流れのままに
次の日の朝から私は電話の仕事を再開させた。
ほんとに余裕のない生活・・・。
新しい生活のためにも少しでも稼ぎたい。
稼げる自信はなかったけど、とにかくとっかかるしかない。
この仕事、サクラといえど、やっぱり緊張する。
ブランクが開くと尚更だった。
(こんな朝っぱらからいるかなぁ・・・。)
そんな思いで、ツーショットに入ったんだけど
いる!!いる!!いる!!
ガチャ切りの洗礼も受けながらも、
何とか何人かを繋ぎ合わせながら私は
何となく調子を取り戻し始めた。
(まあ、こんなもんか・・・)
電話をとりあえず切って再度かけ直してみる。
そうすると、今の稼動分が、金額になって聞けるのだ。
『今月の貴方のツーショット金額は・・・
325円です。』
(はぁ〜!?そんだけかよ・・・。)
気持ちは萎えまくりながらも、またツーショットに進入。
『おっ!!おつかれさん!!どぉ今日の調子は!?』
『まぁ、最低ってとこっすかね・・・。』
こういう客には、あえて否定しない。
『こんな時間でも客おるん?』
『おるよ。』
繋がったのはトラックの運転手。
トラックターミナルで待機中らしかった。
決して話しやすい人ではなかったから
私も大して面白い話題も提供出来ず、
いつ切られるかと思いながら相手してたんだけど
一向に切られることもなくズルズルと話続けた。
そうしてたら、プチって突然切れてしまった。
イタタタ!!耳痛い。
時計を見たら、とっくにお昼過ぎ。
慌ててかけ直してみた。
325円が5750円に跳ね上がってた。
(有難うございます!!!ほんとに感謝。)
ちょうど、そこへ、かずやが帰ってきた。
帰ってくるなり、かずやは
『あや、この土曜日の夜に引っ越すけんな。
今日、社長にも奥さんにもそう言うといたけん。』
『はっ!?
でも、なんか書類とかあったでしょ?
保証人いるみたいなことも言うとったし・・・。』
『あ、それなんけどな。
うちの親が保証人なってくれるらしいけん。
俺、今日、親に電話したんよ。
絶対、親には、社長か奥さんが連絡入れる。
どっちみち俺らのこと、すぐ知れるし・・・。』
『でっ、でもスンナリかずやの親は、ええって言うたわけ?!』
『なんかゴチャゴチャ言うたよ(笑)
やけど、今、住んどるとこは追い出されるわけやけん、
とにかく保証人にはなってくれ・・・って頼んだけどな。
まっ、結局親父がええよって。
あやのことはな、そのうち結婚するけんって言うといたわ。』
『なんか・・・そんなことでええわけなん?!』
『えんちゃうで!!
それで土曜の夜、樋口が手伝ってくれるらしんよ。
あや・・・なんやったらもう、仕事行き始めてもかんまんよ!!
後のことは俺に任せときゃえ〜し。』
『・・・・・・。』
私の知らない合間に、かずやは着々と進めていってしまう。
何だか状況に流されるままって感じの自分の立場が嫌だった。
保証人の件は、実際どうしようかと悩んでいた。
コレだけは母に頼んでも多分駄目だろうと思った。
結局、父に頼まなきゃいけないんだろうと・・・。
だけど、取り合ってくれるかどうかさえわからなかったし。
結局そのまま、かずやの親が保証人となり、私達は新居へと引越したのだけど
そのことも、後にかずやにとっては大きな痛手の一つになってしまった。
もうこの時点から、私達の歯車は狂い始めてたのだろう。
かずやに後押しされたこともあって、
その日のうちに会社のほうに連絡を入れた私は、
次の日から仕事に行くことになった。
そうなると、仕事のことしか考えられなくなって
結局私は、流されてしまったのだった。