限界
この気持ちを胸に
また戦っていける
だから今だけ
悲しみに落させて
clarity love 限界
泣き叫ぶ七海を琴乃はただただ受け止めるしかなかった。
廊下に出ているため中に入らせてもらう。
すると泣き声に何事かと双子がやってきた。
「ことちゃん、どしたの?」
「ななちゃ、ないてる…?」
二人は心配そうに七海を見る。
「大丈夫よ。ちょっとびっくりしちゃってるだけ。二人とももうすぐまま様といっしょ始まるよ??私たちちょっと奥使うから良い子に見ててくれるかな?」
二人に心配ないと笑顔で言うと二人は悩みながらもしぶしぶ頷く。
二人がテレビを見始めるのを確認すると寝室に入る。
少し落ち着いてきたのか、七海は涙をごしごし拭きながらごめん、と謝る。
「どうしたのさ。」
琴乃が背中をさすってあげると七海は少しずつ語りだす。
「おばさんが、おばさん、知ってて。」
背中をさするのが一度止まる。しかし、七海は止まらなかった。
「香南さんを利用しろって。お金、おかねがっ、いっぱい手に入るからって。私もうっ香南さんと会えない。会えないよッ。」
わあああっと再び琴乃に飛びつき泣き始める。
止まらない涙に再び背中をさする。
「そっか。うん。そうだね。」
七海が泣き終えるまで、琴乃はひたすら背中をさすり続けた。
落ち着いたところでお土産とやらを持ってテレビのある部屋へ戻る。
双子が寄り添ってくる。
「ななちゃ、大丈夫?」
「なでなで。」
二人が必死に撫でてくれる。それに琴乃と七海は笑顔になる。
「大丈夫だよ。ほら、琴乃がお土産持ってきてくれたよ。なんだろうね。」
「「おみやげ!?」」
二人の顔が一気にキラキラした顔になる。
その顔にほっとすると琴乃は袋をごそごそとあさりだす。
「はい、まずるいるいとみうみうに仮面Xまんのお菓子だよ!」
二人に差し出すとわーい!!と嬉しそうに喜んだ。
「ありがと、ことちゃん!」
「ありがと」
そして次に袋から出したのはネズミーのキャラクターの袋に入ったお菓子だった。
「こっ琴乃!?」
「袋はまた使えるし、食べよ!今日はいっぱい!」
七海は嬉しそうに笑い、ニコニコとお菓子の袋を開けた。
それからはおかしパーティー兼勉強会の始まりだった。
本当は夜ご飯のことを考慮して食べるのをやめなければいけないけれど、今日だけはと皆で食べながら双子はひたすらテレビ、七海と琴乃は勉強をした。
あまりに集中していたのか気づけば8時ごろだった。
「ふーいっぱい勉強したー。もう勉強したくなーい」
「もう、琴乃ったら」
琴乃は伸びをする。それをくすくす笑いながら七海が見る。
双子は疲れたのか昼寝をしていた。
「今日はどうするの?もう遅いし、危ないし、」
七海が目を伏せ心配そうにする。
「ん?泊まっていく気満々よ?久々に七海といっぱいお話したい。一人や二人増えたって変わりはしないでしょ!」
琴乃がニコニコ笑うと七海はほっとしたように笑みを浮かべる。
ピンポーン
突然部屋のチャイムが鳴る。
誰だろう?とドアの穴を除くと雅だった。
すぐさまドアを開ける。
「雅さん」
「夕ご飯と明日の朝ご飯買ってきたよ。」
雅の笑顔に七海も笑みを浮かべる。
「わざわざありがとうございます。あ、中へどうぞ」
中へ促すと雅は琴乃の存在にびっくりする。
「琴乃ちゃん、こんばんは。」
「こん、ばんは」
先ほどの七海の涙を見ているのであまりいい顔ができなかった。
「すいません。琴乃には部屋教えちゃいました。」
七海が苦笑すると雅が手を振る。
「いや、いいんだよ。こちらこそこんな窮屈な生活を強いてしまって本当に申し訳ないね。」
「いいえ。大丈夫ですよ。」
七海がニコニコしながら答える。
琴乃にはそれが無理をしている顔だと言うことが分かっていた。
「あの、雅さん」
突然七海の声が変わる。それは決意を秘めた声だった。
まっすぐ雅の方を向くと雅も真剣に七海の方を向く。
「どうしたんだい?」
「私、香南さんとお話したいことがあります。いつでも良いです。お時間いただけますか?」
その言葉に雅は目を見張る。
目を閉じ何かを考えるようにするとスッと目を細めた。
「それは、香南も申し出ていたことだ。もちろん彼からも謝罪をさせるつもりだよ。けれど、七海ちゃんの話はそれではないね?」
大人の鋭い目で見られギクッとするがちゃんと雅の目を見据えコクリと頷く。
雅ははあとため息をつくと微笑む。
「ごめんね。僕たちがこんなことを頼んだばかりに。きみには迷惑ばかりかける。」
七海は首を振り否定する。
「そんなこと。悪いのは私なんです。これ以上、迷惑かけれませんので。」
「わかった。今はまだ時間が取れないけれど取れ次第すぐ会えるようにするよ。」
七海はお願いしますと腰を深くおった。
それから一週間瞬く間に過ぎて行った。
あれから香南からのメール電話はきていない。くるのは琴乃と雅だけだった。
学校へは雅さんではなく、違う人が送迎をしてくれた。
学校に通学した2学期最初の日は異様な目で見られた。
週刊誌では七海の顔にモザイクがかかっていたが、家を知らない人も様々なうわさを聞いたらしい。すぐさま噂は広がった。
七海は特に気にせず、2学期最初の実力テストを受け、授業を受け、双子とホテルで静かに暮らしていた。
家へようやく帰ってきたとき、携帯にメールが来た。雅だった。
『一週間後、香南と会えるセッティングをした。迎えに行くから夜待ってて』
いよいよかと思うと寂しい気持ちでいっぱいだった。
けれど、、、
進まないといけない。
香南のためにも、
自分のためにも。
そう思い承諾の返事を送った。