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clarity love  作者: 朱希
36/50

絶望

光が見えない






なにも、






何も映らない








clarity love 絶望









香南が目を開けると知らない天井が写っていた。

横を見ると点滴が打たれていた。

そして夏流がベットに寄り添い寝ていた。

どうして?徐々に起こったことを思い出す。





七海、





バッと飛び上がる。

すると横で寝ていた夏流がびくっと肩をあげる。

夏流は寝ぼけ眼で目の前に起こっていることを見ていた。

香南が点滴の針を抜こうとしていた。

ハッと気付き、夏流がその手を抑える。

「香南っ何をやってるのっ!!!」

「はなせっ!!!」

病人の力と夏流の力とでは明らかに差があり手を放させ、肩をベッドへ沈める。

しかし香南の抵抗は一向に収まらない。

「七海がっ!!!行かねえと!!!!」

「だめだっ落ち着いて、香南!!」

抑えていると雅が部屋へ入ってきた。ことを察知した雅も一緒にベッドへ抑える。

「香南、落ち着け!!!」

「七海がっ!!」

これでは埒が明かないと雅が救急ボタンを押す。

すると医者や看護士がごまんとやってきた。

暴れている香南を見て急いで医者が薬を用意する。

それを一瞬のすきを見て香南の口の中へ入れる。

すると徐々に落ち着いてきたのか再び眠りに就いた。











『七海ちゃんが別れを告げた』

ドア越しに話を聞いていた雅はメンバーの3人に言った。

周と燎はなんとなくわかっていたためやっぱりと言う顔をしたが、夏流はそうもいかなかった。

「なんで?!ななちゃん、だって、」

「七海ちゃんにも守りたいものがあって、それを守るために行動したんだ。俺らに何か言う権利はない。」

「けど、」

七海をなくした香南はどうする?

夏流は唇をかむ。

周は夏流の頭を撫でてあげる。

「こればかりは香南の味方をしてあげられねえ。今までこっちの都合にあわせてもらってたんだ。七海が無理っていうんだったら無理だよ。」

「…」

「残念、だけどな。」

七海の気持ちを優先させなければならない。

たとえ、香南がどうなろうとも自分たちで何とかしなければならない。

雅とメンバーはお互い何も言えなかった。










香南が倒れてから数週間たったが、香南の体調は一向によくなる気配がなかった。

というのも香南が食事をしないからだった。

何度運ぼうが、好きなものを買ってこようが、首を横に振るだけで何も食べなかった。

優しくしても、怒鳴り込んでもそれは全く変わらなかった。

香南自身まるで生きていないように目を虚ろとさせひたすら窓の外を見つめていた。

そして突然思い立ったように部屋を出ていこうとする。

体がふらふらなのにもかかわらず出ていこうとするものだから誰かがついて見張っていなければならなかった。

対人恐怖症は前以上にひどいものとなっていた。

メンバーや雅でさえ触られたら気持ち悪くなる始末。

ある一定の距離を置いてないと会話がままならなかった。

仕事も全く進まず、これではアルバムどころかシングルも出せない状態だった。

これを打開する方法が一つだけある。

しかし、その方法は唯一であるが決して使えないものだと言うのを皆わかっていた。




なんとかしたい。しかししてあげられない。

心のモヤモヤだけが残っていた。











モヤモヤだけが残り仕事もままならない。

どうしたものかと雅は事務所で事務処理をしていた。

結局シングルの件は香南の体調不良からナシと言うことになった。

社長は随分と不満を漏らしていたが、原因が働きすぎだとわかるとしぶしぶ承諾せざるを終えなかったらしい。

アルバムの件もこれ以上延びるようだったら発売日も変更しなければならない。

ツアーも待ってる。そのためのアルバムだったにもかかわらずだ。

どうする、どうする。必死に頭をフル回転させていた。。

すると突然内線がなる。

どうしたのだろうと不思議に思っていると受付からだった。

「もしもし」

『すみません。雅さんへアポなしのお客さんがいらっしゃるのですが…』

「え?」

『追い返そうとするのですが、どうしてもと。名前を言えば分かるとおっしゃるので…』

「誰?名前は?」

『あ、はい。お名前は柳田琴乃さんとおっしゃる方で』




ことの・・・?




その名前に聞き覚えのある雅ははっとする。

「その子、通してくれ。場所はAルーム空いてるだろ?」

『はい大丈夫です。それでは通させますね』

失礼しますと電話が切られる。





もしかすると、もしかするかもしれない。






一抹の希望を持って、雅はAルームへ急いだ。






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