戦い
君への思いは
僕を強くさせる
だからね、
心配しなくていいんだよ
clarity love 戦い
親戚中がざわざわとする声が聞こえる。
有名人であるanfangのカナンが突然家にやってきて突然結婚してくれと頼む。ワイドショーで見る光景をそれに知られる前にみせられているのだ。
驚くのも無理はない。
目の前のおばさんは驚いているのか目を見開いたままだった。
「あなた、本気?」
「もちろんです。俺は、七海さんを愛しています。」
香南がきっとおばさんを見る。おばさんはそのオーラに少しおじけついていた。
「それは、日向家へ来ると言うことかしら?」
徐々に現実味を帯びてきたのか嬉しそうにおばさんが言う。しかし香南の顔は変わらなかった。
「その件については七海と後美羽と瑠唯とじっくり話し合う予定です。ただし―」
香南がおばさんを睨みつけた。おばさんはまた一歩後ずさりした。
「俺は、この三人以外にお金を譲渡することは絶対ありません。お金のことで皆様方に手助けできることは一切ないのでそのように思っていただければと。」
その言葉にはっとしたのはおばさんだった。
一番期待していたもの。婿でもかっこいい男でも何でもない。お金だったからだ。
「あなた…私のうちがどれだけこの子たちを養うためにお金を使ったかわかってるの!?お互い助け合うのが当たり前でしょ!?」
「その件に関しては、その分の、またはその二倍のお金を支払わせていただきたいと思っています。しかし、それだけです。」
「か、香南さん…」
七海は香南の袖をひっぱる。これ以上おばさんを挑発しては何するかわからなかったからだ。しかし香南はぎゅっと七海の手を握り前を向いたままだった。
「いっいい加減にしなさいよ!」
「由紀子!!!」
争いの中声を張り上げたのはおばあちゃんだった。
その声に香南が驚く。
「由紀子、いい加減にしなさい。そこの青年さんも、今日は七海のお父さんとお母さんの法事なんだ。喧嘩はよしてくれ。」
「・・・」
「すみませんでした。…七海も、悪い。」
香南はおばあちゃんにまず謝り後ろを向き七海にも謝った。すると七海は微笑で首を横に振った。
「いいえ。おばあちゃん、ごめんなさい。」
「七海ちゃん、そこの青年さんと話がしたい。部屋を一つ借りれるかね?」
おばあちゃんが七海に聞く。すると七海は急いで上の自分の部屋へ案内した。
おばあちゃんがなんとか上へあがり七海がお茶を出す。
「おばあちゃん、私は」
七海が自分はどうすればいいか聞くとおばあちゃんはにこりと笑った。
「七海ちゃんも席をはずしてくれるかい?大丈夫さ。」
その言葉に七海はコクリと頷き部屋を出て行った。
おばあちゃんは改めて香南を見つめる。
「あらためて、七海の祖母です。あの子たちの保証人になっています。形だけだけれど。」
「はっはじめまして、鵯香南と言います。突然このように訪問してしまいすみません。」
「いいんだよ。ところで、いつになったらサングラスを外してもらえるのかい?」
香南は最初七海を連れ出す時も今までサングラスをかけていた。
慌てて香南はサングラスを外し目を開ける。
おばあちゃんは驚いていた。
「おどろいた。綺麗な青色だねえ。」
その言葉に香南はクスリと笑う。
「その言葉、七海からもいただきました。」
「そうかい。」
おばあちゃんがお茶をそそる。それに促され香南もお茶をそそる。
「…初めてだったんです。褒められたのは」
「なにを、だい?」
「目を。七海は俺の救世主なんです。だから次は俺が彼女を救ってあげたい。たとえ俺がどうなろうとも、だから」
香南が少し後ろへ下がりガバッと土下座をする。
「七海と、結婚させてください。」
無言状態が続く。おばあちゃんがお茶をすする音だけが響いていた。
「あの子の、気持ちは聞かないのかい?」
