TS転生悪役令嬢一人勝ち
「ユリアーネ! お前とは婚約ハァーーッ!?」
私の部屋にノックもせずに、我が婚約者であるこの国の王子殿下が、なんだか手からエネルギー波を出しそうな掛け声と共に入ってきた。
勢いよく入ってきた殿下は魚のように口をパクパクさせて、真っ赤になって固まってしまった。その後ろには殿下の取り巻きたちが。
「いやですわ、殿下。ノックくらいしてくださいませんこと?」
「な、何をやってる、リリー!?」
真っ赤になった顔を抑えながら殿下の後ろからでてきたのは、リリーの元婚約者。
「あら、見て分かりませんの?」
かわいそうにリリーが真っ赤になってしまったじゃないか。マッパのリリーにガウンを羽織らせ、同じようにマッパの私もガウンを羽織った。
「と言うか、見ないでくださる?」
殿下の取り巻き達の元婚約者は、私の取り巻き達である。
しかもみんな美少女。すごく可愛いのだ。
よく分からないが、私は今流行りの悪役令嬢転生者らしい。
転生前は男だった。
はっきり言うと、女好きだった。否、たいていの男は女は好きだろう。
女好きだった「俺」は、女を悦ばせるためそれはもう研究し尽くした。女体を!
否、それだけじゃない。女性が喜ぶ言葉やプレゼント、なんでも研究した。
それが功を奏したのか、現在女になったのだろう。
さらにはっきり言うと、今でも女好きだ。
「ユ、ユリアーネ嬢、わ、私の婚約者にナニを……?」
「あら、「元」婚約者でしょう?」
つい昨日婚約破棄されてしまったリリーを慰めていたのだ。体で!
男では分からなかった女体のアレコレを、女になった今生で解き明かしその腕を磨いた私は、その技術を大いに揮っていた。
「……ユリアーネ様」
ほら、リリーなんかすっかり私のテクのトリコだ。
ちなみに、婚約破棄された他の私の取り巻きたちもきちんと慰めました。ジョーゼットもディジーもデリアナも。
殿下はすっかり魂の抜けた顔で突っ立っている。
「殿下、婚約破棄ですのね。分かりましたわ」
男と結婚する気なんてないから、願ったりだ。
あ、とかう、とか言う殿下たちを部屋から追い出す。
存在感がなかったから気付かなかったけど、ゆるふわ頭で殿下たちを取り巻きにしている、男爵令嬢だかも部屋から押し出す。
「私も婚約破棄されてしまいましてよ。慰めてくださるかしら、リリー?」
「ユリアーネ様ぁ」
その後、お互いに心の傷どころじゃなく舐めあったりいろいろ致した私たちが部屋を出ると、件の男爵令嬢だかが混ざりたそうな顔をしていたが、お前は混ぜてやらん。