つかの間の二人
家の前でイライラしながら待つかずや・・・びっくりしたのは・・・・
隣に、大家さんまで立っていたことだ。
それを見て一瞬
(どうしようか!?)
とうろたえた私だったけど、この泣きっ面で
下手なウソをついても意味がないと思った。
私を見つけて、駆け寄ってきたかずやは
『あや!!こんな朝っぱらからどこいっとったんな!!
マジ心配やったんぞ!!』
って私を叱った。
『ごめん・・・。ほんまに早くに目が覚めて・・・。
この時間なら、お母ちゃんと話が出来ると思うて
家に電話しに出とったんよ・・・。』
『ほんなん、部屋からせーだぁ!!
なんでわざわざ出とんな!?』
『かずやグッスリだったし・・・
起こすんも悪いと思うて・・・。
ごめん・・・。
ほんとにごめんなさい。』
はぁ〜っと、かずやはため息をついて
『まあ、ええわ。
とにかく仕事いってくる。
大家さんも心配しとったんやけんな・・・。』
『ごめん。謝っとくわ・・・。』
かずやは急いで自転車にまたがると
大家さんに
『いってきます!!』
といって出かけていった。
大家さんは私を見てニッコリ笑いながら
『お兄ちゃん、かなり心配しょうたわ。』
って言った。
『すみません。
大家さんにまでご心配かけたみたいで・・・。』
『私は全然かまやせんよ。気にせられんと。
それより、ここのこと悪かったなあと思うてな・・・。
私も知らんかって、つい奥さんに話したばっかりになあ。
お姉ちゃん、ゴメンよぉ・・・・。。』
『あの・・・その件はほんとに私のほうこそ、すみませんでした!!
大家さんが私を、ここに住めるように頼んで下さったこと、
奥さんから聞きました。
ほんとに申し訳なくて・・・。
感謝してます!!』
『感謝やこうえんよ・・・。
ただ・・・お姉ちゃんどうするんかと思うてなぁ・・・。
それが私は心配じゃ・・・。』
『大丈夫です!!何とかなりそうですから(笑)』
『そんなら・・・えんじゃけど・・・・・。
お姉ちゃん、がんばってぇよ!!』
大家さんはそう言うと、家に入っていった。
母と話せたことで、私は俄然、元気になれたような気がした。
急にやる気も沸いてきて、目をつけていた求人先に電話してみようかと
いう気になった。
再び求人誌を沢山買い込んで来て、悠長に選り好みしてるような
場合では無いような気もしていたし。
で、早速電話をかけてみた。
出てきたのは女性だった。
訪ねてみると
『実は明日面接を行う予定でいるのですが、
ご都合いかがでしょうか?』
と聞かれた。
『大丈夫です!!』
即答した。
『それでは明日の13時に履歴書をお持ちいただいて
こちらの店舗までお越しください。場所わかりますかね?
○○デパートの裏側の通りになるのですが・・・。』
『はい!!多分大丈夫だと・・・。』
『もし、わからないようでしたら遠慮なくお電話ください。
それでは明日お待ちしております。』
『よろしくお願いいたします。』
電話を切ってホッとしたと同時にラッキー!!!。
明日!!面接だぁ!!
早速別の部屋に行き
かけてある服の中から
かっちり目のスーツを出して
インナーに合わせるシャツを物色し始めた。
自分なりにコーディネートを完成させると
次は履歴書の作成をした。
履歴書を書きながら、
もぉかなりのブランクが生じてしまった自分の職歴に愕然・・・。
採用なんて・・・。
望みは無い気がした。
だけど、
(挑戦することに意味がある!!!)
ばかばかしい〜(笑)
そう思いながらも、私は再び奮起したのだった。
その日の夕方、部屋の電話が鳴った。
毎度毎度どっきりしてしまう。
恐る恐る受話器を取り、
『・・・もしもし?』
『・・・あや!!俺ぇ(笑)
びびったやろ!?』
かずやだった。
話振りからして悪いことではなさそうだ。
『べっつにぃ(笑)どしたん?かずや・・・』
『あんな、今日奥さんが仕事終わったら買い物行こうってゆんよ。
俺に靴な、こうてくれるらしんよ。なんか見かねたらしゅうてさ・・・。』
『・・・。
その気持ちわかる(笑)。やばいもん!!!』
『やっぱ・・・(笑)。ほんで、ちょっと遅いかもわからんけん。』
『わかったぁ。』
帰ってきたかずやは、真新しいスニーカーだけがやたら目立っていた。
自分でもシックリ来ないのか、恥ずかしそうにしてるかずやを見ると
思わず噴出してしまった。
『なんか、足元、かずやじゃないんですけど・・・(笑)』
『だろ!!だろ!!俺もそう思うわ(笑)。』
その後、食事しながら明日の面接のことも話した。
なんだかまた私達に楽しい時間が戻ってきたかのようだった。
だけど、それはほんのつかの間のことで・・・・・。