プロローグ
オリジナル小説です。
少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
年に1度、嘘をついても許される日。
その日ついた嘘は1年間、本当にならないとされている。
人の恋愛、交友、生死に関わるものなど、人の数と同等に多く嘘は、この世界に存在する。
どれも軽い気持ちで言っているのでしょう。
貴方は覚えていますか?
1年前のこの日についた嘘を……。
頭が痛い……。
ぼやける視界の中、私は目を覚ました。
!!
「ここどこ!?」
パニックになり、上手く頭が回らない。
夢かと思い、典型的な頬つねりをする。
痛い。夢じゃない。
…………落ち着こう。
私の部屋で寝落ちしたわけじゃなかった。私の部屋とは似ても似つかない豪華な部屋。やっぱりあれは夢じゃない。1人で下校していて、いきなり後ろから口を押さえられて……。だめだ。これ以上思い出せない。鞄も無い。携帯もない。
とにかく外に出よう。
脱出ゲームなら閉まっているけれど、すんなりと開いた。廊下に出ると声が聞こえる。
誰かいるの?
声の方へ向かって行くと、私の他にも人がいた。1.2.3...…6人いる。
学ランに眼鏡をかけた男の子。
大きな椅子の上で体育座りのようにして本を読んでいる小柄な女の子。顔が見えない。
少しおどおどして、首にヘッドホンをかけた男の子。
少しチャラそうな長身でイケメンの男の人。
その隣の痩身麗人を思わせるほど美人な女の人。
柔らかい雰囲気で、少し猫っ毛の男の人。
「あれ?君も連れてこられたん?」
「ひっあ、はい」
その猫っ毛の男の人に急にはなしかけられ、少し驚く。
「あ、驚かせるつもりはなかったんよ。君もそうなんやな。。ここにおる皆攫われてここにおるんよ」
「そ……うなん、ですか」
私みたいな子供だけじゃなくて男の人を攫うって。
全く誘拐の理由が分からない。
「んじゃぁ、もう1回皆自己紹介しよか。おれは、香坂道春。25歳フリーター」
猫っ毛の男の人が言う。どこか可愛いらしく、子供っぽい。……25歳らしいけど。
「オレは清原勇。そこの関災人とは知り合い。えーと、年は22の大学生」
言動はチャラくなかった。モデルやっててもおかしくない程のルックスと身長。典型的なイケメン。
「ちょっと待って。今の感じ西の字が違う感じしたんやけど!」
「いいじゃん」
「勇君ひどい」
しれっと言う清原さんと、口を尖らせて自身の指先同士をつんつんとしている香坂さん。
仲良しか。
「私は能登望美。清君の彼女です! 年は秘密。仕事は、モデルやってます!」
そう言って隣の清原さんの腕を抱く。
モデルか。納得。
それにしても、美男美女カップルか。
リア充爆発s……
「リア充爆発しろ」
あれ。違うとこからボソッと聞こえた。
「僕は有路真輔。星雲高校3年」
外見は少し地味だけれど、存在感が強い。
香坂さんと同じくらい雰囲気が柔らかくて、馴染みやすそう。目が合うと微笑まれた。少しドキッとする。
「ささ。あとのお2人さんも」
香坂さんに促されて残りの2人も自己紹介をする。
「小宮中3年。平井和」
名前を言うのと同時に本を下ろす。
うっわ。美人。セーラー服のせいもあり、まだ幼さがあるけれど、雰囲気は大人っぽい。でもちょっと冷たそうだな。
「えっと……日輪蓮。赤月高校1年。今は引きこもりだけど」
ヘッドホンのコードをいじりながら小さい声で言う。
あ。この子か。さっきの爆発しろ宣言。
「私、四宮一菜って言います。明星高校3年です。同じ境遇の人が居て、正直安心しました」
ペコリとお辞儀をする。
「宜しくな一菜ちゃん。今な、皆でこれからどうしようかって相談しとったとこなんよ」
「オレと望美が1番最初に目が覚めて、色々見てきたんだけど、窓も外に繋がるドアも全部びくともしなかった。壊そうとして椅子で殴りつけたけど、椅子の方が壊れちまった」
「そうなの。あ、でも、キッチンがあって、食料が豊富にあったの。どれも腐ってなかったし、当分もちそうな量だったわ。。あと、シャワーもあったの」
3人が説明をしてくれる中、日輪君が口を開く。
「閉じ込める気満々だね。俺達を」
少し空気が重くなった。確かに、ここ迄されれば誰だってそう思う。
「まっまぁ、落ち込んだり焦ったりしても現状は好転しーひんわ。皆で考えていこう」
必死で場を明るくしようとしているのが分かる。
「春さん現状とか好転とか難しい言葉使えるんだ」
清原さんがまたボソッと言った。
「勇君。おれ、ええ加減泣くで?」
この2人の掛け合いが可笑しくて、空気が少し軽くなった気がする。
だけどそれはすぐに崩された。
『ようこそ。愚かな人達。貴方達は選ばれました。最も愚かな嘘をついた者として。この建物には全て鍵がかかっています。出るためには、貴方方の記憶から消された愚かな嘘を現実にしてください』
「なっ何よこれ!」
能登さんが叫ぶ。全くその通り。
もう、何がなんだか分からない。
私達の動揺や心情なんか無視して放送は続く。
『ヒントは貴方方の部屋に存在します。では、健闘を祈ります』
ブツッ
重い沈黙が流れる。
「なっ何が健闘を祈るだよ! 出せよ!」
清原さんが叫ぶ。
この人ヤンキー!?
「あんた馬鹿じゃないの」
「あ゛あ゛!?」
「今出られないって言ってたとこじゃない。叫んで無駄に体力を削るんじゃなくて、さっき言ってたヒント通りに部屋を物色した方がいいんじゃない?
「…………………………」
「…………………………」
体格差がハンパないのに引けを取らない。
「……チッ。望美行こう。こんなとこ早く出るぞ」
「うん!」
清原さんと能登さんが部屋に戻っていく。
「私ももう戻る。貴方達も戻った方がいいんじゃない? ほんと悪趣味ね。クソッ」
ああは言ったけど平井さんも落ち着いてない。
てかそんな言葉使いするのね。
平井さんが出て行くのにつられてか皆各々部屋に戻って行く。
かく言う私も部屋に戻った。
如何でしたでしょうか。
これからも精進して参りますので、よろしくお願いいたします。※感想で指摘を頂いたので、書き加え、書き直しをしました。