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常世の国の揚羽蝶  作者: カメコロ
第三章 敷島家の秘密
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模造刀発見

「朝日、この模様見覚えないか? 俺さ、どっかで見たことあるんだよな」

「Aちゃんの傷……私も思ってたんだ。なんだろうなぁ……うーん……」

 記憶が胸でつかえている。大和と朝日はうんうんうなりながら、記憶を掘り起こしていた。思い出せないというのが、なんとも気持ち悪くて、どこで見たのか気になるのだった。露子もこの奇妙な符合が気になっていて、固唾をのんで見守っていた。かたやAは自分のことなのに、あまり関心がなくて、残りのそうめんを美味そうに食べていた。


「きっと古いものだよね。あんなところに描かれてたんだもの」

 呻吟するばかりで、なかなか記憶の糸を手繰り寄せることができない二人。ついに露子も口を挟む。

「無駄に家だけは古いからなぁ。蔵とかか?」

「でもみんな売っちゃったんじゃないの? 昔のものなんて残ってるのかなぁ?」

 

 母から伝え聞いたところによれば、敷島家はかなり古い家柄でかつては栄えていたらしい。しかしながら、この兄妹の曽祖父の代で没落して、金目の骨董はすべて売り払って、ガラクタしか残っていないそうだ。和室のツボもそんな二束三文にすらならないモノの一つだ。

「とにかく、古いものがありそうな場所、蔵くらいだし、行くだけ行くか」

 

 大和の口ぶりはまったく期待していないようだった。あの蔵は大和と朝日の遊び場で、何があるなら気がついていそうなものだった。

「ヤマト、おかわり……もういくの? くらいのは嫌なの」

「蔵は暗く……いや、暗いか。でもまあ、ちゃんと灯はあるから大丈夫だよ! とにかく行くぞ!」

 もうそうめんは切らしているし、Aの旺盛な食欲よりも、好奇心を満たすのを優先させた。蔵は裏口から庭にでて、左手に進んでいくとある。このボロ臭い家よりも、もっと古めかしくて壁のひび割れや汚れは、もう手のつけようがない。


「すごいなぁ……お家にこんな蔵があるなんて……」

 露子が感嘆して見上げていた。敷島兄妹はこんなボロ小屋に、感心されるのがなんだか居心地悪く、さっさと重い扉をこじ開けて、入っていった。電球の灯は薄暗いが、内部がどうなっているか、十分にわかった。ほこりっぽくて、用途不明なタンスや能面、民芸品の陶器類などのガラクタや、粗雑に積まれたダンボールでうめつくされていた。

「つまんねえだろ? 曾祖父さんの代までは、ウン百万の茶碗とか、円山応挙とか、そういうすげえ掛け軸とかあったらしいけどな」

 

 事業に失敗して、その借金の形にほとんど接収されてしまったのだという。それでも露子にとっては、未知の何かが秘められていそうで、心が踊ってしまうのだった。今は、つまらなそうにしている兄妹も、昔はこの空間で大冒険を繰り広げていたにちがいない。

「おっ、これ懐かしいな! ポン刀だぜ!」

 

 大和が床に捨て置かれた日本刀を掲げて、露子とAに見せびらかすようにした。露子は危険な凶器にびくっとしたが、何も知らないAは大和の得意そうな顔をしげしげと見つめるだけだった。朝日は呆れたように、くすりと笑う。

「危なくねえよ。模造刀だからな」

 

 大和は手慣れたように、すうっと刀を抜き放った。電球の灯に刀身が妖しく光る。しかし、よく見えると、刃は丸っこくて何も切れないようになっていた。付け根に彫り込まれた龍の装飾が、なんとなく安っぽい印象を与える。ただ切っ先は鋭くて、これで突かれたら貫かれてしまうだろう。それに、要するに鉄の棒だ。こんなもので殴られたら、怪我をしてしまう。

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