表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
常世の国の揚羽蝶  作者: カメコロ
第六章 再び常世の国へ
77/86

懲罰

「『非時香菓』か。桃の実には魔を払う力があって、こっちは不老不死だったか。無敵アイテムだな。しかし、Aもやるな。ハンドパワーってのかね。風晴も妙なことしてきやがったが」

 本当に不老不死の果実なんて、大和にも信じられなかったが、ないよりはある方がいい。伊邪那岐が桃でそうしたように、投擲武器にするのもいいかもしれない。

「うん……いきなり引っ張られて……あれって超能力?」

「ああ……サイコキネシスってやつだな。あいつはサイコパスだけど! 物体を手を触れずに動かす力……さすが神意理解者、神に選ばれし者ってとこか」


「なんであんな人が……」

 朝日は不思議そうだった。神様ももっといい人を選べばいいのにと思った。

「神のみぞ知るってな。神っつっても、イイもんばっかじゃねえってことだよ。他になんかないのか?」

「あ、これ、昨日洗濯した昔の制服」

「なんでこんなもん?」

 聞けば、これを大和が着れば、敵の目をごまかすことができるのだという。一種の迷彩の役割があるというのだ。家でこれを思いついた時、朝日は手を叩いてそのひらめきに感動した。

「はぁ!? お前ふざけてんのか? 大体あいつ今夏服着てんだぞ!」

「なんでもいいっていうから!」

 

 大和は無言で服をひったくって、買い物バッグに殺虫剤と一緒に入れた。

「もう行こうぜ! 遺跡によ! 暗いからこれかぶれ」

 買い物袋からヘッドライトを出して、朝日にかぶせた。潮音は不思議そうにしていた。そんな彼女にはなんにも言わないで、兄妹は演劇部室を飛び出していった。桜色の大気を切り裂いて、プール近くの丘を駆け上がった。大和は自分は模造刀を持っているが、朝日に近接武器がないことに気づいた。そこら辺に落ちていた丈夫そうな樹の枝を拾って朝日に手渡す。

「朝日、これ。武器」

「はぁ? お兄ちゃんこそふざけてんじゃないの! そっちの剣ちょうだいよ!」


「贅沢いうな! これは俺のなんだよ! お前俺より体大きいんだから、いいだろ!」

「ったくもう! こんなのいらない! 行くよ!」

洞窟のような遺跡に飛び込んだ。大和はずんずん進んでいくが、朝日の方は窮屈そうだった。しかし、立ち止まることはできない。

「この文様! Aちゃんの背中の!」

 壁の模様が目に入る。兄妹の記憶の底にある、このミミズがのたうつような模様。これについては、風晴遥華との戦いを終えてから、ゆっくり考えることにした。再び世界に黒の絵の具がまかれ、あの奇妙な光が見える。


「あれが、異界の入り口!」

「ああ! お前は初めてだから言っとくが、まぶしいぞ!」

 敷島兄妹は白い光に包まれた。一方、遥華と一緒に行動していた露子はおぞましい光景を目にしていた。遥華は露子に行き先への道を思い出すように言って、Aを能力で抑えこみ、荷紐で後ろ手に拘束し、猿轡を噛ました。そして、美しい常世の国に、霧生の許しを請う哀れっぽい声が響き渡る。


「遥華さん……お願い、許して……」

「バケモノを送る前に、かすみにお仕置きしなきゃ。そこ正座ね。私の気が収まらないの。大和君に会いたくないって言ったのに……どれだけ無能なの? 前の学校で生徒にイビられてリスカして、私に救ってもらった恩をいつになったら返すの? ねえ~露子ちゃん、かすみね、昔、生徒に言い寄られてさぁ~それで断ったら逆上しちゃって、イビられたんだって。それで、友達の誘いでお祓いで私のとこに来たの。見る? 気持ち悪い傷……あ、ほとんど私がつけてあげたんだけどね」

 

 ひとりでに霧生の服は引き裂かれて、無残な右手がさらされる。露子は恐ろしさに息を止めた。平気で他人を痛めつける遥華が恐ろしかった。Aもすっかり怯えている。遥華の残忍な心と、霧生や露子の恐怖心が感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