友達
朝が来ると別れがくる
それは
始まりの別れ
clarity love 友達
次の日の朝、気がつくと七海は香南の隣で寝ていた。
どうやらあのまま寝てしまっていたらしい。
他のメンバーも当たりで寝静まっている。
香南の顔色をみると昨日よりもだいぶ良くすやすやと寝ていた。
よかった、と七海は一安心をする。
ふと昨日もらった携帯を見る。
するとアラームが鳴る。その時間に七海は固まった。
7時
この時間はすでに朝食を食べ始めている時間である。
そして昨日は日曜。
つまり、今日は月曜日。
七海の顔が真っ青になる。
「美羽っ瑠唯っ起きて!!」
香南の向こう側に寝ている二人をゆらゆら揺らし起こす。
その声に気付いたのか香南や他のメンバーも起きだす。
「七海、どうした?」
香南が眠そうに眼をこすりながら尋ねる。
しかし、七海にとってはそれどころではないのだ。
「時間がっ!!!学校に行かなければならないんです!!」
そして再び二人を起こす作業に戻る。
美羽はなんとか起きたが、瑠唯は朝が弱いのでなかなか起きてくれない。
「瑠唯~瑠唯たん起きてよおおお」
「瑠唯、起きろ」
必死にゆらゆら起こしていると香南ももそもそと動き出す。
そして香南は何か考え立つ。
「雅さんに車出してもらうから、待ってろ」
そして雅を起こしに行く。
そして二人が忙しそうに動き回るのをメンバーは眺めていた。
「なーんか、」
「そうだねえ」
「うーん…」
(夫婦みたい)
3人思っていることは一緒だった。
それからメンバーと別れ、車に乗り、家まで送ってもらう。
双子は私服に、七海は制服に着替え、再び雅さんの車に乗る。
幼稚園や学校へも送ってもらうことになった。
「す、すみません」
「いや、いいんだよ。昨日はこっちが悪かったんだから。」
「ああ。お前らパンはもう良いか?」
「うん!もうおなかいっぱい!」
「…いっぱあい」
車の中で朝食をすませる。
双子のごはんは香南が食べさせていた。
本当は七海がすると言ったのだが、香南がお前も食べろと頑固として譲らなかったため頼んだ。
そしてぎりぎり幼稚園へ到着する。
「「おにーちゃん、また会える?」」
二人が悲しそうに問う。すると香南は優しい笑顔で二人の頭をなでる。
「ああ、また会える。連絡もするから。」
すると二人は笑顔に戻った。
「「わかった!!じゃあ行ってきます!」」
そうして幼稚園へ駆け出していった。
いってきます
今まで言われたことのない香南は二人のあいさつに戸惑いながらも手を振ることしかできなかった。
その後高校へ向かう。
さっきまで五月蠅かったのが嘘みたいに静かになる。
ぽつりと香南が呟く。
「携帯、必ず買うから連絡待っててくれ。」
そして七海の手を握ってくる。
それに七海もぎゅっと握り返す。
「はい、待ってます。」
その声は少し恥ずかしそうだった。
高校まではあっという間だった。
学校へ着くと1限目はなんと自習だった。
良かったと安堵する。
そしてついたら必ず報告しろと言うメンバーへ無事着いたことの報告メールをする。
そうすると琴乃が前からやってくる。
「おはよ!」
「おはよう」
「今日ぎりぎりじゃん。どうしたの?またるいるい起きなかった?」
「あー…うん」
確かに瑠唯の寝起きの悪さで遅れたのは否めなかった。
そして琴乃は七海の持っているものに注目した。
「七海携帯買ったの!?言ってよ~」
「いや、あの、これは…」
戸惑う七海に琴乃は首をかしげる。
どうしようどうしよう
七海の頭の中でその5つの文字が浮かんでは消えていた。
この携帯の話をするためには昨日のことも話さなければならない。
そして約束したことも、
だんだん暗い顔をする七海に琴乃は焦る。
「どうしたの?七海」
「こっ琴乃ぉ」
ついには七海が泣き出してしまう。
まわりのクラスメイトが気付く前に琴乃は七海を誰もいない場所へ連れていく。
「どうしたの??泣かないでよ」
ハンカチで涙を拭いてあげるが涙は一向に消えない。
こんなに泣く七海を見るのはいつ振りだろう。
あの思い出したくもない七海の両親のお葬式以来だろうか。
必死になだめるとようやく七海が話し出す。
「琴乃、ひっくほんとっくごめん」
「わかってるよ。大丈夫。何も七海悪いことしてないじゃん。怒らないから言ってごらん?」
七海の頭をなでてあげるとようやくおずおずと何かを出す。
みてみると先ほど持っていた携帯だった。
わけがわからないと頭の上にはてなマークを出す。
そして七海の発言に驚愕する。
「これ、香南さんの、なの」
どもりながらも七海がつぶやくように話しだす。
その中にはどうやらおそらく、琴乃が聞いてはいけなかったものも含まれていた。
しかし、七海の頭ではもうどうしたらいいかわからない状態だったのかもしれない。
そうして話終わると七海はまたすすり泣きに戻る。
「ごめん、裏切ったみたいに、琴乃の大好きなものなのに。」
「何言ってるのさ」
そして琴乃がにこやかに笑う。
「あのときも言ったでしょ?私は七海一番だって。anfangはもちろん好きだよ?そりゃー好き。けどね、七海と天秤にかけたら断トツ七海。」
「琴乃」
「それにね、言っとくけど、この件で私が心配してるのは七海のことだよ。大丈夫なの?そりゃ、彼ら好きだけど、謎ばっかだからさ。ファン以上では関わりたくないっていう思いはあるのよ。」
あれだけ重要機密があるんだ。それは謎がられても不思議ではない。
琴乃はそこを心配していた。
しかし七海は首を横に振る。
「あの人たちはとてもいい人だよ。ちゃんと、大切なものを知ってる。私、協力したいんだ。できること、してあげたいって思ったの。」
七海の目は真剣だった。
ちゃんと事実を述べている人の顔だ。
それを見た琴乃はため息をつく。
「…そっか。」
そして手を握りしめる。
「じゃあ止めない。七海が思う通りに動いたらいいと思う。私は応援してるよ」
「ありがとう」
七海の顔にようやく笑顔が戻る。
「けど、本当に危なくなったら、駄目だと思ったらすぐ言うんだよ?」
「うん」
「それから、なんかanfangの新情報掴んだらすぐ教えるんだよ」
真剣に言う琴乃に七海はついつい笑ってしまった。
「うんわかってる。こっそり、諜報員みたいに掴んでくるよ。」
「たのむぞ、七海隊長。」
「かしこまりまして、マイロード」
そして二人はくすくすと笑った。
琴乃は何よりも七海を大切にしたいという気持ちを持っています。