3話 それで、仲は良いの?
『真っ白最高: それはどんな方法でもいいのかな? 例えば、会長をインフルエンザにするとか』
概ね予想通り、先輩はこの話に興味を持った。しかし、会長を説得するというつもりはないらしい。
帰宅して昼食を食べ終えた後、部屋で先輩に連絡をしたところ数分でレスポンスがあった。
『蒼井陸斗: やる気があるなら、依頼してきた生徒会書記の人と話してください。先輩がいいなら、相手に連絡先教えますから』
『真っ白最高: 生徒会書記って誰だっけ?』
『蒼井陸斗: 佐伯さんって人で、前にうちの部に質問しにきた人の中の1人です』
『真っ白最高: 蒼くん、その子と仲良いの?』
『蒼井陸斗: 仲が良いというより、勉強をよく訊きに来る人です』
『真っ白最高: 仲は良くない?』
仲が良いか否かにそんなにこだわらなくてもいいだろうに。
『蒼井陸斗: クラスメイトの中では、よく話す方ではあります』
『真っ白最高: それで、仲は良いの?』
これ、Yes or No ではっきり答えないと終わらないのか?
『蒼井陸斗: 悪くはありません』
『真っ白最高: 蒼くんって、実は女の子の友達多い?』
学校で話す相手に占める女子の割合はたしかに高い。しかし、それは女子の友人が多いというわけではなく。
『蒼井陸斗: 男子の友人が壊滅的に少ないんですよ』
男子で友人と呼べる相手、大白先輩だけかもしれない。
自分から友人を作りに行かなかった結果、文化祭の片付けをサボらなかったというきっかけ以外で友人が増えてないんだよな……。
『真っ白最高: その子はなんで蒼くんに頼るの?』
『蒼井陸斗: 会長の影響かと。あの会長、まだ文芸部に関わろうとしているみたいです』
『真っ白最高: わたし、あれ、苦手。クリスマスに大失敗して自信をなくせばいいと思う』
佐伯さんは僕の会長への当たりが強いと言っていたが、先輩だって大概だ。
『蒼井陸斗: 話を戻しますが、クリスマスイベントを中止させるのに先輩は協力しますか?』
『真っ白最高: 蒼くんは?』
『蒼井陸斗: 僕は関わる気はありません』
『真っ白最高: 生徒会の書記の人に協力するんじゃなくて、わたしたちが独自に中止に追い込むのは? 生徒会の人のために穏便に中止に持っていくんじゃなくて、外部から無理やり潰すの』
『蒼井陸斗: それはさすがに性格悪いかと』
関わらずに失敗を願うのはともかく、積極的に潰しにかかるのは完全に敵対行動だ。あの会長に恨まれるのは、まぁ、別にいいとして、佐伯さんや紺野さんから恨まれるのは面倒くさい。
『真っ白最高: 会長は自信をなくして、蒼くんは友達をなくして、一石二鳥!』
『蒼井陸斗: 先輩は僕の友達を減らしたいんですか……?』
面と向かっていない分、冗談成分が読み取りにくい。先輩は今、性格の悪そうな笑みを浮かべながらスマホと向き合っているのだろうか?
『真っ白最高: わたし、さっきまでこれ読んでたのー』
突如 送られてくる画像。それは文庫本の写真で、タイトルが『独占欲』。読んだことはないので内容はわからないが、今のやりとりは本を模倣したものなのか。
『真っ白最高: 蒼くんはわたしのものだー。わたしの知らない女と仲が良いなんて許さなーい』
『蒼井陸斗: そういう話なんですか?』
『真っ白最高: うん。主人公、すっごく気持ち悪いよ。読んでるとイライラしてくるから、おすすめ』
なぜイライラする作品をおすすめするんだ……。
『真っ白最高: さて、で、真面目に答えると、あの会長にひと泡ふかせるのはちょっと楽しそうだけど、生徒会の人に協力して会長を説得するのは興味ないかな』
『蒼井陸斗: なら、特に協力はしないということで』
『真っ白最高: うん。生徒会内部の問題なんだから、生徒会内部で解決したらいいと思うよ』
正論だ。まさにその通り。先輩がまともなこと言ってる。
『蒼井陸斗: その通りですね』
『真っ白最高: その書記の人も、トップがあれだと苦労するねー』
先輩が言うと、ちょっとブーメランな気もする。
『真っ白最高: ちなみに蒼くんのクリスマスの予定は?』
『蒼井陸斗: 25日って終業式ですよね? 当然 学校に行きますよ?』
生徒からは不満の声もあるらしいが、うちの高校はちょうどクリスマスまで学校がある。
『真っ白最高: じゃなくて、日曜日の24日は?』
『蒼井陸斗: 特に予定はありません』
まぁ、イブの予定が特にないのは、僕みたいな人間からしたら普通のことだ。
『真っ白最高: わたしも。紅ちゃんと大くんはどうか知ってる?』
『蒼井陸斗: 知りません。部で何かやるんですか?』
『真っ白最高: まだ考えてる最中。紅ちゃんと大くんにも予定訊いてくるー』
部で集まるなら全員学校に来るだろう25日でいいのではと思ったが、それを言うのはやめておいた。
とりあえず、先輩も生徒会に介入する気はなし。生徒会の方はもう気にしなくていいだろう。イベントを実施して微妙な結果になろうが、佐伯さんの尽力で中止になろうが、僕には関係がない。
問題は部でクリスマスに集まる可能性が出てきた方。クリスマスに集まるって、あれだろうか。また、プレゼントの用意とかしないといけないやつだろうか?
正直、クリスマスに関してはそれが1番の懸念事項だった。
再三になりますが、作中の登場する書籍は私の創作です。仮に同タイトルのものがあったとしても一切の関係はありません。