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第三十二帖 姫様、デートの約束をする!

 夏休みまで後一週間という時期。

 今日は期末テストの最終日であった。

 真夜まやのスパルタ的指導で、昨夜遅くまで勉強していた日和ひより欠伸あくびをかみ殺しながら真夜まやと一緒に登校していた。

「おひい様、昨日はよく頑張られました。昨日の調子で今日も乗り切りましょうぞ」

「そうじゃな。追試は嫌じゃからな」

「夏休みも部活はあるのでございましょう?」

「うん! 木曜日と金曜日に午後から集まって、プレゼント用の巾着袋きんちゃくぶくろを作るようにしてるのじゃ」

「お年寄りも喜ばれるでしょうから、作り甲斐もございますね」

「そうなのじゃ! それに夏休みの間も、みんなに会えるのが嬉しいのじゃ」

 特定の人に対しては人見知りを克服している日和ひよりまぶしそうに見つめる真夜まやであった。

 そんな二人が歩く先に季風きふうが待っていた。

 ここ最近、同じことの繰り返しであった。

「おはようございます」

 教室の中では四臣家よんしんけの四人に取り囲まれている日和ひよりと話をすることはできず、手芸部には美和みわの目が黒いうちには絶対に入り込めないと悟ったようで、季風きふう日和ひよりの周辺に出没するのは、登下校時間とお昼休みに限定されていた。

 真夜まやも、同級生である季風きふうに、日和ひよりと一緒に登校することも止めてくれとは言えなかったようだ。

 季風きふうは、日和ひより真夜まやの跡についてくるように歩き出した。

「ヒヨちゃん、テスト、どうでした?」

「な、何とかなりそうなのじゃ」

「そうなんだ。良かったですね」

「うん」

季風きふうも大丈夫です」

 転校して来てから二週間ほど経って、季風きふうも少しは学校に慣れたようで、先生や同級生に対してもオドオドとするところはなくなり、また、授業中、どの教科の先生に質問されても、すらすらと回答できる子だと分かってからは、「女々(めめ)しい奴」などと馬鹿にされることもなくなっていた。

 しかし、積極的に同級生と交流を持とうとしないことも相変わらずであった。

「ヒヨちゃん、夏休みはどうするんですか?」

「えっと、……部活じゃ」

「夏休みも?」

「そうじゃ。楽しいのじゃ」

季風きふうも手芸部に入りたかったなあ」

 その件については、美和みわの強引とも言える策略のせいであり、日和ひよりも反論をすることができなかったが、実際に、季風きふうが手芸部に入っていたら、今まで同じように部活が楽しいと言い切れたかどうかの自信はなかった。

菅原すがわら殿」

「何ですか、梨芽なしめさん?」

「そんなに、おひい様とお話がしたいですか?」

「もちろんですよ」

「では、今日のお昼休みに中庭のベンチで、おひい様と一緒にお昼をされますか?」

 真夜まやのいきなりの提案に、日和ひよりも驚いて真夜まやの顔を見た。

梨芽なしめさんはどうするのですか?」

「拙者は今日は一人で食べますので、菅原すがわら殿がおひい様と二人でお食べください」

「行きます! ……でも、何か裏がありそうですね」

「裏などありません。正当な提案です」

 真夜まやは立ち止まり、季風きふうを見つめた。

「今日、お二人でお話できる機会を作る代わりに、今後、登下校の際につきまとうのを止めていただきたいのです」

「どうしてですか?」

「迷惑だからです! 登下校の時は、拙者がおひい様と話をする時間でございます。他の人には聞かれたくない話をしたい場合もあります。それに、貴殿にとっても、こうやって拙者が間にいて片手間な感じで、おひい様と話をしても面白くはありますまい?」

