19話 もはや不参加も同じ
『百瀬拓人: 今週の金曜から月金なら参加できそうだけど、勉強会ってどうなってる?』
『A.Saeki: じゃあ、金曜日からはじめよっか!』
『NAKO:
月曜 私、まゆ、あかり、響子、百瀬
火曜 響子、蒼井、紺野
水曜 あかり、響子
木曜 あかり
金曜 私、響子、百瀬
これで決定?』
『A.Saeki: 木曜日が私1人なのは変わらないんだね……』
『A.Saeki: 水木以外勉強できる勢いるし、いいと思う!』
『A.Saeki: あと、テスト1週間前からは生徒会主催の勉強会が始まるから、みんなでそっちに出てもらえるといいかな』
『NAKO: 生徒会主催ってちょっとお堅い感じするけど、私なんか行って大丈夫なの?』
『A.Saeki: 大丈夫だよ! うちの生徒なら誰でも歓迎! なんか、会長はレベル別みたいな感じにするつもりみたい』
『百瀬拓人: 1週間前からは生徒会の方にってのはOK。それまでは、またファストフードとかファミレス?』
『A.Saeki: でいっかなって思ってる。生徒会権限使えば部屋取れるかもだけど』
『NAKO: 職権濫用はダメでしょw』
『百瀬拓人: じゃあ、中間の時と同じ感じでいいね』
入浴してからスマホを確認するとこんなやりとりがLINEで行われていた。なんか、これで決まりみたいな感じになっているので異議を唱えにくい。まぁ、生徒会の勉強会に出る気はないので断るけど。
『蒼井陸斗: 生徒会主催の方への参加は遠慮しておきます』
『A.Saeki: 遠慮しないで来てよー。大丈夫。蒼井くんの嫌いな会長は主に2年生の方に付くはずだから』
『NAKO: 蒼井くん会長嫌いなの?』
『A.Saeki: なんか嫌いみたい。いい人なのに』
『NAKO: 会長って、演説で生徒会を変える宣言してた人だよね?』
『A.Saeki: そうそう。実際変えてる。もともと生徒会は勉強会を主催したりしてなかったみたいだし』
『NAKO: クリスマスも何かするんでしょ?』
『A.Saeki: うん。そっちは完全にレクリエーションって感じかな』
『NAKO: もう準備してるの?』
『A.Saeki: さすがにまだ企画内容を話し合ってる段階。他にもやることたくさんあるし』
『NAKO: 企画って、どんな案が出てるの?』
『A.Saeki: ゲームっぽいのとか、あと、ケーキを自分って作ってみるのとか』
脱線したまま戻る気配もなくトークが流れていく……。クリスマスの話とか個人LINEでやってくれよ。
『蒼井陸斗: 生徒会長のいるいないに関わらず、大人数の勉強会に参加する気はありません』
クリスマスの話で盛り上がるところに割り込んで宣言する。このグループの目的は試験対策だろ。
『A.Saeki: なんで? 蒼井くんってそんなに人見知り? 知らない人と一緒に勉強するのは無理ってタイプ?』
さて、その言い訳は今日の部の雑談でもらっている。
『蒼井陸斗: インフルエンザとか怖いので』
『NAKO: うわ、リアルに心配なやつ』
『A.Saeki: でも、まだ11月だよ? それに学校に来てる時点で今更感ない?』
『蒼井陸斗: ピークは1月2月ですけど、11月下旬くらいからもう出始めますから。妹が受験生なので、万が一にも罹るわけにはいかないんですよ。勉強会の規模がどうなるか知りませんが、不特定多数の人が集まる場には行きたくないです』
こういう時は、家族に受験生がいるって言い訳に使えるな。まぁ、少し無理のある言い訳な気がしないでもないけど。
『A.Saeki: それ、どうしても来てって頼みにくいなぁ。マスクするとかじゃダメ?』
『蒼井陸斗: ちょっと、それだけじゃ安心できないので』
『A.Saeki: 心配性なんだね』
実際にはあまり心配性ではない方なので、冬場でもマスクもせずに普通に出かけてしまう。今年は気をつけよう。
『A.Saeki: じゃあ、残念だけど蒼井くんは生徒会の方は不参加ね』
よし。そうなると、僕が参加する勉強会は来週の火曜日1回のみ。ほぼ参加していないのと同じ気がする。まぁ、それでも、ここ1週間は佐伯さんと結構頻繁に話したので、おそらく友情関係で出題されるであろう道徳の試験で作文を書く元になるネタは手に入った。あとは僕の国語力、作文力の問題だと思えばいい。
『御堂響子: 私、火曜日ちょっと無理になったかなぁ』
『A.Saeki: 逃げた』
『御堂響子: 違うし。塾のテスト対策講座が火曜になったの!』
『NAKO:
月曜 私、まゆ、あかり、響子、百瀬
火曜 蒼井、紺野
水曜 あかり、響子
木曜 あかり
金曜 私、響子、百瀬』
『NAKO: 噛み合ってないね』
火曜日、僕と紺野さんの2人。まぁ、勉強は捗りそうではあるし、僕としてはクラスメイトと関われば誰でもいいのだが、この勉強会の趣旨から見れば意味ないよなぁ……。もはや僕と紺野さんは不参加も同じじゃないか、これ。
『A.Saeki: でも、それぞれ予定はあるし、仕方ないかな。それか、土日もやるか』
『NAKO: 土日は空いてるよ。みんながやるって言うならやる』
『御堂響子: 土曜日は無理。日曜日は、みんながやるって言うなら』
みんながやるって言うならか。このグループは7人グループ。みんなってのは何人からを指すんだろうか。
『A.Saeki: 私は土日どっちもOK』
『百瀬拓人: 今週末はちょっと。来週の土日なら大丈夫』
『NAKO: あ、日曜日、映画行くんじゃ?』
『A.Saeki: そうだった!』
『御堂響子: 土日はやるにしても来週からかな』
『まゆ: 今確認したよ! 来週の日曜日なら大丈夫d( ̄  ̄)』
日曜か。どうしよう。主要教科の勉強には少し余裕を感じているし、道徳に時間を使ってもいい気はする。
ただ、ここで僕が参加できると言うことが望まれているのか? 百瀬くんが参加できるみたいだし、別に僕がいる必要もあるまい。行けないという答えが逆に望まれていると思わなくもない。
……スルーでいいや。返答を求められた時に答えよう。
そんな結論に至り、LINEを閉じようとすると、グループLINEではなく個人LINEの方に通知が来た。
『紺野: 火曜日、私たち2人だけみたいですけど、どうしますか?』
どうしますかと言われてもな……。
『蒼井陸斗: やるもやらないもどちらでもいいですよ。紺野さんはどちらがいいですか?』
『紺野: なら、勉強教えてもらいたいです』
『蒼井陸斗: わかりました』
紺野さんなら教えるというより共に考えるとなるので、僕としてもありがたい。同学年の中では、紅林さんに次いで勉強の話がしやすい相手だと思う。
僕はかなり気楽に紺野さんとの勉強会を承諾していた。