それは突然に
年が明けた。
かずやと私のいわゆる不倫生活は、ある意味順風満帆に思えた。
私の家庭生活にはなんら変わりは無くて、不倫してることを
それほど大それた事にも思わなくなった。
かずやとの電話をあれほどピリピリ警戒していたのに・・・。
今に始まったことではないけど旦那の洋楽鑑賞は長い!!ヘッドフォンつけたら
二時間くらいはもう全く、あちらの世界に陶酔だ。
その間少しくらいならかずやと連絡取ったってかまわないはず。
そう思った私は、旦那があちらの世界に行ったことを確認すると
こっそりかずやに電話していた。
そして今日も・・・。
リビングとキッチンは簡単な間仕切りをしていて、私は食器を
洗うふりをしながらかずやと電話していた。
旦那は少し前からトリップ中。
ヘッドフォンからシャカシャカと音が漏れ出しているのがわかる。
かずやと話に盛り上がり、そろそろ切らなきゃと思った矢先
背中あたりに気配を感じた。
すごく嫌な予感がする・・・。
チラッと振り返った時そこには旦那がいた。
私は黙って電話を切った。
『な、なに!?どしたん!!!!』
そのまま流しの食器に思わず手を伸ばす私に
『おめぇにまさか男がおったとはな・・・。』
吐き捨てるように旦那が言った。
『は、はぁ!?何のこと!?』
『全部聞いとった!!!すっとぼけんな!!!』
『訳わからんわ!!』
『もうええ!!今すぐ出てけ!!』
そこから旦那とどんな押し問答したのか良く覚えてない・・・。
だけど気がついたら階段のところで旦那と格闘になってた。
私は突き落とされそうになりながら必死で子供の落下防止の柵に
しがみついてたんだ。
そして騒ぎに気がついて起きてきた上の子が
泣きながら
『ダメぇ!!お母さんが落ちちゃうよぉ!!』
って旦那の足にしがみついてた。
旦那の顔はすさまじい形相だった。
目ひん剥いて充血してて歯むき出しで・・・。
『とにかく今から出て行け!!すぐに!!・・・じゃなけりゃ
突き落とすだけじゃ!!』
『おかぁさぁん!!出て行っちゃダメぇ!!!!出てかないでぇ!!』
何十分そんなことしてたのかも忘れたけど
もうこの旦那の怒りをどうにも出来ないと悟った。
『わかったからぁ!!。出てくから離して・・・』
『おう!!出てけ!!すぐになあ!!』
私の胸ぐらをつかんでいた旦那の手が乱暴に私を払いのけた。
ボー然と立ち上がると服が・・・。異様にねじれてた。じゃない・・・破れてた。
ふらふらと財布を取りに行く。
旦那は上の子を抱き上げ
『子供はこれから連れてく!!おめぇのこと洗いざらい親に話す!!
もう終わりじゃ!!じゃあな!!』
階段をフラフラと下りる私に容赦なく浴びせられる旦那の罵倒。
『おかぁさぁん!!おかぁさぁん!!』泣きわめく子供の声。
ドアを開けると同時上から旦那が怒涛のごとく駆け下りてきた。
『あ、あの・・・私・・・』
そう言いかけ戸惑う私を旦那は容赦なくドーンと押すとドアはバタンと閉まり
乱暴にガチガチと施錠された。
ぼ〜然と立ちすくむ私・・・。
『あやちゃん!!・・・あやちゃん・・・』
キヨちゃんの小さく呼ぶ声が聞こえた。
だけどそのまま私は足早に石の階段を駆け下り団地の外へと飛び出した。