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常世の国の揚羽蝶  作者: カメコロ
第五章 古の邪教、常世の神
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演劇部の二人

 何人かの女生徒が机を寄せて話し合いをしている最中だった。ちょっとタイミングが悪いようだが、そんなことを気にする彼ではなかった。

「新聞部です。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「あなた、敷島君だよね。いきなり入ってきて……」

 気の強そうな女の子、夏島潮音だ。後ろにはオドオドした三春美砂子がひかえている。

「夏島と三春か。いや、悪いな急に。ちょっと急ぎなんだよ」

「何?」

 

 いかにも不愉快で早く済ませたいという風に、潮音は眉をひそめて大和をにらんだ。美砂子はケンカにでもなったらどうしようと、おっかなびっくり大和を見下ろした。ドアの向こうからのぞいていた朝日も気が気でない。こんなでよく新聞部などと言えたものだと思っていた。

「霜鳥露子、仲いいんだよな。今どこにいるか知ってるか? 電話つながらなくてさ」

「……三組の風晴さんと歩いてるのみたけど。心配してるの?」

「心配っていうかな。まあ……新聞部の仕事で……」

 

 潮音の懐疑的な眼差しはずっと続いていた。

「ふぅん……まあいいか。ねえ、敷島君、露子にヒドイことしたら許さないからね」

「はぁ? なんだよその人を犯罪者扱いする眼差しはよぉ?」

「潮音ちゃん……やめようよぉ……」

 大和が声を荒げると、気の弱い美砂子は不安でおろおろしながら、潮音の肩を揺さぶった。

「……敷島君、ちょっといい……あ、ごめんね、すぐ戻るから……」

 潮音は美砂子と共に、大和を廊下に連れだした。女の子が二人いるのに面食らったが、大和との話の方が大事だった。


「私、露子が心配なの。前にあったでしょ。敷島君が取材中に問題起こしたって。露子は気が弱いから……それに……中学の頃から知ってるし……」

「……俺は、あいつのことを、気の合う仲間だって思ってるよ。この一年間、いろいろ話してさ、結構頼りにしてるんだ。今やってる取材だって、あいつと一緒じゃなかったら……。部活もさ、露子がいねえとしまらないっていうか……」

 大和はちょっぴり気恥ずかしそうに、頭をぼりぼりやっていた。露子のことをこんな風に誰かに言うのは初めてだ。潮音はそんな大和の態度を見て、少し安心した。露子は口で大丈夫だと言っていても、そうでないことがかなりあったが、今回は本当に大丈夫そうだ。

「あの、横からすいません。霜鳥さんと兄のことなら、大丈夫だと思います。兄は乱暴でガサツで、人に迷惑ばっかりかけてますけど……でも霜鳥さんとは本当に気が合うみたいでした」


「ヤマトとツユコはなかよしだよ!」

「なんでてめえら! ホントに! 横から!」

「そういうことならいいんだけど……って兄? 弟じゃなくって……? それに……うちの制服? あとこの白い髪の子何? すっごく奇麗……」

 潮音が目を白黒させて、Aと朝日を見た。一緒の美砂子も何が何やらという表情で、四人を見回している。

「あっ! 自己紹介忘れてた! 私、敷島朝日っていいます。この人の妹なんです。この四月からこの学校に入ることが決まってて、今日は……その、ちょっと見学? とかできたらなぁーって思って……こっちは……後輩の……え、エイコちゃんっていいます。ほら、Aちゃん! お辞儀して」

 

 Aは見よう見まねで朝日にならって、潮音たちに頭を下げた。潮音は何やら感じ入ったように、二人の女の子を眺めた。

「先輩すみません。兄が迷惑かけて……もうすぐこの学校に入るから、先輩ですよね。ちょっと早いですけど、よろしくお願いします。私のことは朝日って呼んでください。敷島が二人だとわかりにくいだろうし……」


 一人はあの風晴遥華と同じくらいスタイルが良くて、よく通る気持ちのよい声をしていた。性格もよさそうだ。さらに目を引くのは、銀髪と真っ黒な瞳の対比がこの世ならぬ美しさを放つ少女。だというのに、どこか幼くて爛漫なところがある。


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