「それはそうですけど」

「ならば、今日のお昼休み、おひい様と一対一で、菅原すがわら殿が話したいと思っていることを、全部、話されたらいかがですか?」

「今日だけじゃなくて、明日からも、ずっとお昼を一緒にしたいです」

「では、この話は無かったことにしてください」

 季風きふうは無言になって、日和ひより達について来ていた。

 朝晩の登下校時に話をする時には、これからも今のような状態が続くだろう。

 それであれば、一時間弱の間であるが、日和ひよりにしっかりと向き合って話ができる時間をもらった方が良いという選択肢も十分あり得た。

「分かりました。そのご提案をお受けします」

 季風きふうもその選択をした。



 四時間目の授業が終わると、早速、季風きふうがお弁当箱を持って、日和ひよりの近くに来た。

「ヒヨちゃん、行きましょう」

「わ、分かったのじゃ」

 究極の選択のようであったが、少なくとも、これからの登下校時の平穏が取り戻せる真夜まやの提案は、日和ひよりにとっても魅力的であった。

 しかし、男性と一対一で座って話をすることは、四臣家よんしんけの四人ともしたことがなく、日和ひよりにとって初めてのことであり、しかも、相手が季風きふうということで、ちゃんと話ができるか、一抹の不安があった。

 いつも真夜まやと一緒に食べているベンチに並んで座ると、お互いに弁当箱を開いた。

「ヒヨちゃんのお弁当はすごく美味おいしそうですね」

真夜まやが作ってくれているのじゃ。真夜まやの料理はすごく美味おいしいのじゃ」

 日和ひより季風きふうの弁当を見ると、自分の弁当にも劣らないくらいに綺麗に作られていた。

季風きふうさんのお弁当も美味おいしそうなのじゃ。お母さんが作ってくれるのか?」

季風きふうのお母さんは、もう死んでいません。これは自分で作っています」

「そ、そうなのか? 変なことを言って申し訳ないのじゃ」

「良いんです。やっぱり、ちゃんと話さないと、お互いのことは分かりませんよね」

「そうじゃの」

 そのとおりであった。

 最初から「気持ち悪い」とか「うざい」とか思い込んで、季風きふうのことを型にはめて見てしまっていたのではないかと、日和ひよりも少し反省をした。そして、真夜まやの提案の真意も分かり、真夜まやへの感謝も心の中でした。

