訪問
きみにできること
この一つ一つが
僕の幸せ
clarity love 訪問
結婚騒動があって以来、香南の日常は劇的に変化した。
病院から退院し次の日には七海の家に来ていた。改めて話し合うためにである。
「七海、本当にいいのか?」
「はい。よろしく、お願いします。」
七海は指を折り挨拶をする。その格好に照れながらも顔をあげるように促した。
双子たちは七海の後ろから覗くように香南を見ていた。
「にーちゃん、ななちゃ?」
「どーぞ?」
「えっと、実はね香南さんは本当にお兄さんになるの。」
とてもざっくばらんに説明をする。幼稚園児に結婚がどうのこうのと話してもわからないのだ。
「おにーちゃんになるの?」
「なるの?」
じっと香南を見つめる。香南は笑顔で答える。
「ああ。おにーちゃんになっても、いいか?」
双子は香南の傍に駆け寄り抱きつく。
「うん!!!」
「おにーちゃん!」
二人はとても嬉しそうで、その二人を見ていると七海や香南まで嬉しくなった。
携帯の連絡は前のような頻度で行われるようになったが、七海の家に行くことがとても多くなった。
香南の家は2LDKのマンションであったが、七海と双子と一緒に暮らせるほど大きくないからだ。
事実この後双子が香南の家に行きたいと言い出し香南の家に遊びに来たことがあった。
「あっおんがくのかみ!」
「ぎたー?」
香南の家は楽譜の数々、楽器が数個、そして奥の部屋にベッドが置かれているだけでありただ生活しているだけに使用されている場所だった。
「テレビも、ないんですか?」
「見ないから。見るなら買うけど、」
もちろん双子と七海がである。とっさに七海は手を振る。
「いっいいえっ香南さんがうちにきたらいつでも見れますし。」
「そうか。」
「キッチン用具もあまりないんですね。」
「・・・」
「えっと、その、うちにきたら一杯ご飯作るのでぜひうちにたくさん来て下さい。」
「・・・」
コクリと香南が頷いた。それ以降七海たちが香南の家へ行くのではなく、香南が七海の家へ行くことになったのである。
もちろん、先日のスキャンダル事件があるため周りに注意していくのだが、香南はあまり気にしていないようだったし、むしろばれてもいいという具合だった。
「うーん今日はこんな感じかなあ…」
大きく背伸びをしながら夏流が言う。今日も一日中アルバム作製をしていた。
「また明日にしよう。一応ツアーまでは時間あるわけだし。アルバム完成できるよ。」
雅がお茶を皆に渡しながら励ます。
「だな。ところで雅さん、どうだ?いけそうか?」
お茶をすすりながら燎が尋ねる。
「今いろいろ聞いてるところ。一応俺も敏腕マネージャーとして名を轟かせているからね。少し顔が聞くんだよ。」
雅も自分のお茶を用意しすすりながら答える。
「オーディション受けることになるんだったら、僕、頑張るからね」
「・・・俺も、」
夏流の言葉に香南も大きく頷く。
「まあ、その件に関しては雅さんに頼んで、僕たちは早くアルバムを完成させる。それにつきるね。」
「・・・そうだな。」
燎がため息をつきながら答える。問題は山積みだ。しかし一つ一つ解決していけば必ず糸口が見つかる。
そう信じて進むしかなかった。
「そう言えば、香南今日は行くのかい?」
話を変えるように雅が香南に尋ねる。行く場所は言わなくてもわかる。
「・・・いや。ただ明日、一緒に行くところがあって朝少し遅くなる。その分の仕事はやってくる。」
「ああ。聞いてることだね。了解。」
雅が頷いて聞くがまわりはわかっていないようだった。
「えっ??どこに行くのさ。」
一緒に行くところと言う言い方に疑問を持った夏流がたずねる。
「・・・秘密。もう行く。」
香南はスタジオの隅にある小さなキッチンスペースへ行きマグカップを洗うと去っていった。
翌日、香南は七海を迎えに行った。一応香南も免許を持っているため今日は雅に車を借り、車で来ていた。
出てきた七海の恰好は制服姿だった。
「お、お待たせしました!」
一度双子を幼稚園へ送ってから家へ戻り自分の支度もしていたため少し遅れていた。
しかし、香南はあまり気にしていないようだった。
「いや、時間にはまだ間に合うだろう。早く乗れ。」
「はっはい!!」
