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15話 大人なわたしの方が譲歩してあげようじゃないか


『真っ白最高: 蒼くんはやっぱりシスコンだった!!』


 案の定だ。知ってた。


 先輩には妹とケーキバイキングに行きたい旨を全て正直に話した。イブは妹とケーキバイキングに行きたいので先輩とは出かけられませんって、そりゃシスコンで間違いないだろうさ。


『蒼井陸斗: 今回の件については否定しません。言ってること、完全にシスコンですから』


『真っ白最高: 蒼くんと妹ちゃんのデート、わたしも行きたい!! 後ろでニヤニヤしながら眺めたい!! 先に約束してたのはわたしなんだから、一緒に行ってもいいでしょ?』


『蒼井陸斗: 普通に嫌なんですが……』


『真っ白最高: いいじゃん! 3人でケーキ食べよ!』


 先輩と妹に挟まれてケーキを食べる? なんの拷問だ。そして、それ以前に。


『蒼井陸斗: ケーキバイキングは男女の2人組限定らしいですから』


『真っ白最高: もう1人男子が必要なわけだね』


 そういう発想になるのか。大白先輩はイブは友人たちとスマブラだったはずだし、もう1人男子を用意するとか無理だろう。


 ていうか、そんなよく知らない人に囲まれたら妹のストレス発散にならない……。


『蒼井陸斗: 妹が萎縮するのでやめてください。色々ストレスを抱えてるみたいなんで、ちょっとは発散させたいんですよ』


『真っ白最高: じゃあ、見つからないように陰ながらついて行くね』


 もはやストーカーだ……。こちらが一方的に約束を反故にしたのだから文句を言える立場でもないか。


『蒼井陸斗: まぁ、見つからないようについてくるのは、僕は関知しませんけど。先輩がそれを本当に実行したか否かはわからないわけですから』


『真っ白最高: 黙認もらった! じゃあ、蒼くんの家の住所と、何時に家を出るか教えて。ついてくから』


 それをしたら黙認ではなく公認になる……。


『蒼井陸斗: それはお断りします』


『真っ白最高: 実は帰りの蒼くんをつけたことあるから、家の場所は知ってるんだけどね』


 えぇ……。さすがに、それは引く。僕はそっとLINEを閉じた。


『真っ白最高: 冗談だよ?』


 返信をせずにいると、不安になったのかそう送られてきた。本当に冗談だったのかは判別がつかない。


『蒼井陸斗: まぁ、色々申し訳ないのですが、24日はそういうことで。それで、23日は三者面談になってしまったので無理なんですが、26以降なら予定をずらしても僕は大丈夫ですけど、どうします?』


『真っ白最高: 24日は本命の子とデートだから、君は26日でもいいかなってこと?』


 面倒くさい返しだな……。まぁ、悪いのは僕だけれども。


『蒼井陸斗: 24日は妹と出かけるから、先輩は26日でもいいですかってことですね』


『真っ白最高: 蒼くんさ、わたしがどうしても24日がいいって言ったら、どうするの?』


『蒼井陸斗: 謝ります』


『真っ白最高: 妹ちゃんの方を断ることはないわけだ』


『蒼井陸斗: あいつ、今 色々と大変そうで、でも、僕ができるのってストレス発散に付き合うことくらいなので』


『真っ白最高: 今まではふざけて言ってたけど、蒼くんって本当に、すっごく妹ちゃんのこと大好きなんだね。やーい、シスコン、シスコン』


『蒼井陸斗: 好きというより、家族なんで。大切って方が適切です』


 この言い方も、それはそれでシスコンっぽいけれど。


『真っ白最高: 恋じゃなくて愛なわけだ。美しき兄妹愛?』


『蒼井陸斗: 美しくなんてありません。言ってしまえば、2人ともなんとなく親とうまくいってなくて、互いに共感を求めているだけなので』


 親とうまくいってないとか、なんでそんなくだらないことをカミングアウトしているんだろう。そんなこと言っても先輩を困らせるだけだ。……まぁ、先輩をちょっと困らせるくらい別にいいか。


『真っ白最高: 蒼井家も色々大変なんだね。うちも、1人娘の考えていることが理解できないみたいで、親は大変そう』


『真っ白最高: わたしも兄弟姉妹欲しい。妹をねこっ可愛がりしたい。ねこ欲しい』


 欲しいものが妹から即座に猫に変わっているのだが……。

 まぁ、話が重くなるのを嫌っての先輩なりのジョークだろう。……先輩の場合、ただただ本当に猫が欲しいだけの可能性もあるけど。


『蒼井陸斗: それは、クリスマスプレゼントは猫をご所望ということですか?』


『真っ白最高: うちペット飼えないから、それでも飼えるやつね』


 紅林さんに倣ってぬいぐるみでも用意すればいいのだろうか。先に欲しいものが聞けているなら前より楽だ。


『真っ白最高: 蒼くんへのプレゼントは円周率100万桁でいい?』


 売ってるの見たことあるな、それ。ちょっと気になって、手にとって見て、いらないってなるやつ。


『蒼井陸斗: 嫌だとは言いません。生きている猫を贈られるよりずっといいです』


 猫の死体だってもちろんのこといらないけど。


『真っ白最高: 24日はダメなのはわかった。大人なわたしの方が譲歩してあげようじゃないか』


『真っ白最高: 代わりに26日はどっかで遊ぼう。24日にケーキ食べるなら、ケーキはやめて。何するか具体的には蒼くんが考えて。蒼くんがキャンセルしたんだから』


『蒼井陸斗: わかりました』


 そう送りつつも、どこに行くかとかさっぱりだった。先輩となら、とりあえず本屋にでも行けば時間潰せそうだけど、そんなのでいいのか?


『真っ白最高: 蒼くんがどんなに素敵な boxing day にしてくれるのか、あー、楽しみだなー。人生で1番楽しい boxing day になるんだろうなー』


 煽るし……。これはこれで、また面倒ごとを1つ抱えた気がする……。


『蒼井陸斗: 期待には応えられないと思いますが、善処します』


『真っ白最高: すっごく期待してるからねっ!』


 LINEのやりとりはここで終わった。あー、どうしよう、これ。


 僕は「はぁ」と自然に大きなため息をついていた。


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