「でも、ヒヨちゃんは、ご両親ともお亡くなりになっているのですよね?」

「よく知っておるな」

「ヒヨちゃんのことは何でも知ってますよ」

「そ、そうなのか?」

 祖母である伊与いよの跡取りとされていることは襲名披露で知れ渡っているから、日和ひよりの両親が既に亡くなっていることを知っていてもおかしくはなかった。

「ヒヨちゃん」

「なんじゃろ?」

「ヒヨちゃんは不思議な人ですね」

「ど、どこか変か?」

「そう言うんじゃなくて、……ヒヨちゃん、怒らないでくださいね」

「う、うん」

「はっきり言うと、ヒヨちゃんて、すごい美人じゃないですよね」

「何じゃ、そんなことか」

 どんな酷いことを言われるのかと構えていたが、自分が美人だと思ったことのない日和ひよりは拍子抜けしてしまった。

真夜まやの方がずっと美人じゃ。わらわなど足元にも及ばないのじゃ」

「客観的に見れば、季風きふうもそう思います。でも、あの四人もそうですけど、ヒヨちゃんの方に惹かれていますよね」

「そ、それは、わらわが卑弥埜ひみのの人間だからじゃろう」

季風きふうは、それだけじゃないと思います。いつも側にいて守ってあげたいとか、その笑顔を無性に見たくなるとか、そんな不思議な魅力に溢れているような気がします」

「そ、それは、自分では分からぬ」

季風きふうのこの感覚は間違っていないと思いますよ。あの四人だって同じ気持ちになっているはずです」

「……」

「こんな女性に出会ったのは初めてです。だから、季風きふうはヒヨちゃんに告白したのです」

 季風きふうの真剣な眼差しを直視できず、日和ひよりは顔を赤らめて、目を伏せた。

 そんな日和ひよりをしばらく見つめていた季風きふうは、自分と日和ひよりの弁当箱を脇に置いて、日和ひよりの両手を包み込むようにして握った。

「あっ!」

 咄嗟に手を引こうとしたが、季風きふうにしっかりと握られていた手を引き抜くことはできなかった。

「ヒヨちゃん。季風きふうのこと、嫌いですか?」

 他の生徒も大勢いる中庭で、恥ずかしげもなく、季風きふう日和ひよりに顔を近づけながら訊いた。

「き、嫌いではない! で、でも」

 両手を掴まれ、身動きできなかった日和ひよりは、首だけを季風きふうから遠ざけるようにした。

「でも?」

「わらわも男子とのおつき合いに慣れておらぬから、近くに寄られると身構えてしまうのじゃ! じゃから、こうやって二人きりで話をするだけで緊張してしまうのじゃ!」

「じゃあ、この後も何回か二人でお昼をしましょう? 何回かすれば、ヒヨちゃんも慣れるでしょ?」

「そ、それはそうかもしれぬが、な、何と言うか、わらわの中では順番と言うのがあるのじゃ」

「順番?」

「わらわの勝手な思い込みなのかもしれぬが、こうやって二人きりで話をするのは、もうちょっと親しくなってからで良いのではないかと思うのじゃ」

「こうやって、二人きりの話を繰り返すことで仲良くなれるんじゃない?」

 以前に、四臣家よんしんけの四人と話した、好きになってからデートをするのか、好きになるためにデートをするのかの話を日和ひよりは思い出した。

 あの時は、自分のことに置き換えて考えてもみなかったが、今、自分のこととして考えてみれば、好きになってからデートをするのが自分の考え方だと気がついた。

季風きふうさん」

「何ですか?」

「とりあえず、手を離してたもれ」

「嫌です」

「ど、どうして?」

「だって、せっかく近くに来てくれたヒヨちゃんが逃げてしまうかもしれないじゃないですか」

「わらわは逃げぬ!」

「本当ですか?」

「本当じゃ! 約束する!」

 首を遠ざけながらも、しっかりと季風きふうの目を見て言った日和ひよりの言葉に嘘はないと季風きふうも確信したようで、すんなりと手を離した。

季風きふうさん」

 日和ひよりは強く掴まれていた手を揉みながら言った。

季風きふうさんは、アメリカにおったのじゃから、今みたいなスキンシップを取ることも慣れておると思うが、わらわは日本でしか生活をしたことないし、そもそも学校に行っていなかったから、男子と二人きりでいることに慣れておらぬ。だから、わらわのペースに合わせてもらえないか?」

