表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/42

手のひらの幸運 1

次の朝も、母に電話をかける為、早く起きたのだけど

何となく体がだるく、目覚めもスッキリしない感じだった。

下腹あたりに鈍い痛みを感じて、トイレに立った。

来るべきものが来たことを確認した私は、さっきまでの

体の不快症状なんてたちまち吹っ飛んでしまった。

『よかったぁ〜!!!』

思わず声に出して言った。

さほど気にかけて心配はしてないはずだったのに・・・

ほんとのほんとに心底安心してる自分がそこにはいた。

部屋に戻ったら、突然かずやがムクッて起きて私を見たから

ドキッ!!とした。

だけど、またそのままバタリと寝てしまった。

『かずや・・・ちょっといるものあるからコンビニ行くね。

すぐ帰ってくるから・・・ね?。』

かずやをゆすると

『・・・・・わかった・・・・。』

かずやは眠そうにそういうと寝返りして

『帰ってきたら起こして・・・。』

っていった。

かずやのいるところで母に電話をかけたくなかった。

昨日も・・・そして今日もだった。

昨日の私は、母と話すため気兼ねなく話せる環境が

欲しかった。

今日ももちろん、そうであることに変わりは無かったけど

それ以上に、母が用立ててくれるお金のことを

かずやに知られることが嫌だったんだ。

明らかにこの時、私の中で

かずやとかずやを取り巻いてるこの環境から

逃げ去ることが出来る大きなチャンスだと思い始めていたから。

母に電話をかけ、私名義の銀行の口座番号を伝えた。

『それじゃあ、午前中にはここへ入れとくわなぁ・・・。

お昼にでも、ちゃんと入ったかどうか見とくようになぁ。

まあ、アンタの納得のいく金額かわからんけどぉ・・・。

お母ちゃんもお父ちゃんに言わんとすることじゃけえ、

この程度しか出来んけ(笑)・・・。』

『ううん、ほんとにお母ちゃんありがとう!!ごめんな・・・

ほんとにごめん・・・。』

『そがあなこと、別にええ・・・。』

『今日な、私、お昼過ぎから面接なんよ。

どうなるかかわからんけどぉ、とにかく行ってみるわ・・・。』

『そりゃぁ頑張らんとなあ!!

ええ事になるように、母ちゃん

ホトケさん拝んどくわなぁ(笑)』

『うん!!たのむな(笑)』

『そりゃそうと・・・。

アンタと連絡取れりゃあええんじゃけえど・・・。

考えてみりゃあ、おばあちゃんも、ここんとこだいぶ弱ってきたし。

ほんとに、いつ、なにがあるかもわからんじゃろう。

いざって時に連絡が取れんのはちょっとなあ・・・。』

それで、母に家の電話番号を伝えた。

安心してくれたみたいだったから嬉しかった。

『こっちからは、めったなことが起こらん限りは

かけんけえ・・・。普段はアンタからかけてくるようになぁ。』

そうして、母との電話を切った。

コンビニで適当にいろいろ買って、急いで家に帰ると

かずやを起こした。

かずやを送り出してから、洗濯と掃除をした。

それが終わる頃には、もう時計は11時を指していた。

お化粧してスーツに着替えると、やっと実感が沸いてきた感じ・・・。

でも正直やっぱ窮屈。

こうして部屋に座り込んでても

スーツにシワが寄っちゃうだけだ。

ATMに行く予定もあるし、早めに出かけることにした。

庭には大家さんが出ていた。

私に気づくなり

『こりゃあまあ・・・びっくりじゃ!!

誰がおるんかと思うたわ・・・。

お姉ちゃん、仕事行くん?!』

『いいえ。今日面接なんです(笑)』

『そうかそうか!!』

大家さんは門扉を開けながら

『お姉ちゃんなら大丈夫じゃ!!

頑張って行っておいでぇよ!!』

そういって送り出してくれた。

ちょっと早いかなとも思ったけど

ATMに行き、通帳を入れた。

戻ってきた通帳には

30万が入っていた。

でも、その横に記されていたのは

母の名前ではなかった。

   片山 徹

弟の名前だった。

母がATMの操作が苦手なことはよく知っていた。

だから、弟に頼んでくれたのだろうとあっさり納得ができた。

そして、私は素直に

母と弟に

ありがとう・・・

そう心から思ったのだった。







































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