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clarity love  作者: 朱希
27/50

練習

きみの言葉は






全てが新鮮で







僕を成長させる








clarity love 練習







ふと目を開ける。

外は明るく、スズメが朝の訪れを告げていた。

そして下からはにぎやかな声。




にぎやかな声?




七海はガバッと起きる。

横を見ると双子たちはいなかった。

慌てて下に降りるとパタパタと楽しそうに走っている双子がいた。

「あ、ななちゃおはよ!」

「おはよ!」

良く見ると二人は顔がびしょびしょだった。

急いでタオルを取ってこようとすると後ろから声が聞こえてきた。

「おい、美羽、瑠唯。顔ちゃんと拭くぞ。」

香南が洗面所からタオルを持って出てきた。

二人の前に七海がいるのに気付く。

「ああ。七海、おはよう」

「おはようございます。あ、あの」

「あ、ななちゃんおはよー」

キッチンからは夏流が覗いていた。どこから調達したのか可愛いエプロンを着用していた。

「す、すいません。今から支度を」

慌てて夏流に言うとノンノンと持っていたフライ返しを振る。

「今日は僕が朝食作るんだ。料理は得意だから任せてよ。」

ウィンクしながら夏流が答える。すると後ろから香南が肩をたたく。

「わりい、本当はもっとゆっくり寝てもらう予定だったんだ。ご飯はもう少ししたらできるからもう少し寝てて良いぞ」

「いえ、大丈夫です!おかげさまでゆっくり寝れました」

それはよかったと香南が笑顔になる。

リビングへ向かうと周と燎と雅が録画していた仮面Xマンを見ていた。

「おや、ななちゃんおはよう。」

「おお、調子はどうだ?」

「おかげさまで。」

返事をすると皆よかったと笑みを浮かべまた画面に目線が戻る。

かなり気に入った様子だった。

「いやーこの俳優すごいね。あんなにかっこいいのに仮面つけながらこんなに動けるなんて」

雅がコーヒーを飲みながら感心していた。

「いや、これは俳優さんと変身した後のスタンドマンが違うらしいです。」

七海がテレビのそばに置いてあるソファに近付きながら言う。

3人とも驚いた眼をしていた。

「なるほどねえ。確かにあの俳優の体つきからあの動きは想像もできなかったよ。」

「すげえな。ちゃんと考えてあんだな。」

「これは子供向け番組も馬鹿にはできない」

3人はさらに真剣な顔で見始める。

するとキッチンから夏流が出てきた。

「朝食できたよー!双子ちゃんから先どーぞ。」

「「わーい!」」

香南に顔を拭いてもらい元気よくキッチンに向かう。

七海も食べさせるために向かうとそこには美味しそうな朝食が並べられていた。

双子がいつもの定位置につくと張り切って食べようとする。

「「いただきまーす」」

スープやらオムレツやらをおいしそうに食べる。

「どうおいしい?」

夏流が聞くと笑顔で双子が夏流の方を見る。

「おいしー!」

「すーぷ、おいしい」

そしてさらに黙々と食べ始める。

「いやーんかわいいっ!!こんな可愛い笑顔見れるんだったら作った甲斐あったってもんだよ!」

夏流が嬉しそうに2人におかわりいっぱいあるよ~と呼びかける。

七海も少しだけ双子におすそ分けしてもらうととてもおいしくて驚く。

「おいしい、です!今度作り方教えてください!」

「でっしょ~?いいよん!ななちゃんはもっと上手に作れるよ」

へっへへ~と言いながら夏流が喜ぶ。

双子に食べさせ、服を着替えさせると雅が車の準備をしていた。

「よし、じゃあ美羽くんと瑠唯くん、今日は俺が連れていってもいいかな?」

「はーい!」

「よろしく、おねがいします!」

双子が元気よく手をあげる。

その後ろでは七海が申し訳なさそうな顔をしていた。

「すいません。よろしくお願いします。」

「いや、いいんだよ。俺も行くところがあるし。じゃあ、夕方迎えにくるから皆の事をよろしく頼むな。」

雅が苦笑しながら言うと夏流がぶーぶー頬を膨らませる。

「なんだよー!なんで僕たちの事を頼まなきゃいけないのさー!」

「病人相手にうるさくしそうだからだよ。じゃあいってきます」

「「いってきまーす」」

3人が行ってしまうと家の中は静かになった。







「双子が元気なのはよくわかった。あいつら朝からすげえ元気だな。七海も毎日よく相手できるな。」

燎がパンを一口ほおばりながら話す。

「いえ、私にはあの子たちだけなので。いつも元気をもらうんです。それに今日はたぶん皆さんがいるからあんなにはしゃいでたんだと思います。いつもはあんなに元気じゃないですよ。特に瑠唯なんて頭起きてないですから」