「ヒヨちゃんのペースって?」

「わらわのペースじゃと、季風きふうさんとは、まだ手を繋ぐ段階にはなっていないのじゃ」

「あの四人とは?」

「実際にしたことはないから分からないのじゃ」

 春水はるみとは、手を見せてくれと言われて手を握られたことはあるが、手を繋いだ経験となると四人ともまだであった。

季風きふうは、ヒヨちゃんとそんな仲になりたいです」

「だから、それは順番に」

「だったら、ヒヨちゃん!」

 季風きふうは、何か新しい玩具おもちゃを手に入れたかのように嬉しそうな顔をしていた。

「な、何じゃろ?」

「夏休み、季風きふうとデートしましょう! 部活があると言ってましたけど、毎日じゃないでしょう?」

「えっ! そ、それは……」

「他にも何か予定があるのですか?」

「平日は補習もあるのじゃ」

「じゃあ、日曜日はいかがですか?」

「日曜日には特段の予定はないが……」

「それじゃあ、夏休みに入ってから、毎週、日曜日にデートしましょう!」

「あ、あの」

 日和ひよりは、嘘を吐いて断るということもできなかった。

日和ひよりちゃん!」

 どうしようかと悩んでいると、突然、後ろから秋土あきとの声で呼ばれた。

 振り向くと、ベンチの後ろに四臣家よんしんけの四人が立っていた。

「えっ! ど、どうして、みんながここにいるのじゃ?」

「学食から戻ってて、困った顔をしている日和ひよりを見つけたから心配になって来たんだよ。季風きふうが、また、日和ひよりを困らせているんじゃないかと思ってさ」

 夏火なつひ季風きふうを睨んでいた。

「そんなことしてませんよ!」

 季風きふうは、転校当初のオドオドした様子をまったく見せずに、夏火なつひを睨み返した。

「嘘吐け! 日和ひよりが困っていたじゃないかよ!」

「そんなことないですよ! ねっ、ヒヨちゃん?」

 実際に困っていたが、それをじかに口に出すことが躊躇ためらわれた日和ひよりは、更に困った顔をした。

「困ってるはずだよ。だって、夏休み最初の日曜日は、僕と一緒に遊びに行く約束をしてるんだもんね」

「えっ?」

 びっくりして秋土あきとの顔を見た日和ひよりに、秋土あきとが軽くウィンクで目配せをした。

「本当なの、ヒヨちゃん?」

 季風きふうが厳しい顔をして、日和ひよりに訊いた。そんな顔を見てしまい、季風きふうとデートをすることはまだまだ無理だと思った日和ひよりも踏ん切りがついた。

「そ、そうなのじゃ! 忘れておったが、秋土あきとさんと遊びに行く約束をしておった」

「デートってこと?」

「違うよ。同級生の友達として、一緒に遊びに行くんだよ」

 秋土あきとはそう言い張ったが、男女が二人で行くのなら、それはデートではないかと日和ひよりも思った。

 だが、ここは秋土あきとと口裏を合わせた方が得策とくさくと考えた。

「そ、そうなのじゃ! 友達として行くのじゃ!」

「じゃあ、その次の日曜日は、季風きふうと一緒に遊びに行きましょう?」

 季風きふうも「デート」と言う言葉を使わず、誘ってきた。

「残念だったな! その次の日曜日は俺と約束してんだ。なっ、日和ひより!」

 今度は、夏火なつひが身を乗り出してきた。

「そ、そうじゃった! 忘れておった」

「相変わらず忘れっぽい奴だな、お前」

「えへ、えへへ」

「それじゃあ、その次の日曜日は?」

 白々しい日和ひよりの笑いには突っ込まず、季風きふうは更に訊いてきた。

「申し訳ありません。その次の日曜日は、私と約束しています」

 今度は、春水はるみが頭を下げながら言った。

「じゃあ、その次は?」

「四週目の日曜日は自分と約束をしている」

 最後に冬木ふゆきが申し出た。

「じゃあ、その次は?」

「その先は手芸部の人達と部活外活動があるんじゃなかったっけ?」

「そ、そうなのじゃ! 部活外活動と言うのが何だか分からぬが、そんなのがあるって、部長が言っておったのじゃ!」

 もうここまで来ると、何が何だか分からぬまま、日和ひよりは話を合わせた。

「いったい、どう言うことなんですか?」

「だからさ、菅原すがわら君」

 秋土あきとが、季風きふう日和ひよりが座っているベンチの前に立った。

日和ひよりちゃんは、今、特定の好きな人はいないんだって。そうでしょ、日和ひよりちゃん?」

「う、うん」

 日和ひよりの返事を聞いた秋土あきとは、季風きふうに向き直った。

「そして、日和ひよりちゃんと仲良くしたいって思ってる男子は多いんだよ。少なくともこの四人は、みんな、そうなんだ」

「……」

 無言の季風きふうに向かって、秋土あきとが言葉を繋げた。

「この四人だって、四月から毎日、日和ひよりちゃんと話をしてきて、少しずつ仲良くなってきたんだよ」

日和ひよりさんが菅原すがわらさんと二人きりで話をすることが楽しいと思えるようになるまでは、菅原すがわらさんも私達と一緒に、日和ひよりさんを囲んで話をしませんか? 楽しいですよ」

季風きふうには時間が無いのです! いつ、また転校になるかもしれないから、ヒヨちゃんと仲良くなるための時間が足りないのです!」

 季風きふうは、春水はるみの提案を一顧いっこだにしなかった。

「だからと言って、卑弥埜ひみのの気持ちを置き去りにして、一方的に自分の気持ちを押し付けて良いってことにはならないだろう?」

「……」

 冬木ふゆきの非難に季風きふうも反論できなかったようだ。無言で立ち上がると、みんなに背を向けて、そのまま旧校舎の方に去って行った。

「ったく! 気に入らないことを言われると無愛想になっていなくなるだけって、子供かよ!」

「まあ、人のことは言えないだろうがな」

「うるせーよ!」

 せっかく良いことを言ったと思っていた夏火なつひ冬木ふゆきが駄目出しをした。

 立ち上がった日和ひよりを四人が取り囲んだ。

日和ひよりちゃん、迷惑だった?」

 秋土あきとが神妙な顔付きで訊いた。

「ううん。季風きふうさんも嫌いではないが、あのペースについて行けないところがあって……。正直、助かったのじゃ」

「そう思ってくれると嬉しいよ」

「嘘も方便じゃと、真夜まやも言っておったからの」

「嘘じゃないよ!」

「えっ?」

 日和ひよりは目をぱちくりしながら、四人を見渡した。

「僕達を嘘吐きにするつもり?」

「え~っ! 最初からそのつもりだったのか?」

「誤解しないでよ! 日和ひよりちゃんを騙してデートの約束を取り付けようだなんて思ってなかったから! あの時、一緒に遊びに行く約束をしてるって咄嗟に思いついたんだ」

