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clarity love  作者: 朱希
49/50

anfang

覚えているかい?





あれは小さな出会い






泡のように消えゆく小さなもの






その向こうに何があるのか誰も知らない






clarity love -anfang






「七海、ちょっと良いか?」

夜ご飯を食べ終わり、洗い物をし終えるとと香南から呼ばれた。

なんだろうと頭にクエスチョンマークをまきちらしながら香南のもとへ、向う。

「なんですか?」

ソファまで行くとぽんぽんと香南が座っていた隣をたたかれた。

座れと言うことだと言うのを瞬時に悟り失礼しますと横に座る。

「七海、2月の最後の週いつでも良いけど平日の夕方からあいているか?」

「え?」

3月の初めは琴乃と京都旅行へ行く予定だった。香南が大阪でCD発売イベントを行うためそれに合わせてでもあった。

学年末テストが1月下旬に終わり学校へ行くことも後は卒業式だけだった。

「特に、ありませんが。」

そう言うと香南はよかったと言う様に笑顔を見せる。

「ネズミー行けなかっただろ?行こうと思って。いつでも良いなら、火曜日が良いんだけど。」

ネズミーの話になったとたん七海の目がきらきらとする。



一緒に行ってくれる…?



「一緒に、良いんですか…?!」

「もちろん。というか、一緒に行ってくれるか?その、二人で…」

香南の顔が一気に真っ赤になる。

その言葉に七海はコクコクと頷く。

「ぜひ!お願いします!!!」

七海のきらきらした笑顔に香南も癒やされた。






ネズミー当日、15時ごろにメンバーがやってきた。

雅は後処理やその他の事務作業が残っているのかこれなかったようだ。

双子の事は他のメンバーに任せ早速ネズミーへ出発した。

車で1時間半、ようやくネズミーへ着く。

香南の恰好はサングラスに帽子、Tシャツにジーパンと目立つのか目立たないのかよくわからない格好だった。

夕方から薄暗くなるぐらいの時間帯だったため誰も香南のことだと気づかない様子に七海は安堵した。

七海が持参したバケットにポップコーンを詰めてもらい二人でつまみながら歩く。

「香南さんは、どのようなものに乗りたいですか?あ、絶叫系はもしかしたら混んでいるかもしれないですけど、」

「・・・わからないから七海に任せる。七海の行きたいところへ行こう。」

「わかりました。任せてください!」

それからゴーカートに乗ったり、空いていた絶叫系に乗ったり、はたまたシューティングゲームのような乗り物に乗ったり、4Dのシアターショーを見たりたくさん楽しんだ。

気づけばパレードも終わり夜深い時間となった。

「楽しかったですね!」

「ああ、そうだな。」

もうそろそろ帰らなければならないと七海はとても寂しい気持ちになっていると香南がふと手を握ってきた。

「その、ついてきて欲しいところがあるんだ。」

まだ乗りたかったアトラクションがあるのだろうか?不思議に思いながら七海はついていく。

ついた先はテーマパークの中心部にあるお城だった。

そこを少しづつ上がり、一番景色のいい場所へ向かう。

立ち止まると、七海の方を向く。

「七海、今日はありがとう。俺はまた、たくさんの幸せをもらった。」

「いっいいえ、こちらこそありがとうございました。とても楽しかったです。」

笑顔ですらすら述べる香南に思わず顔が真っ赤になる。

「これからも、いろんなことがあると思う。俺も、色々な失敗を犯すと思う。それでも、いつまでも一緒に横に並んでいて欲しい。」

バッグの中からCDケースを出す。

「これは、たくさんの宝物をくれた美羽や瑠唯、そして七海へのプレゼントだ。」

「え、これって」

よく見るといかにも発売しますと言うようなアルバムだった。

「今度発売するミニアルバムだ。七海たちのために一曲ずつ作った。」

後ろのタイトルのところを見ると確かに一曲づつ七海や美羽、瑠唯を思わせる題名が描かれていた。

「そして最後の曲はこのCDにしか入ってない特別な曲。無理言ってこのCDだけ焼いてもらったんだ。」

最後の曲の題名は『きみと言う光』だった。このCDだけということは世間に出るCDには残らないものなのだろう。


いいのだろうか、私がこんなものをもらっても、


ちらっと香南の方を見ると香南は七海をじっと見ていた。

「もらってくれ。大切な俺の宝物だから。」

その言葉に思わず涙が出る。

「あ、ありがとうございます。」

受け取ったCDをぎゅっと握る。

さらに香南は自分のポケットから何かを取る。

「それで…えっと、ちょっと待てよ。」

照れたようにゴホンを咳払いをすると意を決したように香南が片膝をつけ七海の左手を握る。

その七海の綺麗な薬指に指輪をはめ込むとそこに軽くキスを落とす。

「俺と、結婚していただけますか?マイプリンセス。」

七海は驚き目を見開く。

「理想、なんだろう?」

香南が真っ赤な顔で首をかしげる。

「…返事をいただけますか?」

七海は流れる涙を必死にふきながら笑顔になる。

「よろこんで、私の、王子さま。」








3月ミニアルバム発売となった。

CMの話題性もあったからか、初CD発売イベントが各地で行われたからかアルバムは一週間のうちに100万枚はすぐに売れた。

そのあともアルバムの完成度の高さから持続的に売れ続けるアルバムとなった。

3月23日、香南の誕生日に七海と香南は婚姻届を提出した。

結局、香南が日向家へ婿に入ることとなった。

そして翌日にはメディアへ香南の結婚を発表した。

ファンからは抗議の手紙もあったがほとんどが祝福の手紙だった。

香南の変わり様をファンもわかっていたようだった。

それからも精力的にanfangはツアーや曲作りをして行く。

どれも独特な世界観で徐々にファンの数を増やしていき、国内だけでなく海外でも人気を博した。

そしていつしか日本を代表するバンドの一つとなるのだった。

そこには昔のような絶望はない。

明日へ向かって行く希望や愛であふれていた。








fin

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