表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
clarity love  作者: 朱希
37/50

希望

僕の蝶はひらひらと舞い







どこか遠いところへ逃げてしまった







行かないで。







壊れる前に







そっと手につかみたいから







clarity love 希望









雅がAルームへ行くと案の定七海と知り合いの琴乃が座っていた。

「こんにちは。」

挨拶をすると琴乃は綺麗に腰を折り挨拶をする。

それは前あったようなanfangのファンとしてではなく来ていることが良くわかった。

「突然、すいません。アポイントなんて取り方がわからなくて」

高校生だそんなこと当たり前である。それでも来てくれたのだ。

雅は座るように促しお茶を用意する。

「はいどうぞ」

「ありがとうございます」

そして琴乃がお茶をすするのを見て自分もすする。

琴乃はじっと湯呑を見ていたが意を決したように雅の方を見る。

「あの、今日は、その、お願いがあってきたんです。」

「お願いとは、七海ちゃん関係かな?」

目を細め言うと琴乃がびくっと肩を震わせる。

それでも前を見据え、雅に頷いた。

「七海を、七海を助けてください。」












香南は空を見る。

今日も空は晴天だった。

けれどどうしてだろう。

心が乾く。心は闇にとらわれたままだった。

空を見ていると七海を思い出す。

なぜ?どうして?

問いただしても答えが返ってくるわけがなかった。

ドアが開く音がする。

ふと、何度もあることのなのに期待してしまう。



七海?



しかしそこにいたのは七海の友人の琴乃だった。

びくっと心が震える。

手が震える。

息も心なしか苦しくなってくる。

その姿を見たのか、琴乃は眉をひそめる。

しかし香南を睨みつけるのをやめない。

つかつかと香南のもとへやってくる。

苦しい。近づくのをやめさせようとする。

「やめ、」




パチン!




そこで一瞬何が起こったのかわからなかった。

ただ、頬が徐々に熱くなるのを感じていた。

前を見ると琴乃の眼から涙があふれていた。

頬を手で押さえながら琴乃を見つめる。

「カナン!!!ずるいっ!!!あんたはずるい!!!」

「…?」

「七海に決心させて!あの子に辛い選択を強いるあんたが!!あんたが大嫌い!!!!」

香南は目をみはる。琴乃は涙が止まらなのを必死にごしごし拭いてる。


「けど…」


琴乃の目が香南の目を捕らえた。切実さがあふれていた。

「けど、あなたしか助ける人がいないの。くやしいけど、カナン。おねがい。七海を、七海を助けてあげて」

きづけば香南の首袖を引っ張っていた。



七海を助ける?



「け、けど、俺は」




七海に別れを告げられた。その資格は俺にはないのではないか?




再び琴乃にひっぱたかれた。今度は逆の頬だった。

「ばかっ!!!あんた!!!七海のどこを見てたの!?」

首袖をひっぱられ前後に振られる。

「七海は素直に自分の言葉を言う子なの!?それをあなたが言うの!?あんたの気持ちはそんなものなの!!!!」




気持ち?

七海への気持ち…?





目を見開く。そして琴乃の方を向く。

「カナン。あなたの気持ちを聞きたい。あの子を救って欲しいのは私の願い。けれどあなたの気持ちがそうでないのなら、あなたにあの子のことを教えることはできない。」

香南はぎゅっと手を握りしめる。






―その覚悟と”何か”を断ち切るすべを必死で考えろ。そのための強さを身につけろ。―






俺は何を勘違いしていたのだろう。なんの強さ、覚悟を身につけようとしていたのだろう。

違うだろう?その覚悟は自分のためではなく、七海のためにあるものだろう?




香南は一度目を閉じ息を吐くと再び目を開けた。




「俺は、七海が、好きだ。覚悟はできてる」

その眼には生気が戻っていた。

琴乃はその顔に安心するとにっこりと笑顔を浮かべる。

「よかった。」










それから琴乃は七海の身に起きている親族問題を話した。

祖父母が保証人になっているがほとんど面倒を見てくれないこと。

代わりにその祖父母の世話をしている叔母が文句ばかり言いお金のことばかり言ってくること。

前回の事件のことで叔母から香南を利用してお金を巻き上げろと言われたことも。

「あの子、断ったわよ。あなたを利用できないって。もちろん親戚から怒られたらしいけれどそれでもよかったって笑顔で言ってた。」

「…」

「七海の問題は以上のことよ。あとは、考えて。私じゃなくて、あなたしかできないこと。」

気づけば夜になっていた。

琴乃は部屋を出ようとすると雅が待っていた。

どうやら送るために待っていたらしい。

二人が出ていくと香南は空を見上げた。





七海





香南は手をぎゅっと握りしめた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