七海が緊張した面持ちで助手席に乗る。
隣で運転する香南を初めて見る。心臓がどくどく言っていた。
ずっと見つめていたのに気付いたのか、香南がちらっとこちらを向く。
「どうした?」
「いっいえっ!!」
かっこいいと思っていましたなんて絶対言えない。
七海は真っ赤な顔を抑えるのに必死だった。
ついた先は学校だった。そう、今日は七海の個別懇談会であった。
七海の学校は2日間で先生と生徒、そして親の3人で数十分話し合いをする。
いつもはおばさんについてきてもらっていた七海もどこから情報を得たのか、その話を聞いた香南は自分が行くと言い出したのである。
久々の学校に香南も興味深々で見渡す。
七海は先生にどのようなことを言われるか気が気ではなかった。
「あ、あの、変な点数とっていても、気にしないでください。」
恥ずかしそうに七海が言う。その俯き姿が可愛く思わず香南は頭を撫でる。
「大丈夫。」
教室の前に行くとどうやらちょうど前の生徒の懇談が終わったらしく入れ替わりになった。
香南もその生徒と生徒の親に礼をする。相手の生徒と親は香南のただならぬ雰囲気に圧倒されるが遅れて挨拶していた。
「日向の番か。どうぞ、お入りください。」
「あ、はい失礼します。」
先生も誰が来たのかと不思議そうに中へ促した。
香南は静かに教室へ入っていく。七海はとても不安そうだった。
「えーと、日向、この方は…?」
なかに入って3人が座ると先生が質問してきた。
「あの、私の、その」
どのように言おうか悩んでいると香南が頭を撫でてきた。
「今のところ婚約者、ですね。鵯香南と申します。いつも、七海がお世話になっております。」
「・・・え?」
香南が礼をし終えたところを先生が七海と交互に見渡す。
「こ、婚約者・・・?」
「はい。もちろん、おばさんやおばあさまに了承済みですのでご安心ください。」
「は・・・はあ」
あまりに話が急展開過ぎて先生は全くついていっていないようだった。
「えと、担任の高橋智也と申します。本日はお忙しい中きていただいてありがとうございます。」
汗をひとふきした後担任も自己紹介をした。
そして徐々に慣れてきたのか普通に成績を渡し今回のテストについて話し始めた。
「日向は比較的どのテストもちゃんとできているので何ら問題ありません。」
その言葉に七海はほっとしているようだった。
「そう、ですか。あの、授業以外ではどうでしょうか?」
香南にとって学校の中での七海は未知なる領域であった。どのように過ごしているのかとても興味があったのである。
「日向は友達も多いですし、いつも友達と弁当食べたり話をしたり、高校生活を楽しく過ごしているように見受けられます。・・・どうだ?日向」
「えっ!?」
突然話を振られ七海が驚く。
「えっと、はい。皆優しいのでとても楽しい高校生活だと思います。」
「そう、か。」
香南は笑顔でうなずいた。
「あの、ところで鵯さん、日向の進路に関してなんですけれど。」
「はい。」
突然真剣な声になった先生に香南が顔を向ける。
七海は慌てた様子になった。
「先生、」
「彼女は就職を希望していたのですが、残念ながらまだ見つかっておらず…どうされますか?まだ進学する方法も日向ならば選べるのですが。」
先生の言葉に香南が真剣に答える。
「就職に関してはお金の手立てができているのでもうしなくて大丈夫です。ただ、七海が進学したいと望んでいるならば、俺はそれを応援したいと思っています。」
「そうですか・・・日向、お前はどうしたいんだ?」
先生と香南の目線が七海に一直線に突き刺さる。
七海は下を向き少しずつ顔をあげる。
「私は、本当にやりたいことが見つからなくて、なのでとりあえず双子を育てながら、香南さんを支えていきたいと思っています。」
「そうか…日向はお母さんをするわけだな?」
「はい、そうしたいんです。香南さん、良いですか?」
香南の方をまっすぐ向きながら七海は尋ねる。
その賢明な眼差しに思わず笑顔になる。
「もちろん。全ては七海がしたいようにしたらいい。」
香南は七海の頭をゆっくりと撫でた。
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