七海は苦笑しながら箸でオムレツを割る。中からとろりとチーズが流れてきた。

一口口の中に入れると香ばしいけれどふわりとやわらかな感触に笑顔をこぼす。

「…確かに、瑠唯は全然起きてくれなかった。」

香南が朝の事を思い出しながら笑う。

「すっすいません。」

七海が顔を真っ赤にする。

「いや、謝ることじゃねえし。ところで七海学校に連絡した方がいいんじゃねえか?」

香南に指摘され、ハッと気づく。

そして学校に電話をし、上から携帯を取ってくる。

すると着信が何件もあった。予想はしていたが、着信相手は琴乃だった。

慌ててメールをすると琴乃から電話がかかってくる。

「もしも…」

『ちょっと、七海大丈夫なの!?』

携帯の外にも声が漏れるぐらい大きな声だった。

メンバーがくすくす笑っている。

香南は眉をひそめていた。

「えっと、うん大丈夫。昨日ゆっくり休んだし、明日には学校行けるよ」

『双子は?!お母さんに送り迎えしてもうか??』

「いや、大丈夫。昨日今日と看病やお世話してくださる方たちがいてくれるから」

そういうと琴乃が声を低くする。

『もしかしておばさん達?大丈夫なの??』

「違う違う!えっとね…」

七海が焦りながらなんとか説明しようとするが何をどう説明したらいいのかわからなかった。

『げっチャイムが鳴った!今日昼で終わるし七海んち行くわ。じゃあね!』

ぶちっと勢いよく切れる。

「話相手だれ?元気な子だね」

夏流がニコニコと質問してくる。

「えっと、前回のライブで一緒だった琴乃です。幼いころからずっと一緒で今回もやっぱり心配してメールたくさん来てました。」

七海が苦笑いをしながら答える。

「確かに琴乃ちゃんって子は面白い子だったなあ。ふふっもう一度会いたい。」

「そ、それが…」

「「「それが?」」」

3人が一緒に尋ねる。

「琴乃、昼で学校が終わるからそれから来るっていってて…」

ちらりと香南の方を向く。

すると少しだけ眼を見開く。

「す、すいません。すぐ帰ってもらうので…」

焦って弁解しようとするが燎がさえぎる。

「いや、七海の大事なお友達なんだろ?いいぜ。それにいい機会だ。香南、お前練習だ。」

その言葉に香南が眉をひそめる。

「れん・・・しゅう?」

「そうだ。七海もいるし、ここは七海のホーム。絶好の練習場だろ。」

燎はにやりとしながら言い放った。








琴乃は学校が終わると急いで七海の家へ向かった。

七海の近くに手助けしてくれる人間はとても限られていることを知っている。

違うと言っていたが、他にいない。

早く自分が行って助けてあげないと。

気づけば七海の家の前についていた。

チャイムを押す。すると家のドアが開く。

そこには、憧れのanfangのメンバーがいた。









どばさっ

玄関の方から何かが落ちる音がした。

リビングで準備をしていた七海が玄関に行くと琴乃が尻もちをつき腰を抜かしていた。

「なっななっななみっ・・・!?」

「ななちゃんごめーんやっぱり、ななちゃんの言うとおりだった」

夏流がてへっとウィンクをする。

七海が何とも言えない笑顔をすると琴乃の方へ向かい琴乃を起き上がらせ玄関に入ってもらう。

「ごめん、琴乃、手伝ってもらった人たちっていうのはこの方たちなの」

「へっはっ!?」

「ちょっと言いにくて…それでね、一つ琴乃にお願いしたいことがあって…」

七海の苦笑。メンバーの笑顔に琴乃はわけがわからかった。











「えっと、というわけで自己紹介をお願いします。」

リビングの机にサングラス装着の香南、その向かえに琴乃、その間に七海が座っていた。

そして香南の隣には洗面器、タオル、飲み物、などなどさまざまなものが準備万端だった。


『女と話す練習をしろ』


それが今回の目的だった。

琴乃には香南が人間恐怖症だと言うことは先に伝えた。

もちろん驚いていたが、なんとなく想像はついていたのだろう。だからか…と頷いていた。しかしその後のメンバーからの「練習させてやってくれ」発言には驚いていた。

わけのわからないまま冷や汗をかいている香南の前に座らせられる。

そして七海が真ん中に座り、ソファにはメンバーが座る。

まるでお見合いのごとく会話は始まった。

「…」

香南が一杯お茶を飲む。そして横から香南さんと七海に言われる。

「anfangの、か、、かなんだ。よろ、しく。」

「はっはいっ七海の友達の柳田琴乃ですっ」

お互いがお互いに緊張して話すどころではなくなっていた。もちろんそこで会話も終わる。

「えっと、琴乃はanfangのファンなんだよね!」

なんとかこの緊張感を打破しようと七海が明るく話しかける。

「はっはい。ずっとファンで、CDも全部持ってます」

「…」

「香南さんっ」

何も話さない香南に再び七海が呼びかける。

唇をかみしめきりっと前を向く。

「その、ありが、とう、」

そしてタオルで顔を拭き、再び口を開く。

「どの、曲が好き、なんだ?」

その一言にみな一つの希望を感じた。

七海が嬉しそうに香南の方を向く。

冷や汗をかきながらそれでも真剣な顔で琴乃の返事を待っていた。

「えっと、、13番目の祈りも好きなんですけど、twilight orionが、一番好きです。」

「ありがとう、」

香南が顔を真っ赤にしながら答える。







それから約30分お見合いのような会話は続く。

言葉はたどたどしいが徐々に香南も慣れてきたのか、厳しい顔はしなくなった。

会話を終了させ、琴乃には感謝を述べ明日の学校のことを伝えてもらい帰ってもらう。

終わった後の香南はとても体力消耗していたようだった。

しかしメンバーは香南にとっては大きな一歩だったと確信していた。






強さ、覚悟のための――







活動報告におまけ会話書きました^^

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