表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/332

1話 かーまくーらだぁー!!

 第3章スタートです。3章の前半は(主に1名だけが)ワイワイガヤガヤとした旅行記になります。

 活動報告にありますように、今までより分量が減ります。ただ「*」1つで切ると、いくらなんでも短過ぎるだろと思ったので、その辺りは調整します。

「かーまくーらだぁー!!」


「いや、ここは大船駅っすよ」


 夏季合宿(仮)。まず宿に荷物を置くために大船へと向かい、僕たち4人は大船へと到着したのだった。


「駅に本屋があるのはいいよねー」


 部長が本屋に吸い込まれていく。


「部長、本屋はけっこう色んなところにありますから、まずは宿に行きましょう」


 紅林さんが先頭で地図を確認し、大白先輩が1番後ろに構え、僕が部長が消えないように見張るという体制で移動を開始した。


「おぉー、なんだ? あの白いのー」


 部長は今日も元気です。


「大船観音ですね。曹洞宗のお寺があるそうです」


 紅林さんの解説に「へぇ」と頷きつつも、僕たちは宿を目指す。


 宿に到着しそれぞれの部屋へ荷物を置いた。部屋はもちろん男女別だ。この後は鎌倉を観光することになっている。


「どこ行くんだったっけ?」


 部屋にて大白先輩が僕に尋ねたが、僕もしっかりと把握しているわけではない。


「紅林さんに訊く方が正確だとは思いますが、確か、まず八幡宮に行って、そこから大仏と長谷寺、そこで体力と時間が残っていればどこか別の場所にだったと思います」


「明日が江ノ島だったか」


「はい。確か」


 こういう会話をしていると、紅林さんに頼りきっていると感じる。ありがたいことだ。


「そうか。じゃあ、行くか」


 荷物のある程度の整理もしたので、僕たちは鎌倉観光へと()せ参ずるのであった。



「かーまくーらだぁー!! テイク2」


「はい、鎌倉ですね」


 夏休みの観光地ということもあり、人が多い。大多数の人が同じ方向に向かって行くあたり、たぶん僕たちもあっちの人混みへと向かうんだろうな。


「えっと、小町通りから鶴岡八幡宮に向かう予定なんですが、すごい人ですね」


「かーまくーらだからね。はぐれないように手を繋いでく?」


 僕たちの実情はともかくとして、見た目で言えば、


 元気な小学生

 強面の青年

 内気そうな少女

 非力そうな少年


 だ。この集団が手を繋いで歩いていたら、はたからはどう見えるのだろう。仲のいい兄弟姉妹?


