打ち上げ
サブタイトルで悩む。本当に。
まるで林檎のように赤くなる君は
僕の何かを傷つける
僕の何かを癒してくれる
clarity love 打ち上げ
「はい」
香南が書き終えると七海は見えない背中を一生懸命見ようとする。
その姿に香南がクスリと笑う。
「香南さんありがとうございます!見えないのが残念です。」
七海が本当にさみしそうに言う。
「けっけどこれは家宝2です!双子たちのTシャツも飾っておきます!」
決意を固めたように言う。
そして双子がかほうってなにー?と聞くのに対し、試行錯誤説明した。
メンバーは家宝発言にそれぞれ笑う。
「家宝か。俺たちもすげー偉くなったな。」
「家宝2ってことは、香南もしかして家宝1をなんかあげたの?」
「うーん、香南君も隅に置けないねえ。」
メンバーが勝手に推測し、勝手にしゃべりつくしているのを香南は無視する。
「瑠唯、美羽寒くなったら言うんだぞ?」
「「はーい」」
二人が手を挙げて返事をすると、香南はにこやかに頷く。
すると携帯の着信音が鳴る。
誰のかと思えば、雅のであった。
「もしもし、あはい。わかりました。4人とも、打ち上げ始まったって。」
電話を切り終えるとメンバーへ報告する。
「やったー今日はどこかにゃー☆」
「今日は最後だから少し豪華なところだろうねえ。」
「俺肉たらふく食いてえ。」
皆それぞれ言いながら準備をし始める。
「七海ちゃんも、もし良かったら来てくれない?」
「えっ」
雅が七海に提案する。
突然のことに七海がびっくりする。
「あ、それとももうご飯作っちゃってるかな?」
「いえ、外で食べるつもりでしたけど」
昨日の疲れからか今日の朝もやる気が出ず、結局夜もどこかで食べようと思っていた。
しかし、いいのだろうか?と不安になる。
「それだったらぜひ来て。ここまでせっかく足を運んでもらったのに申し訳ないからね。美羽君と瑠唯君もお子様セット食べたいよね?」
雅が美羽と瑠唯に尋ねると二人は嬉しそうな顔をする。
「おこさまセットたべたーい!」
「はんばーぐたべたい!」
はりきって答える二人を見ると七海はますます何も言えなくなる。
さらに隣を見ると香南が寂しそうな顔をしながらこう言う。
「きて、くれないのか?」
このコンボに勝てる人がいたならすぐに教えて欲しい。
七海はそう思いながら顔を真っ赤に頷くしかなかった。
ついた先は落ち着いた日本料理店だった。
どうやら予約を取ってあったらしく、雅が名前を告げると奥の方へと通された。
ついた先で今回の主役である4人は前の戸から入り。七海たちと雅は後ろの戸からこっそり入る。
主役がそろうと流石に一盛り上がりする。
七海が後ろから見ていると、打ち上げに来ている人が全員男だった。
「うちのバンドは香南の事があるからね。スタッフが全員男なんだよ」
雅が苦笑いしながらそういう。
だからだろうか、七海がたとえ後ろから来て端の方でちょこんと座っていてもやけに目立っていた。
「雅ちゃーん、その子だれえ?」
お酒がもう回っているだろうスタッフが雅に問う。
確かにはたから見てみたら高校生の女の子と双子の小さな子ども。誰が連れてきたんだと思っても不思議ではない。
「今回の貢献者たちだよ」
雅が若干流すように答える。そしてニコニコしながら七海たちにメニュー表を見せる。
「何にする?好きなの選んで」
好きなの選んでと言われても困る。と七海は困惑する。
双子は早速お子様セット探しを始める。
「みやびさん!これ!」
「おこさませっと」
うんうんと頷きながら雅が店員を呼ぶ。
その前に香南たちが頼んでおり、そこで注文を聞いてから店員がやってくる。
「お待たせいたしました。」
「えっと、まず生ビール。そんであとお子様セット二つ。」
すると店員が不思議そうな申し訳なさそうな顔をする。
「先ほどのお客様がお子様セットを二つ注文されたのですが。」
「え?」
「あちらのサングラスをかけて赤のメッシュを入れたお客様です」
あちらのと言った方を見ると香南が七海たちを見ていた。
「ハンバーグ、入ってるって。」
香南がにこやかに笑う。
それに周りがざわめきだす。
雅はため息をつきながら双子をなでる。
「…みたいだから、二人とももうちょっと待ってね。」
「「はーい!ありがとー」」
二人は香南の方にも手をぶんぶんふりながらお礼を言う。
すると香南も手を振り返した。
「さて、七海ちゃんどうする?何にするか決めた?」
「えっと、ではこのまぐろ丼を…」
せっかく日本料理店に来たのだから、海鮮物を食べたほうがいいだろう海鮮物のメニューのところを見ていた。
しかし、とてつもなく高い。おろらく、いや来た時からわかっていた。
ここはとてつもない高級料理店なのではないか。
雅にせかされたこともあり、急いで一番安いものを選ぶ。
しかし、香南がこちらにやってくる。
七海の後ろで座りまるで七海を囲うように座る。そしてメニュー表を七海の後ろからめくる。
めぼしいものを見つけたのか指さした先はメニュー表の中でも一位二位を争う高さの海鮮セットだった。
「七海、ここはこれがうまい。」
後ろからの声にそくっとする。
しかし、セットの料金を見て驚く。
桁が一つ違う!!