「俺からの愛は俺の全てを捧げるとても恐ろしいもの。とても七海に背負わせるものではない。それに彼女はこれからです。きっと、素敵な人を見つけるはず。その時がこの結婚のゴールです。」
この結婚についての真意を全て伝える。するとおばあちゃんは遠くを見つめた。
「そうかい。私は今まで保証人と言っても形だけだったからね。正直あの子のために言ってあげれる言葉がないんだよ。だからあの子の好きにさせてやってくれ。由紀子のことは私に任せてくれ。」
ようやく香南が顔をあげる。するとおばあちゃんがにっこりと笑っていた。
「七海たちを、よろしくお願いします。」
おばあちゃんが辛そうにお辞儀をしていた。
その姿に香南はもう一度頭を下げ直した。
香南がおばあちゃんを背中におぶり下に降りる。
七海と双子が心配そうに迎えた。
「香南さん、おばあちゃん、あの…」
「おばーちゃんめっしたの?」
「おにーちゃんだいじょうぶ?」
「大丈夫だよ。ちょっとお話しただけだ。なあ、香南くん」
「はい。」
そして近くのソファにおろした。
おばさんも近くから見ていたが香南の顔を見て驚く。
「あなた…目が…」
「俺は、ハーフですので。」
そっけなく答える。そしてふと、ご仏壇を見る。
それを見たおばあちゃんが香南に促す。
「もし良かったらまいってくれないかね?」
「…いいんですか?」
香南はおばあちゃんと七海の両方を見る。
七海も嬉しそうにうなずいていた。
それに笑顔で答える。
静かに祈る。
その時間は長いようでとても短かった。
祈り終えると七海の家の電話が鳴る。
慌てて七海が出ると雅からだった。
『もしもし?日向さんちのお宅でしょうか?』
「あ、はい。雅さん、ですよね?」
その言葉に少し戸惑いを見せていたがすぐ言葉が紡がれた。
『七海、ちゃん。元気かな?』
「はい元気です。皆さんはどうですか?」
『あーえっと、うん元気だよ。ところで変なことを聞くけどそこに、その、香南はいるかな?』
とても申し訳なさそうに雅が聞く。すると後ろから香南がやってきた。
「雅さんか?」
「はい。」
その声を聞きつけたのか雅が大声で怒鳴りつけていた。
『香南!!!おまえ病院抜け出してどこにいるんだ!!!琴乃ちゃんに聞いて居場所が分かったものの…』
香南は受話器を貸してもらい電話に応じた。
七海は雅の病院と言う単語に首をかしげた。
「大丈夫タクシー拾って帰る。」
『バカ野郎。今すぐ迎えに行くから―』
「待って、その前に他のメンバー集めて欲しいんだけど部屋に。その間に俺タクシーで帰るし」
『皆を?…分かった。絶対帰ってくるんだぞ』
「ああ。」
あっちが切ったのを聞きカナンが七海に受話器を返す。
すると七海がとても不思議そうな顔をしていた。
「あの、病院って…」
「ああ、何も心配しいらない。その、また連絡していいか?」
頭を撫でふとポケットから携帯を取り出す。それは前七海が香南から借りていた携帯だった。
「電話そのままにしてあるし、前のように使ってくれたらいいから。」
「いいんですか…?」
香南は笑顔で携帯をぎゅっと七海の手にのせる。離さないように。
「使って。これは七海の携帯だから。」
七海は照れくさそうにそれでいてとても嬉しそうに香南を見上げた。
「ありがとう、ございます。」
それから香南は近くでタクシーを拾い病院へ戻った。
もちろん、彼らへの報告をしなければならない。
そして決断をしてもらわなければならなかった。
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これも皆様方のお陰です。本当にありがとうございます。
活動報告にて色々語っておりますので、もしよろしければ見ていただければと思っております。
また、番外編も更新しておりますのでそちらもぜひ見ていただければと思います。