表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/42

箱の中へ

 県住横の道に入り、かずやは当たり前のように私の家が見える位置に車を停めた。

見上げると、リビングの明かりはついていた。

(まさか、いないよね。)

なんともいえない緊張感みたいなもので気分が悪い。

車を降りて少し立ち止まった。

もうそれぞれの玄関先には灯りがついて、暗くなった外に人の姿はなかった。

歩き出した私の横をかずやと樋口くんが歩く。

『へぇ。ここ県住・・・』

樋口くんはキョロキョロしながら周りを見てた。

『ここなんだけど。ちょっと待ってて!!』

石の階段のとこで二人に言って私は階段を駆け上がった。

ドキドキしながらドアノブをひねるとドアはスッと開いた。

とろあえずホッとして玄関に入る。

階段の明かりをつけて上にまた駆け上がる。

懐かしい!!私の家!!そしてこの匂い!!

それほど散らかった様子はなかった。

ベランダから担ぎこまれた洗濯物干しにはシワシワのタオルが

数枚だらしなくぶら下がってる。

ローテーブルの上にはコップやスナック菓子や空き缶が転がってて、

今すぐかき集めて片付けてしまいたかった。

ハッと我に返ると

階段を駆け降り玄関を開け放した。

『いいよ。』

私はすぐさま階段を駆け上がった。

樋口くんが玄関で

『おっ、お邪魔します!!』

『はぁい!!ど〜ぞ!!』

・・・変な光景。

かずやが上がってきて

『先にデカイ物からいこう。』

って言った。

『俺はとりあえずコレ持ってきたい!』

(ファ、ファンヒーター!?)

『とりあえず、こっちの部屋と二つあるけどぉ・・・』

ためらう私に構わず

『じゃ、コレ一つは持ってこ!!』

手をかけたかずやに樋口くんが

『俺もってこか?中抜かなヤバイかな・・・』

二人で早速運び出し始めた。

(えんかなぁ・・・?)

ためらいの気持ちはあったけどボヤボヤもしてらんなくて。

私は押入れを開けて、衣装ケースを取り出した。

その後タンスにかけてあるもの、引き出しにあるすべての自分の服を取り出した。

そして引き出しの中の5万・・・。

年に一回は家族でお泊りで出かけるために少しづつタンス預金してるお金。

旦那はこのお金のこと知らない。

お財布の中にその5万を入れて、忘れないうちに旦那名義のカードを

ローテーブルの上に取り出して置いた。

さて・・・次は!?

『なぁ、あや!!この電話って使えんの?』

『電話??』

『ここにあるやつ・・・。』

開け放した押入れをかずやが指差してる。

『ぁ〜それねぇ。ん〜たぶん使えるかなぁ・・・。』

私は夢中でドレッサーから化粧品をかき集めながら答えた。

だから、かずやが衣装ケースの上にその電話をのせて運び出したのは見てなかったわけで。

いつか捨てようと思ってそのまま忘れてたボロ電話。

それがいずれ私の生活を支えてくれることになるなんて。

旦那に、こんなもんまでもっていきやがった!!って

思われるのが嫌だったけど、もう限界!寝袋生活には耐えれなかった。

来客用の布団と枕を持ってくことにした。

布団を取り出すと押入れからすっきり物がなくなった。

樋口くんが立てかけてある掃除機を指して

『これも?』

『・・・お願い!』

結局アレもコレも持ち出してる私だった。

約束の一時間が迫っていた。

かずやと樋口くんが手際よく運んでくれて

もう運び出してもらうものはなさそう。

リビングに飾っていた写真立てをバックの中に入れた。

旦那のお気に入りの洋楽CDがズラリと並ぶラックの片隅に

数枚私のCDがある。

全部イエローモンキー。

つかんでバックの中へ。

『そろそろ出る?』

かずやが言った。

『うん。先に出てて。旦那に電話して行くから。』

かずやと樋口くんが出て行き、電話に手をかけた私は

そうだ!キヨちゃん・・・と思い、急いで寝室の窓から駐車場を見た。

(旦那さん帰ってるなぁ)