「いやっ私は、その、」
「すいません、このセット一つ。」
あわてて自分はまぐろ丼がいいのだと主張しようと思ったが、時すでに遅し。
香南が店員に頼んでいた。
「はいかしこまりました。」
にこやかに去っていく店員を横目に呆然とする。
「お腹いっぱいになったら残してもいいから」
そして七海の頭を撫で去っていく。
何があっても絶対残せない。
七海は顔を真っ赤にしながら撫でられた頭をさすり決意した。
「それでは、改めて、ツアーお疲れ様でしたー!!!」
「「「「「お疲れ様でしたー!!」」」」
燎が音頭を取ると一斉にビールを掲げ乾杯をする。
七海はウーロン茶、美羽と瑠唯はオレンジジュースで参加する。
一通りグラスを鳴らしあうと、早速質問攻めにあう。
「君、香南をあんな風に笑わせれるの凄いなあ。」
「何もしかして彼女?」
「それとも家族とか?」
「その前に時間とか大丈夫なわけ?」
「このTシャツのサインホントにあいつらが書いたの?」
様々な質問に答えれず、下を向いてしまう。
双子はと言うともくもくと嬉しそうにお子様ランチにありついていた。
「もう、いいじゃん。この子たちは善意で来てくれてるんだからもうおしまい。それよりも主役たちに話しかけたら?」
雅がすかさずフォローしてくれている。このフォローに何度助けられているかわからない七海はほっとした顔をする。
質問した人たちもそれはそうだと4人の方へ群がっていく。
「まったく。ごめんね。皆いいやつなんだけど、女の子が来るとやっぱり違うのかな。ほら、注文したセット食べてみて。どうかな?」
そういわれようやく顔をあげる。すると前には注文したセットが並べられていた。
緊張した面持ちでセットに箸を入れる。
そして刺身のまぐろを一切れ醤油につけ、口の中へと運ぶ。
「…おいしい。」
この冷たいけれど凍っているわけではない絶妙な食感。
醤油がまたおいしさをひきたてている。
素直な感想が出るのも当たり前だった。
「だろう?香南の好きなセットなんだよ。あいつ、好きなものはとことん頼むから。ほら今日も頼んでるだろ?」
香南の方を見ると香南も同じセットを頼んでいた。
そして囲まれているがあまり会話もせず黙々と料理に舌鼓を打っていた。
ふと顔をあげるとこちらを向く。
そして口端を上へあげる。
その嬉しそうな顔に思わずどきっとする。
「ったく香南。また全然参加してない。まあ、今回参加するだけましか。」
「えっ参加しない時もあるんですか?」
香南さんたちが主役なのにと不思議がる。
「ライブなんて人が集まる絶好の場所でしょ?あいつ、ツアー終わりは疲れきってひどい顔してるんだよ。んで一人でフラッと帰っちゃう。ホント困った王子様。」
雅が肘を立てながら不満をぼやく。
確かに、あんなところでしかも何か所も何度も歌うなんて人嫌いの人からして見たら拷問に近いのだろう。
「だから今回は七海ちゃんに感謝。ありがとね」
「いいえっそんな私は自分が感謝することはあっても感謝されることは」
突然感謝され戸惑う。しかし、雅は笑顔で譲らない。
「ううん。感謝すべきなんだ。ありがとう」
何やら歯がゆくて、海鮮をまた一口、口に入れた。
調子に乗ってもう一つ書きます。
活動報告に香南たちの会話を書いときたいと思います。
番外編は、ちょっと未来の事すぎてネタバレになるのでちゃんと完結したら書きたいと思います。