変化
伝言が数件返ってきていた。
私の場合、同じ相手と大体やり取りが二往復くらいで終了。
それでも十分な結果だ。たいてい相手は自分の携帯番号を入れてきて
直接かけてくるようにという。もちろんかけることはない。
そこで終わるというパターンだ。
忘れた頃にまたガラリとキャラを変えて、以前の伝言相手にメッセージを
送ることも出来る。
相手はいくらでもいる。
次から次へと渡り歩くのだ。
かずやにも、もちろんメッセージを送っていた。
サクラにはかなり過敏そうだったが・・・。
『返事有難う!!カズヤです!!えっとぉ〜・・・』
偽名を伝えてはいたけど、あえてカズヤは
『おねえさん』と私を呼んでいた。
年齢は23。大学を辞めて今はアルバイト生活を送ってるらしかった。
私は、『年上だけどかまわないの?』とか『どんな仕事なの?』
とか、ありふれた質問を返したのだが
かずやからは、今はカメラマンの助手をしていて市内のいろんな幼稚園に
行ってるとか、子供が大好きだとか返事が返ってきて
そこからまた私はかずやに質問した。
するとかずやはまた返事を返し・・・。
そんなことを繰り返しながら、知らぬ間にかずやとどんどん回数を重ねていた。
気がつけば毎日かずやは何かしらのメッセージをくれて私も
それに答えた。
かずやからのメッセージを心待ちにする自分がいた。
次第に日常の私の頭の中でかずやという人物を思い描くようになってしまった。
(まずいよ・・・。これは・・・。)
自分でもわかっていた。
そろそろかずやを切らなければ。
かずやと伝言するようになって、仕事としての他の伝言が
見事に手抜きになっていた。
仕事は仕事だ!!!
その夜から、かずやへの伝言を断った。
二日ほどすれば、かずやは私をやっぱりサクラとみなし
また次の相手を求めて伝言の旅に出るだろう。
皮肉、罵声あたり、返ってくるかも知れないな。覚悟のうえだ。慣れてる。
お仕事帳を開き、698 かずや の横に
もう関わらないこと。サクラと確信されているから。
と記入した。
そしてサクサクとたまっている伝言をこなした。