だけど黙っては行けない。

急いでキヨちゃんとこに電話した。

電話に出てきたのは旦那さんだった。

『あ、あの・・神野です。こんばんは。』

『あっ、こっ、こんばんは。』

旦那さんも私もぎこちない挨拶で・・・。

『奥さん、いらっしゃいますか?』

『あのぉ、うちのぉ、今日は実家のほうに行ってていないんだけど・・・。』

『そっ、そうなんですか・・・。すみません。それじゃぁ・・・。

あの・・・えっと・・・いろいろご迷惑かけてすみませんでした。

それじゃまた・・・』

すかさず、旦那さんが

『あの!!』

って言った。

『はい!?』

『ぃ、いや、何でも・・・俺が口出すことではなかったな・・・ごめん。』

『いぇ。言ってもらってかまわないんで。』

『いや・・・いやぁ、やっぱりやめとく。・・・それじゃ。』

そういって電話は切れた。

(・・・・・・。)

旦那の携帯にかける。

『終わった?』

『うん。』

『あのさ、結構・・・持ってく。』

『ワシは別に構わん。カードは?』

『テーブルに置いてる。』

『そうか。おめぇ、あさっての日曜にワシの家に行くように。』

『はぁ!?・・・。』

『オカンがおめぇと話してぇらしい。絶対いけよ!!わかったか?』

『アンタは!?』

『ワシ?いかんよ・・・。』

『・・・・・。』

『とにかくそういうことじゃ。電話してみりゃえーがな。』

『えーがなって・・・・。ちょっと!マジ私・・・』

『そういうことじゃ!!ワシ戻るけん、出るように!!』

『ぁ!ちょっと待っ・・・。』

電話が切れてボー然。

そのまま階段を下りて・・・ドアを開けて外に出た。

そしたら隣の家のドアが開け放されてて・・・。

隣の中学生の子が塾に行くらしく、下でお母さんが出てくるのを待ってるらしかった。

さりげなく

『こんばんは。』

って挨拶して足早に通り過ぎる。

そして車に乗り込んだ。

『よっしゃぁ、行くかぁ!』

かずやは、ご機嫌で車を走らせてる。

私・・・最悪な気分で窓の外を眺めてた。

『あや?どしたん?疲れた?』

『ううん・・・。』

『樋口な、先に行って荷物を下ろしてくれよぉ〜るけん。』

『えっ!!そうなん!!』

全く気づかずにいた。

『荷物下ろしたら樋口んとこ行こう!!風呂も入らしてくれるってよ。』

『え!?ウソでしょぉ〜!!迷惑だってえ!!』

『アイツが来いってゆうたんやもん。え〜でぇ〜。』

『でもぉ・・・。』

家の前の空き地に着くと、樋口くんの車の後ろのドアは開いてて

既にもうほとんど荷物ない・・・驚いた!!

かずやの車の荷物もさっさと運ばれてく。

私は残された小さなものを持って入るだけ。

大家さんが窓を開けて、びっくりした様子で見守ってる。

荷物を全部入れ終わった。

部屋の中はびっくりするほど物であふれかえっていた。

『すっ!すげぇ!!』

唖然とする私達三人だったけど、車を早く移動させなきゃいけなかったから

部屋はそのままで、バタバタと下に降りた。

『樋口くん!お邪魔してほんとにい〜の?』

『いーよ!い〜よ!全然っかまわないから。』

そういって樋口くんは車に乗ると先に行ってしまった。

『ねえ、なんか買っていこ!樋口くんにもお礼したいし。』

『そぉすっかぁ!!』

私とかずやはビールとか食べ物とか沢山買い込んで

樋口くんとこに向かった。
























             























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