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20話 立派な舟を作ってくれ

 リアル多忙にて、21話の投稿を遅らせます。たびたび申し訳ありません。


「いや、文集に載せる作品なんだから、短編にしないと。絶対長くなるでしょ、これ」


 山城くんの書いたそれは、文化祭前日に夜まで準備に残った文芸部員たちが次々に消えていくというどこかでみたことのあるようなミステリー作品。


 書かれたのはプロットであり、大まかな流れが示されているのだが、少なくとも5ページで終わる内容ではない。即興でこれを作ったのは素直にすごいと思うが、文集には向かない。


「そして誰もの本歌取りですね。蒼井くんのは童話の揶揄。やはり即興で何かとなると、たたき台になるものを用意する傾向にあるみたいですね」


 という紅林さんが書いたのは、文芸部のメンバーが即興で物語を書くことになったという状況、つまり今の状況そのものを物語風に説明したもの。


「紅林さんのこれはありかもですか。短編ですし、文芸部が文化祭で出す文集という状況でのみ許される作品と言いますか」


 結局、誰一人オリジナリティのあるストーリーを作ってはいなかった。まぁ、高校生の作る文集はそんな感じの気合の入れ方でいいと思う。


「制作秘話なんかを間に入れるのは定番だと思いました。最初に作る作品が制作秘話というのは何か矛盾していますけれど」


 確かに定番だし、矛盾している。


「幕間が先にできて本編がないというのは、なんとも」


「陸斗先輩の、ダメなんですか? もうちょっと文体整えれば長さ的にもいいと思うんですけど」


「私個人としては、文集に載せるような話かなとは思います。文芸部内でちょっと話を書こうというのならいいんですが、外に向けて発信する内容かというと……」


「僕も同意ですね。この話を文集に載せるのはあまり」


「そう思っているなら、載せられる話を作ってください」


 少し責めるような口調で紅林さんは言うが、僕は柳に風とばかりに受け流す。


「思いつかなかったんですよ」


 物語などそう簡単には書けない。


「文集って何作品くらい載せるんですか?」


 山城くんの質問は訊いてしかるべきものだが、僕たちにもそれがよくわかってない。


「まぁ、作品の文量にもよるし。山城くんがさっきの話を本気で書くなら、最悪それだけでもいいんじゃない?」


「文集ではなく単行本になりますが、それはそれでいいです」


 紅林さんも同意し、山城くんは「え?」って顔をする。


「先輩たちって文集作ったことあるんですか?」


「ない」

「ありません」


「経験のある先輩は?」


「いないね」


 山城くんはもはや呆れというより諦めの表情を浮かべていた。


「なんか、泥舟に乗った気分です」


「大丈夫、まだその泥舟すらないから。君が立派な舟を作ってくれればいい」


「それっぽいこと言って、要は新入生に丸投げってことですよね」


「丸投げというか、未経験ってところで立場は同じなんだよね」


 すべてを山城くんに任せる気は流石にないが、僕たちが先輩として主導することはおそらくできない。


「この部って部員何人なんでしたっけ?」


「僕たち2人と先輩が1人の3人」


「少ないですね」


「まぁ、文芸部だし。とりあえず、潰れるところまではいってないから」


「新入生、もっとちゃんと募集しないんですか? ここに来るまで、いろんな部からめちゃくちゃ声かけられましたけど」


 山城くんは頬杖をつき、先輩に対する態度ではなかったが、ここにそんなことを気にするものはいない。


「そんな人員いないよ。それに人を呼んだところでやれることもあんまりないし。いきなり物語を作りましょうなんて言われて手が動く方が珍しい。そういう意味で君は文芸部の救世主だ」


「まっ、文芸部には入るつもりですけど、これくらいの緩さなら兼部とかもありですかね」


「文芸部側からすれば、兼部はしてもらって構わないと思う。もう一方の部がどうかはその部活によるけど。あ、漫研がストーリー書ける人材を募集してたよ。兼部も可だって。絵は描けなくてもいいらしい」


「また漫研の宣伝してるんですね」


 彼と初めて会った文化祭の時も、そういえば漫研の宣伝をしていたんだった。


「今回は単にさっき声をかけられただけなんだけど」


「運動部と音楽系を除くと選択肢がここと漫研くらいしか残らないんですよね。もっと変な部活があれば面白いのに」


「変な部活は部活として承認されないでしょ。ラノベの読み過ぎ」


「この文芸部だって大概じゃないですか」


 まぁ、変な部活であることを否定はしない。しかし、文芸部くらいなら普通にある範囲ではあると思う。


「ないんですか? 公になってない秘密の部活みたいなの」


「知らないね。公になってないなら、僕が知る由もない」


「……じゃあ、作りませんか。この春休みの間のイベントとして。で、文集の題材にするとか」


 山城くんの提案に、僕と紅林さんは首を傾げた。


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