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パンドラの箱

 どのくらいそうしてたかはわかんない。

私はフラフラと立ち上がると、フスマを開けた。

急いで乱雑に入れ込んだ布団は崩れて、部屋を占領していた。

それを見た途端、思わずまた、へたり込んでしまった。

私の頭のどこかにはまだ、わずかに、何とか頑張んなきゃ・・・という気力が

あるような気はしたけど、無気力になってしまった体は思う通りには動かなかった。

昨日、大家さんが私達を待ってた訳も

今日社長の奥さんが突然、訪ねて来た訳も

よくわかった。

だけど、かずや・・・なんで?・・・・・。

なんで言ってくんなかったの?・・・・。

こうなると無性にかずやに腹立ってきた!!

私は、敷布団の端っこを握りしめると思いっきり、力任せに引き抜いた。

同じように掛け布団も、・・・・。

どうでもいい!!散々散らかっちまえばいいし・・・。

何かはわかんないけど下敷きになってるものは見事に混ぜ返されてる気がした。

やっちまって少しはスッキリした気になったものの、さほど時間もたたないうちに

どうにも落ち着かなくなってきた。

結局また元の部屋に、敷布団を引き込んでたたみ始めた私。

あ〜ぁ・・・何やってんだか・・・。

敷布団、掛け布団とたたんで、最後の毛布を手に取ったその拍子に

ガサッと下で何かがバラけた。

大き目の白い菓子箱のフタが私の足元にはあった。

そして、向こうの箱からは、可愛い封筒が何通が溢れだしていた。

箱の前に座り、封筒を取った。

そしてそこからたちまち、私の頭と体が再び活発な稼動を始めた。



岡山市津島・・・○○マンション・・・

   沢本かずや様


今とは違う住所・・・大学生の時の?

裏を見た。


津山市・・・町

清水真由美


津山市!?



コレって・・・。アレだよね・・・絶対!!

次の時点では私、何の戸惑いもなく

中身取り出してた。

もちろん、手紙を。


 『かずや☆今日はありがと。

会ったばかりなのに、もうかずやに会いたいよ・・・。

早く来週の日曜日こないかなぁ!!。

あのね、かずや!!

私のカバンにつけてたパンダのマスコットあるでしょ!?

あれをね、かずやにも作ってあげたいなって思ってるの・・・。

それでね、ほかにタヌキとイヌもあるんだけど

どれがいい??

一緒に写真入れとくから選んで!!!

返事教えてね。』


一通目はそんな感じで・・・。

なんだかぬるい顔したマスコットが三体並んだ写真が同封されてて

思わず苦笑。

続いて二通目。


 『かずや・・・中間試験はどうやら散々みたいで〜す。

かずやのことばっか考えてたせいか、ほとんど勉強なんかしてないわけで。

なぁ〜んて言ったらかずやに怒られちゃうかも。

あのね、かずや・・・一つ聞きたいことがあるの。

聞きたいとゆ〜か私自身がすごい気になってることで・・・

あのね・・・夜、かずやに電話しても全然出てくれないよね・・・。

お仕事が忙しいのかなとは思うんだけど。

時間変えても全くかずやと話せないから

ちょっとさびしいなぁ。』


(中間試験!?高校生!?)

続いて三通目。

その手紙からなんだか雲行きは異様に怪しくなりはじめた。


 『かずや!今日かずやと電話で話して、電話を切ってから

私はメチャクチャ腹が立ってきました。

かずや!!私が卒業して、かずやと一緒に暮らせるようになったら

絶対!!私がそのかずやのツレだった人を探し出してあげる。

かずやをだましてお金を持ち逃げしたその人のこと私は絶対に

許さないから。

かずやはもういいなんてゆったけど、そんなの絶対ダメだよ。

だから私が絶対に見つけてみせるから。

それで、お金も絶対取り戻してあげるからね。』


(お金!?持ち逃げ!?

一体・・・何!?)

もっと詳しく知りたかったのだけど、

続きの内容のものは出てこなかった。

その代わり、この二人の結末が残りの手紙には書かれてた。


 『今日、私のお父さん宛に藤川美佐さんて言う女の人から

手紙が送られてきました。中には写真が何枚か入っていました。その写真を見た

親はどちらもすごいショックを受けています。

かずや、私はショックで悲しくてボロボロだよ・・・。

泣きながら今書いてて、字もうまく書けない。

かずやにずっとだまされてたんだね!!私は。

最近は夜も電話に出てくれてて、

『今、ベッドに入ってかけてるよ』なんて

かずやは笑いながら言ってたけど、そのベッドは

美佐さんの部屋のベッドだったんだね。

かずや!!私のことだまして楽しかった?

私はほんとにかずやのこと大好きだったのに・・・。

今日の今日までほんとに何も知らなかった私が

メチャ馬鹿に思える。

かずやを好きだった自分が情けないよ。

二度と顔も見たくない。

さよなら。

       真由美   』


字がところどころ滲んでた。

涙の跡なんだろう・・・沢山付いてた。

客観的にみても、有りがちっちゃ有りがちな

パターンだよね。

二股かけられてたなんてのは。

ただ藤川美佐がこの子の父親宛に

手紙を送ってるのが不気味。

しかも写真つき!?

そして最後の一通。


 『お願いです。

もう美佐さんに家に電話してこないように

言ってください。

もう私はあなた達とは関係ないですし

本当に迷惑してます。

これ以上かかわられたら親が

警察に相談するといってます。』


 (散々だね・・・。)


その最後の手紙の下から、例のパンダのマスコットと

ポケットアルバムが二冊出てきた。

ポンポンで出来たパンダは可哀相に、押しつぶされて

変形しながらもぬるい愛嬌を変わらず振りまいていた。

次にアルバムの一冊目を開いてみたものの何も入ってなかった。

そして二冊目を開いてみたら・・・4枚だけ写真が入っていた。

川原の大きな岩の上で、かずやと制服姿の真由美ちゃんらしき

子が二人で写ってる写真だった。

かずやは今より少し太っててなんか印象が違う。

真由美ちゃんは目が細くて細身の子。

4枚とも全く笑ってなくて、場所が場所だからか

なんかいまいち殺風景な写真だった。

この写真送りつけたのかなぁ。

コレだと、さほどショックはないはずだろうけど。

次に白い便箋らしきものがきちんと二つに折りたたまれて

少し大きめの茶封筒と一緒に並べて入れてあった。

箱の中はもうそれだけみたいだった。

何気なく茶封筒の差出人を見た私は思わず凍りついた。























   








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