suspicious glance 〜四宮一菜side〜
今度こそ聞いた。
あの時クリアしていたのは平井さんだ。
今の所、目が覚めた順番とか、話し合いとかを除いたら、起こっていることは前回と同じだ。
ということは、中庭に行けばいい!
ドアを開け、外に飛び出す。
「ぅわあ!」
「きゃあ! ごめんなさい!」
廊下にいた有路さんにぶつかりかける。
「大丈夫です! すみません! 僕も不注意でした。あの、さっきの放送って……」
「平井さんがクリアしたの。今から向かうところ」
「ぼっ僕も行きます!」
有路さんもついてくる。
前回と同じなら、2人は毒とナイフで死んでいるはず。
『僕はその光景が見ていられなくて吐いたさ。』
前回の有路さんの言葉を思い出した。
「いえ、有路さんは部屋にいて下さい」
「どうしてですか? 貴方だって女の子なのにそんな」
『感謝と同時に、女の子に支えられている僕に嫌悪感が出てきたよ。』
…………。
「分かりました。覚悟、できますか?」
「……っ! …………はい」
そんな会話をしている間に、中庭に着いた。
両開きのドアを開ける。
前回と同じ花畑。
前回と同じドーナツ型の池。
前回と同じ、2人の死体。
「大丈夫。『2人共、死んでない』」
「けほっ……ゴホッゴホッ……カハッ」
「げほっげほっ……はぁ、はぁ」
「ほんとに、よくこんな解決策思いつきましたよね」
「……………まぁ、そうね」
彼の目には、安堵だけでなく、何か少し違う念があった。
パシイィン!!
「「「!!?」」」
「これじゃ守った事になんないわよ! 私達の体は守られたかもしれない! けど、そんなことされたら! 私だけここから出られないじゃない! 嘘を本当にできないんだもの! あんたがいなきゃ達成できないのよ!」
「え……えっ!?」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「お邪魔そうですね」
「そうですね。出ましょ出ましょ」
私と有路さんは中庭を出て、ドアを閉める。
「結局、僕死体見れませんでした」
「そう。でも、見ない方がいいわ」
「そうですね。……あとは僕達と香坂さんですね」
「いや、まずった……」
「え? 何がですか?」
「さっき放送さ、平井さんしかクリアしてない。ってことは、日輪君はクリアできてない」
「あ…………」
「もし生死に関わるものだったら、もう1回死なないといけなくなる」
「その心配には及ばないわ」
声がするのと同時にドアが開く。
「だって私達そんな危ないような嘘じゃないもの。ね?」
「そっ……そうだね」
だんだんと顔を赤くする日輪君とは裏腹に、平井さんはどこか楽しそう。
「でも、何で日輪さんはクリアにならないんだろう」
「あ」
平井さんが似合わないような間の抜けた声を出す。
「私さっき、『これじゃ守った事になんないわよ!』って……」
「あ」
「あ」
「あ」
「ごめん」
「どっ……どうしよう。俺もうあんな事できないよ!」
「ま、待って。守った事に変わりはないでしょ! ね?」
狼狽える日輪君とそれをフォローしようとしている平井さん。
何この可愛い生き物。
「でもさ、もしかしたら他の人が飲まされると思って自分を犠牲にしたんでしょ? それで充分よ。……どんな嘘着いたかは知らないけど」
『おめでとうございます。日輪蓮様。クリアで御座います』
「ほら。ね?」
これであとは、香坂さん命名の寝落ち組だけとなった。
「結局、日輪君と平井さんの嘘って何なの?」
あ。私もそれ聞きたい。
「あ。えっと、す「残念ながら、それは秘密ね」
余裕のある表情で言う。
……ちっ
「そりゃ残念。じゃあ、私達も香坂さんがクリアすればクリアだろうし、そろそろ行こっか。……お邪魔になるだろうしね!」
「なっ…………!!」
一気に顔から余裕が無くなった。
それと同時に赤くなっていく。
「また後でね」
そう言って、私達は2人で香坂さんの元へ向かった。
「あの……」
「? どうしました?」
「何が目的で、こんな事してるんですか」
その言葉に、私の目は大きく見開かれる。




