テレビ番組
まるで空を飛ぶように
この詩は君に送られる
ささやかな感謝と
君にもらったあたたかさと共に
clarity love テレビ番組
「みた!?」
今日も朝から双子たちを幼稚園へ送り、高校へ向かう。
今年は高校3年。進級するつもりもないのでそこまで根気つめて勉強をやる必要もない。
しかし、良い就職先へ行くためにはある程度の成績も必要だ。
少しでもいい成績を取るために朝から予習をしていると、幼稚園のころからの親友である柳田琴乃が目の前にやってきた。
「えっと…何を?」
この興奮具合をみると少なからずとも話に乗ってあげないといけないだろう。
彼女はこうなったら暴走電車のように止まらない。
「もう!昨日の帰り言ったじゃない!夜のMスト見てねって!みうみうとるいるい寝てる時間だろうしって!」
ああ、そういえば、と昨日の放課後を思い出す。
Mストとは有名な音楽番組である。
確かに琴乃は七海に大好きなバンドがでるから絶対見てとしつこく言ってきた。
七海はもともと美羽と瑠唯のために子供向けの番組しか見ないためバンドや俳優など有名人のことなど全く知らない。
知っているといえばお子様向け番組仮面Xマンの俳優ぐらいである。
そんな彼女が歌番組など全く興味がなかったのだった。
しかしそれだけ言われると、七海も女子高生だ。聞いてみたいと思う。
幼稚園へ迎えに行くまでは覚えていたが
「ごめんね。昨日ちょっといろいろあって忙しかったんだ。」
あの香南ぶっ倒れ事件があり美羽と瑠唯が全然寝てくれず、何より頭の中から消え去られていた。
その言葉に琴乃が残念がる。しかし今回の琴乃はここで引き下がらなかった。
「もう!じゃあ昨日の携帯で録画したから見て!もう本当に良いんだから!」
さすが現代っ子琴乃。携帯をすぐさま開き操作する。
一応高校の中では携帯の電源入れるの禁止だ。しかし全くそのことを覚えていないのか、お構いなしにページを開く。
「これこれ!もー!!!さすがanfangって感じ!かっこよすぎて興奮冷めやらぬって感じだったわ~!」
今回の新曲もいいんだけどね~と七海の方へ携帯を見せてくれる。
…え?
「このねヴォーカルのカナンがまたいい詞を書くのよ!そんで声がいいのよ~あ~惚れちゃう!」
琴乃がべらべらと良さを語っているが、七海はそれどころじゃなかった。
香南…さん?え、なんで…!?
「七海?」
七海が驚いているのに気付いたのか、琴乃が心配する。
「いや、えっと、とても素敵ね。びっくりしちゃった。」
七海が笑顔でそう答えると琴乃は安心したようにまた話しだす。
「今回はね、特になんかカナンが違ったのよ。なんっていうか、いつもはね辛そうに声を出すんだけど、凄く優しく歌ってた。」
「そう、なんだ。」
あらためて香南の曲を聞くと、たしかに辛く切ない歌詞だけれど香南自身の感情が穏やかだからか歌はあまりそのように感じられなかった。
凄いなあと感動しながら聞いていると再び琴乃がにこやかな笑顔でこちらを向いた。
「いいでしょ?」
「うっうん、そだ、、、ね、、、」
その勢いについ七海が後ろへ後退する。
「生で聞いてみたくない?」
「へ?」
「なーんと!anfangツアーが一カ月後にあるのよ!もちろん七海のチケットも取っておいたからね!」
七海はびっくりして目を見開く。
「えっ、そんな急に?」
「いやー実はね、anfang友達と行く予定だったんだけど、いきなり行けなくなったって言われちゃって。」
だからこんなに急いでこのバンドの事を知ってもらいたかったのかと納得する。
「けど、私、美羽と瑠唯がいるから…」
「大丈夫!うちの母に頼むから!お母さんみうみうとるいるいにすっごく会いたがってるし、チケット代は申し訳ないし私がちゃんと負担するからお願い!」
ここまで言われたら行ってあげたい。
何より自分がもう一度香南に会いたいと思ってる。
「うん、わかった。琴乃のお母さんには毎回お世話になっちゃうね。」
「いいんだよ!むしろ七海とかみうみうとるいるい連れてこーいってうるさいんだから!」
「そっか。ありがとう。すっごく楽しみ。」
七海が笑顔で言う。琴乃もその笑顔にとても満足げであった。
「かなーん大丈夫う?」
「…あぁ…」
「って全然大丈夫じゃなーい!」
香南ダウンしちゃったーと夏流がメンバーや雅に伝える。
ツアーも佳境に入り、ラストの東京である。
しかし先日のぶっ倒れ事件から一時は声もいつもと変わり、苦しさから逃れられているようだったが
一か月もすると再び蓋ぎ混むような闇を持ち始めた。
「うーん…もう一度、彼女の家へ行ってくるかい?」
ななみちゃん、だっけ?と口元を上へあげ周が提案する。
「周。」
燎が注意すると周はハイハイ、と面白くなさそうに返事をする。
「香南、とりあえず仕事は仕事だ。ちゃんと、やれるな?」
「…わかってる。」
燎はその返事を聞くと香南の頭をぐしゃぐしゃと撫で、雅に温かいお茶を頼む。
ああ、あのあたたかさが恋しい。
手を空にかざしてもあのあたたかさは舞い降りてこなかった。
今回は短いですが、次につながるのでここで止めます。
活動報告でも述べたのですが、お気に入り登録が10件になりましたので記念に何かリクエストがあれば書きたいなって思ってます。
が、これじゃあちっともキャラクター出てないので意味ないじゃーんだめじゃーんってかんじですよね;
まあ、もしあれば活動報告のコメントの方に書いてやってください。