「部長が飛び出していかなければ、そうはぐれないと思いますよ」


「そう? なら行こー!!」


 言ったそばから部長は飛び出していった。僕たち3人は部長を追いかけて人混みへと身を投ずるのだった。


 小町通りは誘惑の多い通りだ。


「アイス買おう! アイス!」


 そして部長は誘惑にかかりやすい人らしい。


「暑いしさ、ほら、紅芋のアイスだって」


 確かに暑い。今日は猛暑日まであと少しの真夏日らしい。

 アイスには惹かれる。そう思うのは僕だけではないようで。


「いいっすね。名物っぽい感じっすし」


 大白先輩が賛同し、そのままアイスを買う流れとなった。

 それぞれ会計を済ませ、食べ歩くのではなく、その場で食べ始めた。


「なんで、バニラ買ってるんすか?」


「え? わたし、アイスならバニラとチョコが好きなんだよ」


 部長は紅芋ではなく、バニラを買っていた。それ、どこにでも売ってる。と思いつつ、僕もバニラを買った。芋があまり好きではないのだ。


 ふと目をやると、紅林さんまでバニラを買っていた。


「いや、こういう場面だったら普通は紅芋買わないっすか? なぁ、って、お前らもバニラか……。いや、バニラも美味しいけど、なぁ?」


「うーん、つめたーい」


 大白先輩の声は部長には届かない。アイスのどの味を買おうが、別に自由だろう。


「ん! フクロウの森だって! みんな、フクロウって生で見たことある?」


 部長はあっちにふらふらこっちにふらふらとするものだから、監視するのも大変だ。3人ともが、見失わないように常に部長に視線を向けていた。


「動物園であったと思うっす。よく覚えてないっすけど」


「私も動物園で見たことはあります」


「僕はないですね。動物園とか行ったことありませんし」


 水族館なら行ったことはあるのだが、動物園はない。


「見てく?」


 部長が尋ねているのは僕らしい。


「えっと、僕はどちらでもいいです」


 と口にすると同時に、看板に目をやった。その料金は、動物園と比較するなら、高いとは言えないだろう。しかし、僕の懐としては厳しかった。アイス買っちゃったし。


「いえ、やっぱり予定通り八幡宮に行きましょう」


 そう言って先に進む。


「おお! 人力車だよ! 人力車!」


 また部長は駆け出して行く。そこかしこに部長の目を惹くものがある。さすが、観光地。


「真白先輩、少し落ち着いてください」


「いやいや、ここは思いっきり楽しまないと損だよ!」


 部長はまさしく思いっきり楽しんでいた。


 その後も八幡宮に至るまでに、オカリナやらトンボ玉やらその他諸々に多大な興味を示し、小町通りだけで1時間も時間が経っていた。


 そして、やっとついた八幡宮前の信号を待つ間に、部長は言ったのである。


「いやぁ、疲れたねぇ」


 誰のせいだ! と言いたくなるのを必死に堪えたのは僕だけではないと思う。


 最初の目的地に着く以前に、僕たち4人はかなり疲れていた。


 八幡宮の中も当然のごとく人で溢れていた。


「ここってアレだよね、実朝の暗殺されたところ」


 部長、そういう知識はやはり持っている。


「実朝って誰っすか?」


「大くんは日本史選択だろー! さぁ、期待の1年生、実朝ってだーれだ?」


 まさかのクイズ形式である。紅林さんはちらとこちらを見てから答えた。


「源実朝、鎌倉幕府の三代将軍です」


「さっすが紅ちゃん。じゃあ、蒼くん、実朝を暗殺したのは?」


 このクイズ続くのか。まぁ、知ってはいるが、詳しくは知らない。


「甥の公暁ですよね? 動機とかは知りません」


「うーん、北条氏がけしかけたらしいってオノ先は言ってた。本当かは知らなーい。さて、大くんは日本史の授業を聞いているのかな?」


「まだ平安時代やってるんすけど……」


 そんな少し頭よさげな会話をしながら、八幡宮の中をテキトーに見て回る。


「おぉ、鳥がいっぱいだ」


 白い鳥が水辺に大量にいた。部長も疲れているのか、走って鳥の群れに突っ込んで行くことはなかった。


「この鳥、なんて鳥?」


「さぁ?」


 僕は鳥を見て種類がわかるほど鳥に詳しくはない。


「鳩ですよ」


 紅林さんはそう答えた。これ、鳩なのか。白い鳩というのもあまり目にしない。


「え? 鳩って白いの? わたしのイメージだと灰色っぽい、あー、あれあれ! わたしのイメージする鳩!」


 確かに、部長が指差す先には僕のイメージにも合う鳩がいた。


「白鳩なんて呼ばれるみたいです。鶴岡八幡宮ではこの白い鳩を飼育しているらしいです。コースを作るときに少し調べました」


「「へぇ」」


 部長と声が被ってしまい、なぜか失敗した気分になった。


「白い鳩っていうと、平和の象徴って感じか」


 大白先輩の言葉に、確かにと思った。言われてみれば平和の象徴として白い鳩というのは目にする。鳩って白いの、と内心思ったのが少し恥ずかしい。


「あっ、そっか。鳩って白いね。大くんのいう通りだ。平和の象徴だ」


 そんなことを話していると、鳩が飛び、部長の腕の上に乗った。


「おぉ! わたし、鳥使いみたいになってる! 写真! 写真撮って!」


 たぶん、観光客に相当餌付けされているのだろう。とても人に慣れている。


 平和の象徴と(たわむ)れる部長の写真を撮り、平和だなぁという気分になった。だいぶ疲れてるみたいだ。


「もう15時過ぎてますね。この後、予定通りに回りますか?」


 紅林さんが時計を確認して言った。宿に荷物を置いたのが13時前だったように思う。するとそれからもう2時間経ったのか。


「わたし疲れたから、ちょっと休みたいなぁ」


「では、ここでもう少しゆっくりして、えっと、予定だと節約のために高徳院まで歩こうと思っていたんですが、どうしますか?」


「どれくらいあるんですか?」


「えっと、ここから鎌倉駅まで戻って、そこからその2倍くらいでしょうか」


 歩けない距離ではない。疲れていなければ普通に歩く距離だ。


「歩かないなら、どうするんだ?」


「江ノ電ですね。長谷まで行けば、高徳院は歩いてすぐです」


「江ノ電乗ろー。観光電車だー」


 江ノ電に乗るというのも鎌倉観光らしい。勝手なイメージではあるが。


「江ノ電の名所となるところは、残念ながら鎌倉長谷間にはないですね。他の区間には、海を一望するとか、路面電車になるとかあるみたいなんですけど」


「うーん。でも、歩くよりいいよっ! 疲れたし」


「なら、そうしましょう」


 思っていたよりも観光というのも体力を使う。


 現在では、日本史は選択科目ではなく必修科目らしいです。それをいうと、数Cという科目もないとか。そのあたりのカリキュラムの齟齬(そご)には目を(つむ)って下さい。センター試験ネタなんかも後に入れるつもりだったのに、センター試験も名称、内容ともに変わるそうで、このような変化は小説にも地味に影響しますね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