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道徳の解答の作り方 ー文芸部による攻略ー  作者: 天明透
第5章 2学期中間試験編
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1話 なぜ、僕は

 5章スタートです。5章は試験のお話です。更新はやはり月曜日と水曜日にしようと思います。


 2学期の中間試験は10月4日からだ。約2週間前。文化祭の振替休日でやることもないので、本格的な試験勉強を始めることにした。と言っても、試験範囲なんてまだ発表されてもいない。だいたい予想はできるが、その予想にしたって、まだ半分も授業では終わっていない。

 定期試験の勉強をする上では、授業でどのような教え方を教師がしていたかを意識することで効率が変わる。出題者たる教師の思考をトレースすることで、試験勉強は捗る。授業はそのトレースの材料として、最もわかりやすい。もちろん、過去問を使うことで、授業を受けていなくてもある程度は教師が何を意識しているのかを読めはする。しかし、過去問があろうが、授業の有無はやはり大きい。


 そんなわけで、2週間前たる現在の勉強は、とりあえず教科書の内容の理解と、問題演習。試験の予想問題を構築するところまではいかない。


 実をいうと、予習はだいたいしていて、今回試験範囲になるであろう部分の内容は既に理解できているつもりだ。

 妹曰く、僕は勉強と読書で構築されている。なら、その片翼たる勉強に()く時間は必然的に多く、手元にある教科書や資料集を読み漁っているのは、まぁ、当たり前といえば当たり前だ。


 特に理系科目は問題集なんかも解き漁っているわけで、試験範囲になるであろう問題を改めて解いても、そりゃあ解ける。文系科目には指定の問題集がないので、そうはいかないものの、とりあえず教科書の内容に関しては問題ない。


 既に予習を終えているせいで、何を今更という感情が生じてしまう。勉強がただの作業になってしまうと、面白くない。面白くない勉強は続かない。面白くなければ、苦痛なだけだ。これは気に入らない本を読む心境と変わらない。


 試験勉強を始めて、2時間もしないうちに僕はそれを切り上げた。


 例えば今、あのクラスメイト6人は映画を観ているのだろうか。僕がこうして勉強する手すら止めて、ただ無駄な思考をしている今、6人でいるのだろうか。

 僕はそこに加わることを拒否してまで、今、無駄な思考をしているのだ。


 自分という人間がしてきた選択を思うと、なぜと感じることがある。


 なぜ、僕は文芸部に入ったのか。

 なぜ、僕は体育祭をサボったのか。

 なぜ、僕は勉強会に出なかったのか。

 なぜ、僕は夏季合宿(仮)に行ったのか。

 なぜ、僕は文化祭でシフトに入らなかったのか。

 なぜ、僕は文化祭で部長の提案に従ったのか。


 それぞれの選択を考えると、その選択の根底にあるはずの僕という人間の意思が、矛盾しているように感じる。


 僕は、僕を尊重したい。僕も、例えば部長のように、当たり前に自分が1番大事だと宣言したい。きっと、再三指摘されてきたように、僕は部長のようになりたいのだろう。僕はあの人に、単純に憧れているのだろう。

 そんな僕が、それなのに僕は、僕が正しいとは思えない。当たり前のように僕は間違っているとわかる。


 集団に迎合しない自分を僕は好んでいる。おそらく、僕は自分が好きだ。だが、そんな自分が正しいとは思っていない。間違っていると確信している、そんな自分が好きなのだ。それは何か、気持ち悪い気がする。


 僕は一体、何にこだわっているのだろう。それはきっと、どうでもいい、取るに足らないものだ。それでも、そう自覚していても、僕はこだわる。


 自分を中心に。それが本当にできるのなら、どれだけ理想的なことだろう。だが、理想的であると同時に、頑なにそうであり続けることは難しい。僕には、それがきっとできない。それをしている部長は、やはり特別な人だ。そう思う。


 僕は部屋を出た。思考の方向を変えるために、水でも飲むことにした。台所に向かう。今日は平日で、家には僕しかいない。


 水道の蛇口をひねる。コップに溜まった水を飲む。人によっては水の味がわかるらしいが、僕にとっては水は水で、水道水だろうとマズいとは感じない。


 家に1人でいることに、なんとなく閉塞感を覚えた。部屋に戻って勉強を再開しても、きっとすぐにやる気が失せる。


 図書館に行ってみよう。そう思いついた。


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