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道徳の解答の作り方 ー文芸部による攻略ー  作者: 天明透
第7章 2学期期末試験編
152/332

38話 友達から誕生日プレゼントもらうなんて初めて!!


「えっとー、まずはやっぱり、頭がいい所?」


「僕も1個目はそれで」


 これはいい。先輩の成績がいいことは今更疑いようもない。問題は残りの4つ。


 紅林さんと大白先輩が見ている中で先輩と長所を言い合う。なんの拷問だ、これ。


「わたしと仲良くなれる精神性! これはわたし視点で超いい所」


「行動力のある所は先輩の長所だと思いますよ」


「あとは、意外にいい人な所とか?」


「いい人ですか?」


 思わず尋ねてしまった。僕はつい最近、自分はいい人ではないと宣言した気がするのだが。


「蒼くん、集団には厳しいけど、個人には優しいと思う。ううん。少なくとも……わたしにはなんだかんだ言って優しいかなって」


「あー、はい。そんなことないですけど、はい」


 訊かなきゃよかった……。僕は先輩から顔をそらした。紅林さんと大白先輩がニマニマして見ていた。一瞬、本気で殴ってやろうかと思った。

 ダメだ、さっさと終わらせよう。そうするしかない。


「先輩は活気があって、いるだけで周りが賑やかになりますね」


 まぁ、つまりは騒がしいという意味だが、なんだって言い方を変えれば長所っぽくなる。


「意外に物怖じしない所とかも長所かなぁ。この前、あれだけの人数の前で普通に授業しててちょっとビックリした」


「それは同じようなことが先輩にも言えますね。周りの目を気にしすぎないことは長所ですね」


 先輩の場合、気にしすぎないというか、まったく気にしていない感じもするけど。


 さて、あと1個。追求されても問題のない、穏便に済ませられる先輩の長所……なんだろう?


「蒼くんズルい。最後は蒼くんから言って」


「えっと……」


「はい、3、2、1、どうぞ!」


「子どもっぽい所……」


 急かされてとっさにそう言っていた。いや、なんだって言い方しだいで長所っぽくなる。えっと、子どもっぽいを換言、換言。


「いえ、あの、子どもっぽいではなく、可愛らしいというか……まぁ、はい、可愛い所で。少動物然として」


 そう、少動物然として。僕は、少動物を愛でるのと同様の意味合いで今の言葉を言った。とっさになんか変なことを口走ったわけではない。


 ……まぁ、容姿が整っていることは嘘じゃないし。小学5,6年生としてなら、客観的に可愛いはずだ。高3としてだと、可愛いより幼いだけど。


「子どもっぽくないし。可愛くもないし……」


 なんとも言えない空気になった……。普段なら先輩がもっとワイワイガヤガヤとまくし立てるからこんな空気にはならないのに。

 パーティーなんてキャラに合わないことをしたばかりに。学習した。もうパーティーなんてしない。罰ゲームなんて絶対に許容しない。


「蒼くんの長所5つ目。わたしの誕生日をちゃんと調べてくれた所。紅ちゃんも大くんも、お祝いしてくれてありがとうー!!」


 先輩が無難に締めて、雰囲気の修正にかかる。


「罰ゲームトランプはお終い! それより、きっとプレゼントとかあるよね? ね? わくわくわくわく」


 こういう切り替えの早さも先輩の長所だよな。これを言えばよかった……。


「じゃあ、用意してきたプレゼント渡しましょうか」


 紅林さんも切り替えてくれたようで、雰囲気は元に戻った。


 包み紙を纏った3人のプレゼントが出揃い、先輩はそれらを見てニヤぁと緩んだ笑みを浮かべた。

 サイズは僕のものが1番小さく、紅林さんのはやけに大きい。紅林さんのプレゼントは20cm四方程度の箱。大きさから考えるに、ぬいぐるみとかそういうものっぽい。

 大白先輩のは何か平たいものがラッピングされたもの。たぶん服なんじゃないだろうか。


 とりあえず被りはなさそうでよかった。プレゼントの相談は3人の間でしてないし、もし被っていたら気まずさがすごかっただろう。


「開ける前に予想すると、大くんのはもう服だよね。大くんのセンスに期待。紅ちゃんのはぬいぐるみかなぁ? 大穴を狙うなら据え置きハードゲーム機もこのくらいのサイズ? 蒼くんのちっちゃいのは……アクセサリー類? もしくは栞とかありそう」


 据え置きハードゲーム機って、そんな1万円を普通に越えるものをプレゼントなんてできない。そんなものを贈るのは高校生的に非常識だと思う。


「じゃあ、小さい順に開けてくねー」


 先輩は僕のプレゼントを開こうとして、メッセージカードの存在に気づく。


「なにこれ?」


「あー、なんか紅林さんにメッセージカードを書けって言われたので書きました」


「なにそのやれって言われたから仕方なくやった感……。紅ちゃんと大くんのもあるの?」


「はい」

「あ、俺 書いてない……」


「大くん!?」


「いや、プレゼントの方探すので結構 手一杯だったっていうか……。じゃあ、口頭で! 誕生日おめでとうございます。大学に行っても、菜子先輩らしく楽しんでください!」


 大白先輩は勢いよく頭を下げた。メッセージ変えといてよかった。被るところだった。


「なんか、誕生日っていうより卒業の時の言葉って感じだよ? わたしまだ3ヶ月以上高校生なのに。ま、いいや。メッセージは後にして、まずはプレゼント!」


 そして先輩は改めて僕のプレゼントに手をかけた。


「ブックカバーかぁ。栞、惜しかったなぁ。ブックカバー、ブックカバー……うん、そうしよう。蒼くん、ありがとう!」


 なんだ、今の間は。そうしようって何をどうするんだ? しかし、僕が疑問を投げかける間もなく先輩は次の包み紙に移った。


「次は大くんねー。……白衣? なにこれ? コスプレしろって意味?」


 包み紙の中から現れたのは先輩の言うように白衣。先輩が着たら給食当番にしか見えなさそうなそれだった。いや、実験用白衣だからさすがにそうは見えないか。


「大学に進学したら必要になるんじゃないかと思ったんす。兄貴がそうだったんで」


 大白先輩ってお兄さんいるのか、知らなかった。

 先輩は実験系に進むわけだし、白衣は必要になりそうな感じはする。


「なるほどー。これを探すのが大変だったの?」


「菜子先輩にあうサイズがなかなか……」


「あーそっ! 必要になるかはまだよく知らないんだけど、なんか使うよ。ありがとう!」


 大白先輩はちょっと微妙そうな顔をして、「使う時が来たら使ってください」と返した。


「さてさて、トリを飾る紅ちゃんのは何かな?」


 先輩が包装を解き、開かれた箱から出てきたのは茶色のクマのぬいぐるみ。テディベアと言われてイメージするものそのものだった。


「クマー」


 先輩はそう言ってそのテディベアをぎゅっと抱きしめた。なんというか、ものすごく似合う。


「紅ちゃん、ありがとう!」


 反応からして、紅林さんのプレゼントが1番当たったようだ。


「友達から誕生日プレゼントもらうなんて初めて!! みんなありがとうー!!」


 さらっと悲しいことを言う先輩。僕だってそういうのはないけど。


「さて、みんな、時計を見よう」


 言われるがままに時計を見る。時間は14時過ぎ。


「お菓子はつまんでたけど、お昼ご飯食べてないよ! 何かある? ないなら買いに」


「ピザがあります」


「おー、パーティーっぽい!」


 このパーティー、まだ半分しか終わってないらしい。


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