抗議
想いよ届け
この風に乗って
この空に飛ばして
clarity love 抗議
ライブが終わったあと社長が香南たちの控室へやってきた。
東京にいた社長は発表の事はすぐさまスタッフから知らされていた。
そしてすぐさま大阪へやってきたのである。
もちろんその姿は怒りをあらわにしていた。
「なっ何を突然言うんだお前たちは!!!」
「なにって、移籍させていただきたいと思います。ありがとうございました。と申し上げたのですが?」
燎がかみつくように言う。
さらに社長は叫ぶ。
「ふっ二人の事は良いのか!?メディアに流すぞ!」
「その件に関してはご心配なく。次移籍する会社がもみ消してくださるので。」
周が執事のように腰を折りながら社長の方を向いてにっこりと笑う。
「次移籍する会社はネクストです。新しいレーベルを立ち上げるらしいのでその第一弾と言うことで入らせていただくことになりました。事務所の方には話もつけておりますし、あとは時期を待つだけになっております。」
雅が説明をすらすらと述べていく。まさかそんなに大手に入ると思っていなかったのだろう。社長は驚いた様子で顔を真っ青にした。
「きょっ曲の著作権はどうするんだ!まだまだ売るはずだったんだぞ!アルバムだって、このツアーのDVDやBDだって」
「このツアーの映像に関しては残さないつもりだ。」
「な、なにを!!」
すかさず香南が答える。特別な曲を歌ったのだ。残すつもりもさらさらなかった。
「もし残すと言うなら、明日からのツアーを速攻中止するつもりだ。」
「!?」
「僕たちは、それほどの覚悟を持って移籍をする。社長、あなたはどう決断する?」
夏流が睨みつけるように言うと、社長は踵を返すように部屋を出て行った。
『それでは、ツアーは無事終わったんですね。』
「ああ。社長にも伝えられた。もう頷くしか、ないけどな」
ホテルに着くと、香南はすぐさま七海に電話をかけた。10時ぐらいだったため双子は寝ているようだった。
ツアーでどんな曲を歌ったか聴く。七海も最近曲を覚えたらしく、曲名を言っただけでどの曲の事を指しているのかわかっているようだった。
『無事、終わると良いですね。』
「そう、だな。」
『・・・』
「・・・」
二人は無言になってしまう。今からが大変だとわかっているのだ。
これではいけないとすぐさま香南は話題を変える。
「七海、お土産何がいい?」
『え?』
「たこやきとかは冷めちゃうから買って帰れないけど、何かお土産欲しいものがあるか?」
『買ってきてくださるんですか!?』
「ああ。」
『えっ何にしましょう!ご当地お菓子とか、大阪にはたくさんあると聞きますね、それにご当地ネズミーもあるかもしれないです!それにそれに、』
すると電話越しにも嬉しそうな声が聞こえてくる。
その声にこちらまでも笑顔になる。
この幸せ、絶対に手放したくない。
香南は再び意思を強く持った。
一日たっても円は信じられなかった。
週刊誌に昨日の衝撃発表の事が載っていた。
しかし、父親から何も言われていない。
本当だとしても父親がもみ消してくれる。今までしてくれていたみたいに。
だからこそ2日目のライブも何事もなかったかのように行ったのだ。
現に七海がライブ来ていないことにあの二人はもう何も関係ないのだと安堵した。
ようやく手に入れられると信じていたのだ。
ところがツアーが始まるとメンバーは大きな発表を終え誇りに満ちた顔で演奏していた。
MCに関してもそのことを踏まえながらファンに理解してもらおうと必死のようだった。
そして最後にまた”さよならの瞳”
円はライブを見るとすぐさま東京に帰った。
家にいないと聞きすぐさま会社の方へ向かう。
会社の方は電話対応に大忙しのようだった。
「パパ!!!」
社長室へ通してもらうと父親は真っ青な顔であわただしくしていた。
「おお、円、」
「どういうことなの!?あれは本当なの…!?」
あれですぐに理解したらしい父親はさらに顔を真っ青にし下を向いた。
それだけで事実がわかる。これは、本当だと言うことを。
「なぜ!?パパ、どうにかできないの!?」
それはいつも父親に言っていた台詞でこれを言うと100%かなえてくれていた。
しかし、今回の父親はいつもと違っていた。
「できるならばどうにかしている!くそ!!あのマネージャーこんなところまで手が回っているとは…」
「パパ、」
「円、いつまでもこんなところにいないですぐに帰りなさい!!じゃまだ!!」
「!!!」
涙があふれてくる。
パパに、こんなこと言われたことないのに
円は会社を駆け出しでて行った。
なによ!!!なによ!!!!!あんな子がいなければ、私だって、私だって!!!
あんな子がいなければ…
円の顔はもはや何も写していなかった。
小ネタ活動報告にかきました。