割取れているのだって数IAだけだ。マズいな。先輩のいう簡単の域に達していない。


「でも、満点取る必要はないからね。9割取っていれば、2次試験でミスらなきゃ大丈夫だよ、たぶん。あっ、蒼くんって国立なんだよね?」


「まぁ、はい。国立志望ではあります」


「帝東大?」


「いえ、大学そのものは、まだ」


 少なくとも母親からは、それを期待されているのだろうけれど。


「まっ、蒼くんなら好きなところ行けるよ。2年後の蒼くんは、きっと、今のわたしより賢いだろうし。でもでも、2年後のわたしより賢いと思ったら大間違いだよー!」


「今の先輩より賢くなれるビジョンもなかなか見えませんね」


「そんなことないよ。蒼くんは1年生の時のわたしと同じくらい賢いし、1年生の時のわたしと違って、頼りになる先輩がいるからね! ほら、頼りになる先輩が!!」


 先輩は両手を使って、わたしわたしと全力で主張する。先輩らしい。


「先輩、もうすぐ卒業しちゃうじゃないですか」


「卒業しても仲良くするって約束したでしょ!! これ、紅ちゃんもだよ。頼りになる先輩がいるんだから、わたしより賢くなれる!」


 紅林さんは声をかけられると、すぐに本を閉じた。たぶんだが、読書している風に見せつつ聞き耳を立てていたのではないだろうか。


「ありがたいです。でも、真白先輩に依存すると、その先が大変そうです」


「いいね! わたしに依存させて、2人をわたしから離れさせなくしてやろう。ふっふっふっ」


「先輩は麻薬ですか……」


「その先に、抜け出せない真白菜子スパイラルが待っているー!!」


「「それは怖いですね」」


 紅林さんと僕の声が揃って出ると、先輩は「あはは」と楽しそうに笑った。なんとも無意味な戯言の応酬だ。本当に意味がなくて、無駄で、……楽しい。


「もう1人の頼れる先輩は今、沖縄でエンジョイしてるのかなぁ。わたし、去年修学旅行サボったからなぁ……」


「サボったんですか?」


 まぁ、それはなんとも先輩らしいエピソードではあるけれど。


「だって、だって、予定表にマリンスポーツなんて入ってるんだもん! そんなの行くわけないよ。海に入るなんてありえない。わたし、泳げない!」


 かなり個人的な理由によるボイコットだった。単に嫌だからサボったというだけ。


「そうですか」


 僕は苦笑をして返した。


「なんで沖縄なのさ。京都・奈良とかなら、たぶん行ったのに。海ないし」


「京都は海ありますよね。まぁ、修学旅行で京都に行って、海に行くとは思えませんけど」


 マリンスポーツというのは、確かに面倒くさそうな感じはある。寺社を巡る方が楽しそうというのは共感できる。


「うーん、でも、京都・奈良は中学の時に行ったから、北海道とかいいと思う! 牛に会える!」


 マリンスポーツよりは牧場に行く方が楽しそうか。そんな気もする。


「真白先輩は本当に動物がお好きなんですね」


「うん。牛、好きだよ。美味しいし」


「え……」


 紅林さんの笑顔が引きつった。牧場に行った先輩が、牛に対して、「いやー、美味しいそうだね、きみー」とか満面の笑みで話しかけるのが、簡単に想像できてしまった。


「それはさておき、とにかく、海に入ろうなんて、わたしとしては却下だよ。却下! わたしが一浜を選んだ1番の理由は、プールがないことだっていうのにさ」


 ……先輩がこの中途半端な偏差値の高校を選んだのは、プールがないからなのか……。らしいといえば、らしいけれど……。


「修学旅行の行き先は、早急に変更すべきだね。蒼くんと紅ちゃんもそう思うでしょ?」


「先輩の言いたいことがわからないわけでもないですが、僕は別に。まぁ、マリンスポーツは気乗りしませんが」


「私も、場所は沖縄もいいと思います。でも、マリンスポーツは確かに気乗りしませんね」


 そう言った瞬間に。


「では、まずはそれを変えてみる気はないかい?」


 パソコン室のドアが開かれ、そんなことを言いつつ、男子生徒が闖入してきた。背は僕と同じくらいで高くはなく、体つきも僕と同様に細身。整った顔立ちも相まって、女性とも見間違えそうだが、制服から間違いなく男性。


「だれ?」


 先輩の率直な問いに、そいつは微笑んで答えた。


「紺野 嶺。真白先輩、あなたのファンです」


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