「わらわは、そう言うことにしてくれるのかと思ったのじゃ」

「俺達と二人きりで出掛けることも嫌だということか?」

 夏火なつひが寂しそうな顔をして日和ひよりに訊いた。

「そ、そんなことはないのじゃ! 四人は、いつも、わらわを守ってくれて、応援してくれて、楽しい時間もくれる。みんな大好きなのじゃ」

 夏火なつひが復活しただけではなく、四人全員が笑顔になった。

「だったら、日和ひよりちゃんと一緒に遊びに行きたいという僕達の希望もそろそろ叶えてほしいな」

「そうだよな。それによ、季風きふうのことだから、日曜日に俺達の跡をつけてくるかもしれないぜ」

「それもそうですね。私達が日曜日に日和ひよりさんと会ってなかったら、私達は嘘を言ったことになってしまいますね」

「そうだ。卑弥埜ひみのは自分達を嘘吐きにしたいのか?」

「えっ? えっ? えっ? えーっ!」

 日和ひよりが目を見開いて四人の顔を見渡した。

「あ、あの、真夜まやにも相談しないと……」

「何で、そこで真夜まやが出てくるんだよ?」

「い、いや、一緒に行けるかどうか確認しないと」

日和ひよりちゃん、今度のはデートだって言っているんだよ。デートは、二人きりでするもんじゃない?」

「で、でも、わらわはデートなんかしたことないから」

「から……怖い?」

「……少し」

「じゃあ、四人とも、今、日和ひよりちゃんに誓おうよ! 日和ひよりちゃんが嫌がることは絶対にしないって」

 秋土が後の三人の顔を見ながら言った。

夏火なつひが一番心配だが」

「おい! 日和ひよりに限らず、今まで女の子が嫌がるようなことはしたことはねえよ」

「疑わしいな。しかし、自分は誓う」

 冬木ふゆきが握った右手を左胸に置いて言った。

「僕も誓う」

「俺も」

「もちろん私も誓います」

 四人全員が同じポーズをして、日和ひよりに誓った。



 その日の夜。

 日和ひよりは、自分の部屋で、真夜まやに相談をしていた。

真夜まや、どうしよう?」

「どうしようとは? おひい様は行きたくはないのですか?」

「……行きたくないというか、不安なのじゃ」

「学校に初めて行った時みたいにですか?」

「そ、そうじゃの」

「もう、あの四人とは、お話もいっぱいされているのでしょう?」

「う、うん」

「そして、おひい様が嫌がることはしないと、全員が誓ってくれたのですよね?」

「うん」

「それでも、あの四人のことが信用できませぬか?」

「し、信用はしておる! あの四人は、わらわを守ることも誓ってくれておるのじゃからの」

「では、何が不安なのですか?」

「そ、それは……、あの四人に迷惑を掛けてしもうては申し訳ないではないか」

 日和ひよりの言葉を聞いた真夜まやは、微笑みながら日和ひよりの顔を覗き込んだ。

「それは、言い換えると、あの四人に嫌われるようなことをしてしまわないかと心配なのではないのですか? つまり、あの四人に嫌われたくないと思っておいでなのではないですか?」

「……そ、そうなんじゃろうか?」

「……分かりませぬか?」

 日和ひよりはゆっくりとうなづいた。

「あの四人は、おひい様の中でそれだけの存在になっているのですよ」

「あの四人に嫌われたくない……。確かに、そうなのかもしれぬ」

 四臣家よんしんけの四人に対する自分の感情が、はっきりと「恋」と呼べるものにまではなっていないことは確かだ。

 しかし、「恋」という感情が芽生えようとしているのかもしれないと分かった日和ひよりは、少し不思議な気持ちで自分自身を見つめていた。

 

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