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clarity love  作者: 朱希
31/50

pain

暴力とかいろいろ出てきますので、ご注意ください。

あなたの後ろ姿は







僕にとって全てが恐怖だった







clarity love -pain-









俺が生まれたのはとても小さな町。

気づいた時から母親しか近くにいなかった。

後々母親から知らされることになるのだが、父親は外国人の資産家で遊びで日本に来た時母親と出会ったらしい。

母親は当時ホステスとしていた。

かなりの美人だったらしく、父親の方もついつい何度も通ったらしい。

いつの間にか母親も本気で父親の事を好きになってしまっていた。

既成事実を作るために何度も何度も父親を求めた。

そして、できたのが俺。

父親はそれを知った瞬間手切れ金を母に渡し、外国へ逃亡。

それ以降会うことはなかったらしい。

もちろん俺も一度も会ったことがない。

母親いわく俺は父親にとても似ているらしい。

何よりも目が、似ていた。

髪の毛や肌の色は日本人なのに目だけが違っていた。

だからだろう。

幼いころはお父さんに似ているとほめちぎられていた。

しかし、その気持ちは徐々に変わり始めていた。







「おかあ、さん」

「なによ。うるさいのよ!!あの人に似ているそんな目で見ないで!!!」





「おかあさん、」

「はあ。なんでこんな子産んじゃったのかしら。」





何度も何度も小さな声で呼んでも母親には全く聞こえていなかった。

そして俺を睨みつける。




『僕の目は、そんなに、いけないものなの?』





俺はただただ縮こまることしかできなかった。

目をサングラスでひたすら隠し、すごしていくしかなかった。









小学校のころになると徐々にエスカレートし始め、俺に暴力を振り始めるようになる。





「あんたなんていなければ!!!」




バシンっ!!





「そんな目で見るな!!!」




パシン!






あまりに激しい暴力から逃れるように母親に隠れて暮らすようになる。

もちろんご飯も別々だ。

学校から家に帰ると母親は自分の部屋に閉じこもる。

そして俺は机の上にあるお金を使い夜ご飯、朝ご飯を買いに行くというのがスタンスであった。

あまりに頬が腫れすぎて学校に行けないこともあった。

学校は別にどうでもよかった。

この目のせいで外国人だと無視されることが多かったから。

しかし学校側も毎日のように怪我をしている俺を心配し、何度も理由を尋ねるようになった。




「かなんくん、その怪我はどうしたの?先生にだけ、いってごらん?」

「…」



しかし俺は決して言わず首を横に振るだけだった。

俺はあれだけ暴力をふるわれてもまだ期待をし求めていたのだ。

母親の愛と言うものを。










そして母親はアルコールに溺れ始める。

アルコールを飲み始めると少しおさまっていた暴力もしばらくすると今まで以上の悪化。

暴言も徐々に増え始める。

けれど、俺は耐えた。

あの幼いころの母親がいつか帰ってきてくれると信じて。




そしてある日の学校からの帰り事件は起こる。




「ただいま。」





毎日のように返事のない「ただいま」を繰り返していた。

するとキッチンの方から何かが割れる音がした。

俺は急いでキッチンへ向かう。

そこには母親と割れているウィスキーの瓶。

「母さん!!」

怪我をしているのではと心配で近寄る。

すると俺が近付いたことに全く気付いてないらしく一人でブツブツつぶやいている。

ふと横を見ると新聞の切れ端が置いてあった。

そこにはとある外国人が婚約者と結婚する記事が載っていた。

「トム」

母親がうつろな目で俺を見たかと思うと突然俺を押し倒す。

「トム、トム…」

唇を俺のそれに押しつけようとする。

そんな母親に必死に抵抗をする。

「母さん、俺だよ。かなんだ!!!」

するとハッと目を揺らがす。

やっと気持ちが通じたとほっとしているといきなり母親が高らかに笑いだした。

この様子はさすがに危ないとなんとか離れようとするが全く効果がなかった。

それどころか母親は俺の首を締め始める。

流石に苦しくなり俺は顔をゆがめる。

「かあっかあさっ!!」

「あんたのっあんたのその目がいらいらすんのよ!!!あんたさえいなければ」




一瞬時が止まる。




「そうよ、あんたさえいなければうまく言ったのよ。あんたさえいなければ今ごろまだあの人と付き合っていられたわ。ははっ、そうよ。あんたさえいなければ、あんたさえいなければ!!!!」

割れたウィスキーの瓶の切れ端を血が出ることなど気にせず鷲掴みしたかと思うと俺の目めがけて突き立ててようとする。

俺はとっさに目をつぶる。










しかし俺の顔に突き刺されることはなかった。

カランと音がしたかと思うと突然母親が息苦しそうな声を出し始めた。

首を絞める手の強さも弱まりどうしたかと目を開ける。

目の前にいたのは苦しそうにもがいていた母親だった。

「ぐっく・・・はっ」

「母さん!!!」

手をのばすがふりはらわれる。

「ちかよらないで、、この、ばけ、ものが。」

力尽きたように母親が倒れる。





ばけ、もの?






俺はしばらく動けなかった。












たまたま家賃請求に来たうちのアパートの大家が鍵が開いているうちを不審に思い入ってくれたのが幸いだった。

大家が見たのは虚ろな目をしている俺と傍で倒れている母親。

大家は急いで救急車を呼んだ。

俺の首に手のあざがくっきり残っておりどうしたんだと追及されるがとても言えるものじゃなかった。


母親はそのまま病院で死んだ。

原因は小さい俺にはよくわからなかったが、アルコール依存症からの何かが関係していたらしい。

俺も首のこともあり、精神的に追い詰められていたためしばらく入院することとなった。

母親の葬式は勘当されていた母親の親に頼んでやってもらい、俺は施設に入ることとなった。

母親が死んだ後知らされたのは手切れ金が莫大だったこと。

お金の使い方もわからない小学生が幼くして大金を手に入れてしまった。

一番大切な何かを手に入れることができなかった代わりに。








それからだった。俺が人と接すると気持ち悪くなったのは。

特に女の近くに寄るだけで吐き気がした。

施設の人間は何度も何度も俺を病院に連れていくが精神的なものからくるとしかわからなかった。









お金も何もいらなかった。








ただ欲しかったのはたった一つ、その一つを俺は手に入れることができなかったのだ。








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