睡魔
2日目からの病室での時間はほんとに長かった。
子供が二人ともに食事を摂らないから下の子も点滴を注入することになった。
小さな手に点滴針が取れないよう、かまぼこ板みたいなもので固定した後
グルグルに包帯が巻かれる。
その手当て時点で泣きわめく。イヤがって取ろうと泣きわめき暴れるのを
なだめるだけで、もうクタクタだった。
子供も疲れ果ててやっと寝てくれたから私もとウトウトしたところに
看護師さんが様子を見に来て目が覚めたり、何一つ落ち着かず休めなかった。
すがるような気持ちで実家に電話をかけたのだけど
母は仕事が忙しくどうしても来れないと言った。
旦那の母は絶対に無理だろうとわかってはいたけど・・・。
当然来れるはずは無かった。
こうなれば旦那しかいなかった。
夜勤明けの休みは代わってもらおう。
とにかく少しでもいい・・・ぐっすり寝たい・・・。
今の私の願いはそれだけだった。
やっと旦那の夜勤があけて、その日の夕方
旦那と交代することが出来た。
いとしの我が家。入った途端、なんだかよどんだ空気。
溜まった洗濯物をかき分け、お風呂にお湯を入れる。
その間、空気を入れ替えたり、目に入る散らかり物だけを
ささっと片付けたりしたんだけど、体がやたら重い。
念願の湯船につかってしばらくすると
まぶたを開けようと必死でするんだけど、すさまじい睡魔が襲ってきて
私はウトウトと・・・。
(気持ちいい〜このまま・・・。ずっとこのまま・・・。)
突然電話が鳴り響き、ハッと我に返る。
(誰!?)
しばらくすれば切れるだろうと思っていたのにずっとずっと鳴り続けている。
しぶしぶ湯船から上がりタオルを巻いて受話器を取った途端
『おめぇ!!なんしょんなぁ!!!ええ加減戻れや!!!』
『だって・・・。今お風呂入ったばっかで・・・。まだ一時間くらいじゃん!!
私ほんと疲れた!!お願い!!ちょっとだけ寝てから・・・』
『アホか!!!すぐ戻れ!!!子供がぐずって手におえんわ!!!』
電話はピシャリと切れた。
泣きたかった。泣きたかったけど・・・泣いてもいられず私はまた
病院へと戻った。
旦那は育児には協力的ではなかった。
ううん、ほとんど家庭のことは私がやっていた。
良くある、旦那さんが休みの日に洗車するなんて光景は我が家では一度も無かった。
しないことがわかっていたし、言ってもやるわけないし、
それが私にとっても当たり前になっていた。
病室に帰ると旦那が
『おっせぇ!!ほんじゃわし帰るぞ!!』
不機嫌そうに言って入れ替わり帰っていった。
子供達は二人共、私の体にしがみついてきて抱っこをねだったが
私は倒れこむようにしてそのままベッドに横たわった。
三日目の朝
『おはようございます。』という看護師さんの声で目が覚めた。
全く気づかなかった。
起き上がりたいのに体が動かない。動かそうとしたら
痛い!!体中が痛くて痛くて。
やっとの思いで体を起こした。
『今朝体温測れてますかね?』
『すみません。私・・・体中が痛くて。今まで寝てて・・・。』
『ありゃりゃ・・・お母さん風邪がうつっちゃったかな。薬持ってきましょうか?』
『はい!!お願いします。』
だんだん寒気がしてきたと思ったらそれからすさまじく熱が出始めた。
子供達は狭いベッドの上を自由にちょろちょろと遊びまわっている。
そんな子供達が気にはなっていたけど
私の体はもう、思うようには動かなかった。