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かずやに潜むもの

 結局かずやが食べたいのは野菜炒めだった。

二人で近くのスーパーに出かけた。

帰ってきたらトイレの真横で

早速食事に取り掛かった。

かずやは随分使ってない小さい炊飯器を

出してきた。

『イケルかなぁ・・・。』

『駄目ならご飯だけまた買いに行くしかないね。』

せまいし、一人で大丈夫だから待ってて。

っていうのに、かずやはピッタリ私の横にくっついて見学してる。

小さな流し台の上で、まな板は半分しか載ってないシーソー状態。

それでも何とか、かずやと二人で材料を切って用意した。

その後、炒めるのは下で。

床に直置きされた一口コンロ。

二人、今度はしゃがみこんで順番にかき混ぜたりしながら・・・。

無事完成!!

炊飯器開けるのはドキドキだったけど、

難無く無事炊けてた。

テーブルには野菜炒めとご飯だけ。

それだけのものに、感動しまくるかずや。

ガッツガツ食べる姿に確かに嬉しい気持ちはあったんだけど・・・。

私の心はなんだか沈んだ。

食事が終わって片付けるときも、かずやは一緒にいてくれた。

片付けてる途中でかずやが

『明日は何時?』

って聞いてきた。

『お昼くらいの電車でいくつもり。』

『え〜!?明日は、俺が車で送ってくよ。』

『・・・。それは無理。だって明日向こうのお母さんと話ししなきゃいけないし。』

『それなら待っとくけん、かんまん。』

『待っとくっていったって。時間なんて全くわかんないから。』

『イケルよ!ぜんぜんっ。』

『明日の話の内容にもよるけど、かずやを待たせてると思うと、

気になっちゃうしさ。明日はとにかく一人で行くから。』

『・・・なぁ、あやぁ、明日・・・俺んとこまた帰ってくるんよな?』

『かずやぁ・・・そんなん心配してんの?・・・。』

『・・・。なぁ、帰ってくるんだろ?・・・』

『電話ちゃんとするからぁ・・・。待ってて。』

その時の私は帰る、帰らないなんてことは全くカヤの外のことで。

明日の姑との話のことしか頭の中にはなくて。

別に深い意味合いもなく、かずやに受け答えしてたんだけど・・・。

『明日は絶対っ、俺も一緒にいくけん!!』

『・・・・・。』

『な、あや!!わかった?』

『・・・・・。』

洗い上げする私の手は止まった。

そして思わず、かずやをキッと見据えて

『ほんとにだめだってぇ!!マジで!!』

『・・・・・・。』

突然、かずやが私の手を乱暴に握った。

そしてすごい力で私を部屋のほうに引っ張って歩き出した・・・。

『いっ!!痛いっ!!かずやぁ!!』

握られた手を引っこ抜こうとしたら、さらに強く握り返された。

私はほとんど引きずられるような感じで部屋に連れてかれた。

そして突然仰向けに押し倒された。

畳の上だったけど、ガツン!!と頭に鈍い衝撃がきた。

かずやは馬乗りになって私の肩を押さえ込んでいた。

私を見下ろすかずやの顔は怒ってるんじゃなくて

ボー然としてるように見えた。

『かずや・・・。どしたん・・・。』

私の声は震えた。

かずやの返事はない。

押さえつけてるかずやの腕を私はそっと両手でつかんでみた。

その瞬間私の目からは涙がこぼれて、思わず声を上げて泣き出してしまった。

スッ〜と、私の体は自由になり、

『あや!!・・・あや!!ごめんな。』

ってかずやは私を必死に抱きしめてる。

泣き止もうとしたけど出来なかった。

抑えようとしても抑えきれないものがどんどん込み上げてきて

自分でも訳がわかんなくなるくらい私は泣いた。

途中でかずやを振り払い、背を向けて泣いたから

その間かずやがどうしてたのか知らない。

ようやく気分が落ち着いて、体を起こしたら

ひどい鼻づまり・・・ズキズキ頭が痛い。

ヒクヒクとしゃくりあげながら

ボー然と座ってる私の隣に

かずやは静かに座った。

『・・・お風呂いきたい・・・。』

『ぃ、いくか・・・。』

ヨロヨロと私は立ち上がり準備した。

その間も、行く間も、私達に会話はなかった。

ただかずやは黙って心配そうにに寄り添ってた。

随分長いこと入ってたかなぁ・・・。

銭湯を出たら、かずやの姿はなかった。

(多分待ちきれなくて帰ったんだ。)

一人で帰るの・・・それはそれで気が重い。

部屋のドアを開けるとかずやは

『おかえりぃ』

って言った。

部屋中にキツイくらいに甘い匂いが漂ってた。

『何!?この匂い?。』

『これ・・・さっきコンビニにあったんよ。

アロマキャンドルやって。』

『へぇ〜綺麗・・・。』

『だろぉ。アヤが喜ぶかなぁと思うたけんさ。』

『・・・。ありがと。』

かずやは私を抱き寄せてキスした。


『あや・・・中にしていい?・・・。』

『ん〜・・・。・・・・が、ま、ん・・・。』

かずやの息使いがどんどんあらくなって、スッと私に覆いかぶさってきた。

『かずや・・・もしかして・・・イッた?』

『イッたぁ〜。』

『・・・どこに?』

『・・・なかぁ。あやの阿波弁って興奮する!!』

『阿波弁???』

『かんまんっていうただろ?』

『がまんって言ったのに!!』

『えっ!?マジ!?』

急いで計算してみた。

多分大丈夫・・・。

『なぁ、あや出来たかなぁ?』

めちゃワクワクした様子でかずやは聞いてきた。

『さぁ、どぉだろ(笑)・・・。』

かずやは私のおなかに手を当てて

『期待してますっ!!』

って言った。

『・・・。ばっかじゃない(笑)もぉマジ私寝る!!!』

『なぁ、あや・・・明日やっぱだめ?』

『・・・。好きにしたらぁ。』

『やったっ!!』


なんかいろいろ有りすぎて・・・。

疲れてた。ほんとに・・・。

そんな私だったから

かずやに潜んでるものが見え隠れし始めたことに

気づくはずもなかったんだ。








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