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clarity love  作者: 朱希
23/50

伝えられないならせめて祈ろう







この気持ちに偽りはないのだから








clarity love 涙








ブチッ



七海がこのような突然切るということは今までなかった。

いつもなら香南が切るまで待っていてくれていた。

そして何より様子がおかしかった。

香南には七海は今日泣いているように聞こえた。



聞きたい。

けど聞けない。

怖いんだ。

あなたは関係ないと言われるのが。



香南がスタジオに戻ると3人はまだ曲作りに励んでいた。

「おかえりー☆ななちゃんとの会話はどうだった?」

「…」

「…香南?」

3人は元気よく迎えるが、香南の表情に疑問を浮かべる。

決して顔色が悪いわけではない。しかし、何か抜けたような顔をしていた。

「香南君、言ってくれないとわからないよ?」

「…七海が就職への大事なテストでしばらく会話ができないって」

「なるほど」

それなら仕方がないねえ。と周が頷く。

「七海、大学行かないのか?」

燎が聞く。それに香南が首を縦に振る。

「双子がいるし、働くって」

「あ、そっか、七海の家も親いないんだっけ」

香南が再び首を縦に振る。

それで終わりかと思うと香南がまだ眉をひそめ悩んでいるような顔をしている。

夏流が再び質問する。

「まだ何かあったの?」

「…七海が」

「「「七海が?」」」

「…泣いてるように聞こえて、勝手に切られて、」

「「「え?」」」

メンバー全員驚く。

七海は普段電話を勝手に切るような人ではない。

夏流が戸惑いながら聞く。

「えっななちゃんが?泣いてるって、大丈夫なの?」

「…」

「香南?」

「怖かった。」

「え?」

「七海に、お前は関係ないって言われるのが怖かった。」

「香南、お前…」

「…少しだけ風に当たってくる。」

そういうと香南はスタジオから出て屋上へ行く。

今日の天気は晴れていて星が凄く綺麗に見える。

目を閉じる。先ほどの会話が再び頭に蘇る。

今すぐ飛んで七海のところへ行きたい。

けど行けない。この恐怖心がぬぐえない。

ふと眼を開ける。




この気持ちは一体、何?

なぜこんな気持ちになる?









それから弁当の写メールは毎日送られてくるが、いつもよりも品数が少なくなっているように見えた。

返信に毎日のように『大丈夫か』と最初に文章を打つ癖がついてしまった。

その返事には必ず『大丈夫です』と返信される。

これほど大丈夫という言葉が怖いとは思わなかった。

余計心配になる。

電話も双子としか話さなくなった。双子も心なしか元気がないように見える。

「大丈夫か?」

ここでもついつい聞いてしまう。

『うんだいじょうぶだよ』

「七海は勉強中か?」

『うん。だからぼくたちちいさなおとでてれびみてるの。』

『ななちゃ、がんばってる』

「そう、だな。」

頑張るのは良い。とても大事だ。

しかし、言いたいことは違うのだ。

「七海は、元気か?」

『ななちゃは、げ、げんき』

『げんき、、げんき…!!!』

この子たちは何て純粋なんだろう。香南はそう思った。

とても話を聞いてあげたい。

しかし、怖い気持ちがまとわりついて離れない。

「お前ら前のメッセージ覚えてるな?」

『おてつだい?』

『まもる?』

「そうだ。ちゃんと七海を助けてやれよ?」

『うん。』

『わかった』

一番助けてやれない自分が言ってどうする。

香南は苦笑した。









そんな時期があってようやく2週間。

テストも終わったと思うとなぜか香南もほっと気持ちが穏やかになる。

自分はうけてもないのに何故だと笑ってしまう。

今日は先日から作っていた曲の最終チェックだった。

自分なりにはちゃんとできたはずだ。

そう思いながら聞いてると後ろの方から雅に肩をたたかれる。

「香南」

「…何?」

後ろを向くと雅が不思議そうな顔で携帯を持っていた。

「七海ちゃんから電話」

香南も不思議そうな顔をする。

テストが終わった報告でもあるのか?

しかしどちらにせよ、七海からの連絡に顔がほころぶ。

スタジオから出ると、電話の通話ボタンを押す。

「もしも…」


『おにーちゃあああ!!!ななちゃがななちゃが!!!しんじゃう!!!!』


顔から血の気が引くと言うのを初めて実感した。







スタジオの戸をバン!!!と大きな音を立てあけるとスタジオに入っていた人たちが驚くように後ろを向く。

しかし香南はそんなどころではなかった。

「雅さん!!!車っ車出してくれっ!!!!」

こんな必死な香南を見たのは初めてだった雅は唯ならぬ事態を感じる。

携帯で通話しながら必死に相手を励ましている。

「どうした?!」

「七海がっ!!!七海が倒れてっ!!」

即座に雅が車のキーを持つ。

メンバーの3人も頷きカナンのバックを置くから取ってくる。

「香南裏に車回すから。」

「あ、ああ。」

「僕たちも仕事一段落したら行くからそれまでななちゃんの傍にいるんだよ。」

「わかってる。」

夏流からバックを受け取ると裏口まで走る。





七海っ!

駄目なんだ、俺はまだお前に伝えていない。

お前に関係ないと言われる怖さも、

お前の笑顔からくる穏やかさも、

お前を守りたいと思うこの気持ちも

全部、全部!!!!

だって俺はお前を!!!







そこで香南は足をとめた。

ちょうど裏口についていたらしい。

雅さんが早く乗れと促している。

しかし時が止まったように香南は動かなかった。

瞳からは涙がこぼれてくる。








ああ、そうか。









これが”愛”なんだ。








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