遺跡発見の報せ その1
大和が新聞部に入ったのは、怪奇実話作家への憧れからでもあった。小学生の頃から、そういうオカルト系に引きつけられていた。キャトルミューティレーションに心霊現象、超能力、神隠し……。そんな俗っぽいオカルトは露子も嫌いではなかったので、一緒に笑って鑑賞した。その度に
「面白い怪談話でも学校にあれば、記事にするのに」と残念がるのが常だった。もっとも、現編集長・部長はこの手のオカルトチックな代物は嫌いで、不興を買っていたのだが。
「それに俺らと趣味合わなきゃダメだ。俺だってここの本、嫌いじゃねえけどよぉ。新入生共のこたぁわかんねえしな」
大和は淡々とダメ出しをしていった。露子はそれを聞きながら、「う~ん」と唸って優しげな光を透き通す窓に眼をやるのだった。
「図書委員会ではね、人気の本とか、好きな本の紹介をまとめたプリントを配ろうかなって話しあってるんだぁ」
うららかな心地の良い声音だった。まるで夢見るように図書委員会でのことを思い起こす。
「へぇ。お前の紹介ならわかりやすくってガキ共もちゃんと読むだろうよ」
大和はしゃべればしゃべるほどに、口が悪くなる。さっきは「新入生」と言っていたのに、今度はガキ呼ばわりである。さらに彼はにやりと笑って、「作文コンクール金賞だもんな」とからかうように付け加えた。
「ええ? やめてよもう! 中学の……昔のことなんだから……」
そんな大和を制しつつも、声色は朗らかで、にっこりと笑っていた。
「この調子で新聞コンクールも優勝に導いてほしいもんだ」
「そしたら、部費だって……」
露子はすぐさま大和に言葉を返す。ずっと使いまわしている新聞編集ソフトも新調したいところだ。二人の気持ちは同じ方を向いていた。
「新聞部なんだから、モノで勝負してえよな。面白えもん出して、それで人がくりゃあいいんだよ! 何か……いいネタはねえかなぁ」
「敷島君! 露ちゃん! にゅっ……ニュース!」
扉が壊れそうな勢いで、部長が入ってきた。あまりにも唐突だったので、露子はびくっと体を震わせた。
「天川先輩……どうしたんですか?」
大和が立ち上がり、息を切らせている天川真実に声をかけた。真実は今年で三年生、この新聞部の部長だ。すらりとした足、その膝小僧に手をのせて、ぜえぜえ息をついている。スレンダーな体とウェーブのかかった髪がゆらめいて、どこか悩ましげだ。大和は眉をひそめながら彼女の言葉を待った。こんな時でなくとも、おっとりして不器用なこの先輩は、こうしてやらねばならなかった。
「新しいネタなの!」
「そりゃわかってますよ。で、何なんですか」