conclusion 〜有路真輔side〜
皆連絡先を交換しあって、それぞれ別れを告げながら屋敷を出ていく。
先に清原さんと能登さん。
その次に香坂さん。
その次に日輪君と平井さん。
その後遅れて僕と、一菜。
屋敷の外は晴れていて、周りは森、そしてその中へと続く一本道。
ずっと歩いていくと、トンネルがあった。
皆中を通って行ったらしい。
「四宮さん」
僕が声をかけると、彼女は静かに振り返った。
「どうかした?」
その顔はとても穏やかだった。
彼女の暗い茶色の長い髪、白い肌が自然に景色に溶け、黒のブレザー、紫のスカート、赤い石のループタイ、紫の目、赤い眼鏡がより一層、異様に際立って見えた。
風によって木々がさざめき、木の葉が舞う。
何処か怪しい雰囲気が漂っている気がした。
「四宮さん。どうでした?」
「どうでしたって?」
「人の死をたくさん見て、どうでした?」
この質問に君は、どう答える。
「『綺麗』……だったわね。どの死体も、血で飾られていた。私には無かった。少し、羨ましかったわ」
そう言って微笑んだと同時に、木々の隙間から光が射し込む。
自然に景色に溶け込んでいて、まるで彼女がこの世界の支配者か何かかと思わせるような、そんな錯覚に囚われる。
「…………満足……しましたか?」
「え?」
「僕は、『死体を綺麗だなんて思ったことは、一度も無い』です」
「死体って……貴方見てないでしょ?」
「今までの事……今まで繰り返してた事を覚えてるって言ったら……どうする?」
強い風が吹き、木の葉が僕達を遮る。その中で微かに見えた彼女の顔。
少し驚いた顔をして、そして微笑んだ。
木の葉が無くなる頃には、もういつもの顔に戻っていた。
「特に無いわね。もしかして、私が皆をここに集めた犯人とでも?」
「単刀直入に言うとそう。僕があの時自殺して、終わったかと思ったらまた繰り返してた」
「私が終わらせたくなかったからよ。私以外皆死んだという事実のままで」
「それだけじゃない。今回皆がクリアしたのは、君が発言をした後だった。
能登さんに『死んでない』
日輪君と平井さんに『2人共、死んでない』
香坂さんに『もうヘタレ治った』
どれも、直後にあの放送が流れた」
「………………もう、やめない?」
彼女はトンネルの中に入ろうとする。
「待って! もう過去の事だからいい! 何が目的だったの!」
足を止めた。
「そんなの
ザアッと木々がさざめいた。
肝心な所が聞こえず、彼女はトンネルの中へと消えた。
彼女が犯人なのか、目的が何だったのかも分からない。
全員無事生還できた事での安堵感と、周りの景色とは正反対なもやもやとした気持ちが、僕の中を埋め尽くす。
「痛っ……」
木の枝が僕の頬をかすり、傷から血が流れた。
その血はもう、花へと変わらない。
トンネルを抜けた場所は、近所の道路の真ん中。
元々車はあまり通らない所だから、轢かれずに済んだ。
踏みしめたアスファルトの感触が、何故か少し懐かしく思う。
振り返っても、トンネルは無い。
夢かと思った。
けど、頬の傷はまだ残ってる。
煌々と照りつける日差しがとにかく眩しくて、頭が回らない。
僕はこのまま、帰路へとついた。




