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迷い道への扉

 フラフラと団地横を歩いた。

道路脇に設置された時計は0時45分を指していた。

頭の中は真っ白なまま、シーンと静まり返った住宅通りを

歩く。

そこを抜けると慈恵病院の玄関。

暗い建物をバックに電話BOXだけが煌々と光っている。

吸い寄せられるように中に入り、おもむろに小銭を探した。

かずやに電話する私の手は震えていた。

『もしもし・・・』

『あや!!大丈夫か?!急に電話切ったからヤバイんだろうって・・・』

『今、外・・・私追い出されちゃって。』

『え?!ほんまに?!・・・今どこ?!』

『慈恵病院の電話BOX・・・』

『そこにおって!!すぐ迎えに行く!!わかった?!あや!!!』

『・・・わかった・・・』

20分以上そのままそこにうずくまってた。

1、2台、車が通ったような気がする。

ガシャッってドアが開いて

『あや!!!!』

抱きしめられた途端、涙がウワァ〜って出てきた。

『行こう・・・あや。』

かずやに抱え込まれるようなかんじで

車に乗った。

走り出した車の中、私達に会話は無かった。

私はただボー然と外を見ていた。

たくさんのネオンが、ぼやぼやぁと揺らめきながら

次から次へと変わっていく。

涙が線になり静かに流れ続けた。

車は脇がコンクリート塀になってる細い路地に

入った。

『あや・・・着いたよ。ここから俺のとこ歩いてかなアカンけど

いけるか?』

『・・・うん。大丈夫・・・。』

車からへなへなと降りる私を申し訳なさそうに見ながら

『ごめん。あや。俺チャリ持って帰らな。まじ歩けそうか?』

『大丈夫だょ。』

かずやは自転車を押して私の横に並んで歩き出した。

歩き出してしばらくすると私の体はガクガク震えだした。

抑えるように思わず腕組みして歩く私を、かずやは心配そうに見た。

確かに外は寒い。だけどこの震えはただそれだけのことではない気がした。

かずやがそんな空気を打ち破ろうとするかのように

『コイツ二代目!!一代目は盗まれてさ(笑)やっと・・・やぁっと!!買ったばっか。』

『そうなんだ。』

ほんの少しだけ笑って返すことが出来た。

『ここ!!着いたよ!!』

急に言われてびっくりして立ち止まった。

顔を上げるとそこは住宅地に並ぶ普通の民家だった。

『ここ!?この・・・家!?』

『そうそっ。もう大家さん確実に寝とうけん。おいで!!』

音を立てないよう、かずやはそっと鉄製の門扉を開くと自転車を抱えて

入った。

『あや・・・そこ閉めといて!!』

かなり戸惑ったけど、私は慌てて入ると門扉を閉めた。

かずやが戻ってきて私の手を引っ張った。

そこは小さい庭だった。

玄関から入ると思ったら、かずやはそのまま通り過ぎ

まだ奥へと歩いていく。

そして立ち止まるとポケットから鍵を取り出して静かに扉を開けた。







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