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clarity love  作者: 朱希
47/50

前進

夢の中で夢を見ていた






それはあたたかく






とても寂しい






だってそこには






僕の光がいないから








clarity love 前進









香南は光の中にいた。

そこは薄暗かったがとても温かかった。

ずっとそこにいたい。

じっとしていると後ろの方でかすかな明るい光が宿っていた。

行くのが面倒くさい。



もう十分なんだ。

七海を守ることができた、この気持ちだけで十分だ。

あの光景を見た瞬間、俺の中で何かがはじけた。

助けたかったんだ。

愛をくれた彼女を。

誰もくれなかった俺の本当に欲しいもの。

だから十分じゃないか。





しかしその明るい光は駄目だと言う様にずっと光り続けている。

どうして光り続けるのか…?

重い腰を上げ近くに寄ってみる。

すると大好きなあの声が聞こえてきた。




『香南さ・・・駄目・・・私はま・・・伝えて・い・・?』




その声はとても切なくて、抱きしめてあげたくなる。

何を言っているの?

きみは、悲しまなくていいんだよ。

泣かなくていいんだ。




『私・・・香南・・さ・のこと、好き・・ですよ?』




え?





『好き、なんです』






気持ちが一瞬止まる。そしてそこに集まるのは暖かい心。

俺を、好き?

七海が、俺を、好き?

許されるのか?この俺が。

人から愛されると言う気持ちを俺が感じてもいいのか?

気持ちが高まる。







俺も、会いたい

愛する彼女に、

七海に、会いたい!!









ふと眼を開けると知らない天井だった。

前にもこんなことがあったなと香南はふと笑みを浮かべる。

体を動かそうとするがなかなか動いてくれなかった。

首を横に向けると七海が香南の手を握ったまま眠っていた。

そのあどけない寝顔に暖かさが浮かぶ。



俺は、帰ってこれたんだ



それだけを実感することができた。

手に力が入ったのか七海がぴくっと動く。

そして顔をあげ、香南の方を見る。その目は大きく広げられていた。

「なな、み」





きみの声が聞こえていた。

とても温かくて、とても、せつない。

聞いてもいいかな?

大切な、事





「七海は、俺のこと、好きなのか?俺は、許されても、良いのか?」

目の前の七海の目がうるんでいるのがわかる。

そして顔から落ちる水滴。

涙だと言うことに気付いたのは七海に抱きしめられていたときだった。

「好き」

抱きしめられる力が少しだけ強くなる。

「私は香南さんを、愛しています。」

その言葉に香南の心は解放されたように風が流れる。

七海を今できる最大の力で抱きしめ返す。

「ありが、とう」

その目からも涙があふれ出ていた。








七海はすぐにナースコールを押し医者を呼んだ。

すぐ来てくれた医者に診察をしてもらい、もう心配しなくても大丈夫、と笑顔で教えてくれた。

七海はよかったとまたもや号泣。

わけがわからないと香南が頭をかしげているとなんと香南は手術をして3日も意識不明だったらしい。

確かに体がなかなか動いてくれなかったと思っていたがまさかそこまでとは香南も思っていなかった。

「学校は大丈夫なのか…?」

医者も部屋から出ていき、七海が香南を布団に戻すとふと香南がたずねた。

「あ、えっと、その、」

途端に七海の顔が真っ赤になる。そして手をもじもじしながら話し始めた。

「とても、心配で、また、置いていかれるんじゃないかって、寝れなくて、、テスト終わった後と言うこともありましたし休んじゃいました」

えへへと笑いながら答える。改めて七海の顔を見ると隈がひどく寝ていないのが良くわかった。

一度置いていかれた経験をした七海にとって、もう二度と同じ経験をしたくなかったのだ。

朝双子を幼稚園へ送り制服を着るが気づいたら病院にいてずっと香南の傍にいたのだった。

香南が七海の頭をポンポンと叩く。

「お前を、置いていかない。絶対」



守るだけじゃ駄目なんだ。一緒に生きていく。



香南の決意に七海は大きくうなずいた。









一旦双子を迎えに行った七海は双子を香南のもとへ連れてきた。

双子たちには大きなけがをしたと伝えてあったが連れてきたことはなかった。

久しぶりに会った香南に双子は手を心配しながらも大喜びでずっと話しかけていた。

そろそろ帰ろうと思ってもなかなか動いてくれず七海も困り果てていた。

そんな時にメンバーがやってきた。

「香南大丈夫??」

夏流が双子を抱きながら心配そうに見つめる。

「ああ。あとはちゃんと腕もリハビリしながら動く運動したら大丈夫。」

「そっか。」

夏流はほっとしたように笑みを浮かべる。

「ライブはいけそうか?」

雅が顔色を見ながら尋ねる。

「多分、と言うかやる。痛み止めでも打ってもらって」

「「いたいの??」」

痛み止めと言う言葉に反応した双子たちが今にも泣きそうな目で香南を見る。

「大丈夫。痛くないようにしてもらうんだ。何も悪いことはない。」

二人を安心させるように笑みを浮かべる。

「まあ、ここはやってもらわないとな。」

燎も眉をひそめながらため息をついた。

周が横で笑みを浮かべていたが全く目が笑っていなかった。

「あのお嬢様も困ったものだねえ。ここまでして、誰が幸せになるんだか」

七海は肩をびくっとさせる。あの時のことは七海にとって酷くトラウマとして心の中に刻み込まれていたのだ。

香南はすぐに周を睨みつける。周もすぐにごめんねと七海に謝った。

「まあ、いろいろと香南には言わなきゃいけないことがあるから、七海ちゃん悪いけど夏流と一緒に双子ちゃんたちと席外してくれないかな?近くにおいしいご飯屋さんあるし夏流にそこに連れてってもらって」

「え、」

「なつにおいしいご飯食べさせてもらいな。感想明日待ってる。」

心配そうな顔をする七海に香南は安心させるように言う。明日来てと言うのも忘れずに。

七海はコクンと頷いた。

「よっし、るいるいとみうみう、ご飯行くぞー!」

「ごはん!?」

「なつにーちゃんと!?」

双子は嬉しそうに夏流日連れて行かれる。七海もお辞儀をし部屋から出て行った。







「この件についてはすぐさま社長に連絡をした。社長びっくりしてたよ。まさか自分の娘が!?ってね」

くすくす笑いながら周が話し始めた。

「まあ包丁には病院の先生と彼女の指紋しかついてないわけだし、一目瞭然だと思いますけど確かめてみます?と言ったらすぐ態度を変えたよ。このことはどうか世間には内密にって。自分の娘がこんな殺傷事件起こされてたまったもんじゃないのだろうね。」

雅が補足しながら続ける。

燎はにやりと笑いながら腕を組んでいた。

「だから俺達、ある条件をつけた。香南には勝手に悪いと思ったけど、このチャンスしかねえかなって思ったから。」

「いい。お前らが交渉してくれた方が、助かる。」

香南も真剣に聴いている。それは安心と燎は話を続けた。

「移籍の承諾と、曲の曲使用料に関してこっち10割もらえるようにした。だから今後ライブで歌うことになっても何ら気にする必要がないってことだな。あとこのツアーのDVDを発売しないこと。」

「すげえな。」

「まあ、そこまで娘のことが大事なんだろうね。すぐ承諾してくれたよ。香南は、よかったか?」

雅が最終決断をゆだねるように香南に尋ねる。

香南はコクリと頷く。

「満足だ。ありがとう。」




そっと目を瞑る。

ようやく香南は解放された気がした。






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