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ホームシック

 私はとりあえず買い物したいとかずやに言った。

歯ブラシや化粧品、下着・・・と思いつくまま買い揃えていく。

かずやは興味深そうに私の隣にピッタリ寄り添ってメチャ嬉しそうに

着いてくる。

最初は私もそんなかずやと、あれやこれや楽しくはしゃいでたものの

そのうち、いろんなものを買えば買うだけドンドン気持ちは不安になっていった。

(あれも無い!!これも無い!!無い!!無い!!無いっ!!)

そのうえ、かずやが

『あや!!帰ったら風呂いこうな。』

と言った。

『お風呂!?』

『うん!!近くの銭湯。ちょっと歩くけどな。』

『せ!?銭湯!?・・・・・・。』

浴室・・・なかったっけ・・・今あらためて気づいた・・・。

なので・・・銭湯グッズも買った。

最後に大家さんにご挨拶用で、お菓子も。

どれもこれも安物ばっかりで特に化粧品なんてチープすぎて

ちゃんと使えるのかも不安だった。

でも無いよりまし。

悲しいことに、安くても数買えば結構な額で・・・。

私のお財布はドンドンさびしくなっていった。

ファミレスで食事して、そこのトイレでメイクしたり

簡単に身支度した。

その後二人揃って初めて大家さんに挨拶をした。

大家さんは、ぽっちゃりした元気のいいおばちゃんて感じの人

で、私を見るなり

『へぇ〜!!まさかお兄ちゃんにこんな彼女がいたとはねぇ〜。』

って笑った。

『昼間は私もいろいろ用があって出とることが多いし、一向に姿も見かけんから

ほんとに彼女が来とるんじゃろうかって思うとったんよ。』

『すみません。突然こんなことになって・・・。よろしくお願いします。』

大家さんに無事挨拶できてホッとした。

そしてかずやと初めての銭湯に行ったんだけど、いがいと遠くてかなり歩かされた。

タイムスリップしたみたいなマジ古い銭湯。

それだけでもかなり引いてしまい、立ちどまった私に

『先出たら待っとくから、ゆっくり入ってえ〜よ。じゃな。』

かずやはサッサッと入ってった。

番台ってとこに、おじちゃんが座ってた時点でドン引き状態の私。

誰か入ってる様子だったけど脱衣所には私だけで・・・。

でも入らないわけにも行かなくて、泣きたい気分で脱いで

引き戸を開けた途端ガヤガヤにぎやかな話し声が飛び込んできた。

入ったら、突然話し声がピタリ!!と止んで一斉におばちゃん達が私を見てた。

慌ててそそくさと座ってシャワーを出すと、おばちゃん達も会話再開。

終始・・・逃げ出したい気分だった。

外に出たら、首にタオルをかけて、かずやが待っててくれてた。

歩き出して

(これって南こうせつの歌と一緒の状況・・・)

頭にメロディーが流れ出したと同時、私の気分はすごく沈んだ。

部屋について、またしばらくボー然とする私。

握り締めたタオルが冷たい。

私ははっとして

『かずや!洗濯はどうしてんの!?』

『洗濯機あるよ。下りて横にあったろ?あれ、俺のだから。』

私は心底ほっとした。

明日は洗濯しよう!!

かずやが私を抱き寄せた。

明日かずやはまた出かけていくけど私はいったいどうすればいんだろう。

かずやに抱かれてる私の頭の中は不安でいっぱいだった。

子供たちの顔が浮かんだ。自然と涙がこぼれた。

かずやはそんな私に気づいて、一瞬止まり、私を見つめた。

けど・・・ただ抱きしめるだけで何も言わなかった。

かずやの腕の中で全く眠れないでいた私は

完全にホームシックにかかっていたんだ。





















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