goiNg mad lovers 〜能登望美side〜
清君と二手に別れて部屋を探る。
あ。私のケータイ!
あれ? メールが来てる。
「………………っ!」
あのしつこいストーカーからだ。
2通来ていた。
『あの男と別れろ』
『愛してるよ』
気持ちが悪い。
清君以外の男なんてそこら辺の電柱とかと変わんないくらいなのに。
ましてや付き合うなんて吐き気がする。
あれ…………?
私確か………………去年…………。
『じゃあ、私は清君と別れるわ』
『ははっ。そうなったら殺してやるよ』
『ふふっ。怖い怖い』
『俺はお前が離れてく方がこえーよ』
思い出した。
「…………み。望美!」
「えっ…………あ………。」
言おう。そして……清君に殺してもらおう。
そうすれば、少なくとも清君はここから出られる。
今日ばかりは、このストーカーに感謝する。
「私と……別れて欲しいの…………。」
「………………………………何で?」
低い声で言う。
「ごめんなさい。」
私は震える声で謝る。
「………何で?せめて、何でか言ってくれよ…………。」
「ごめんなさい。言えない……。」
色んな意味で謝る。
ストーカーされていた事。
清君を利用しようとしている事。
清君の前から、居なくなる事。
「望美。それ、貸せ。」
携帯に気付いた。
「だめ……見せられない……………。」
精一杯の演技をする。
拒んでいるように見えるように。
必死に隠そうとしているように。
「いいから貸せよ!」
力ずくで携帯を奪い取られる。
容赦なく見ていく。
そう。それでいい。
そのまま私を殺して。
貴方が嫉妬しやすいのは知ってる。
貴方に殺されるなら、本望よ。
「………………は?」
清君が携帯を落とす。
そして携帯の液晶を割り、踏み潰した。
「きっ……き…よ……く………ん」
怯えてるように見えるかな?
怖がってるように見えるかな?
「わっ…わた…………わた…し……。」
ようやく。
「いや、いいんだ。」
低く、恐ろしいほど優しい声で言って、いつものように、優しく抱きしめる。
「きよ…………くん………………?」
「いいんだ。」
何かが私のの背中を突き刺した。
いつの間にそんな物手に入れたの?
残念。抱きしめられたまま刺されちゃ、貴方の顔が見えないじゃない。
清君はどんな顔をしてるんだろう。
私を殺して悲しんでくれてる?
他の男に奪われなくなって嬉しい?
何か言いたいけど、もう声も出ない。
あぁ。目が霞んでいく。
最期に私にキスをする。
目に涙を溜め、それでいて微笑んでいる顔。
少し歪んだ愛情が彼らしい。
口の中が甘酸っぱい。
貴方と生きたかったけれど、
貴方の記憶の中で生きるのも悪くないかな。
どうか、ここから出て。
貴方と出会って、貴方に殺されて、
幸せです。
『おめでとうございます。能登望美様。
クリアで御座います。』