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Square  作者: AkIrA
18/44

#18:嫉妬

食事が終わり、仕事へと戻る。

先程の御堂の件がある所為か心なしか皆緊張していた。

普段優しい人ほど怒らせると怖い、という事だ。


「葉山、悪いねんけどこの資料コピーしてきてもうてええかな?」

「あ、はい!」


御堂に頼まれて、碧は立ち上がる。

受け取ったのは、碧の代わりに柳が作ってくれた資料だ。



「アイツ、なかなかやるな。めっちゃ見易いわ。」

「…はい。」

「内容はお前が考えたんやろ?良く出来とる。」



御堂が笑う。

何を言ったわけでも無いのに、ちゃんと分かってくれている。

御堂のこういう所が、良い上司たる理由なのだろうと碧は思った。

碧は深く御堂に頭を下げると地下の印刷室へと向かった。









「良い身分ね…」



碧が振り返ると、壁に凭れ掛かるようにして藤森が立っていた。

自然と体が強張る。



「藤森、さ…」

「護られて生きていくしか能が無いのかしら?」




長いパーマがかかった髪が揺れると香水の匂いが鼻につく。

彼女は頭の先から爪の先まで完璧だ。

しかしその完璧さが逆に嘘くさくもある。



「私、そんなつもりは…」

「そうやって弱いふりして、男に護ってもらうのね。御堂さんや秋月が可哀想よ…」

「っ、」




自分の一番ずるい部分を浮き彫りにされ、碧は二の句を告げる事が出来なかった。

そんな碧を鼻で笑うと、藤森はその体を突き飛ばした。

急にそうされた事で碧の体は呆気なく後ろへ倒れた。



「…っ、」



激しい痛みが後頭部に走る。

目を開けると、視界がぼやけていた。



「そこで大人しくしてなさい。」

「‥う、あ…」



痛む頭を抑えて立ち上がろうとした碧の前でドアが閉まった。

ご丁寧に鍵まで掛けて。



「嘘、でしょ…」



独りごちて、碧は溜め息を吐き出した。


入社した時から、藤森の御堂に対する執着は凄かった。

それ程まで人を愛する彼女を碧は羨ましいとさえ感じていた。

しかし、此処までくると流石に愛情を履き違えている。


後頭部を押さえつけている手には生暖かい感触。

確かめるまでもない。




「透、耶…」



薄れていく意識の中、最後に浮かんだのは柳の顔だった。







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